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高温及び低温による死亡リスク:各国比較(1)

写真出展:Dr StClaireによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/matryx-15948447/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5059839

 今回紹介するのは2015年7月25日にLancetで発表された、高温と低温による死亡リスクと各国の状況比較に関する論文である。内容は、高温よりも低温の方が死亡リスクが高いこと、各国の死亡率及び死亡者数についての統計的分析、公衆衛生政策の在り方の提言などである。
地球温暖化に関する死亡リスクについては環境政策で盛んに喧伝されているものの、低温の死亡リスクに関してはあまり語られない。歴史的に人類は低温と格闘してきたのであり、高温による死亡リスクはあるにせよ、低温との比ではないこと示されている。地球温暖化論者の欺瞞が良く分かる優良な論文であることから、その概要を紹介させていただく。なお長文になることから、3回に分けてご紹介させていただく。

↓リンク先(Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study)
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)62114-0/fulltext

1.本論文の内容について
① 研究の概要
 ・研究の背景
過去の研究において、特定の国における高温及び低温を要因とした死亡者数を推計したものが存在するものの、異なる気候帯に属する国々を比較し、包括的に評価した研究は存在していない。そこで本研究において、生存にとって危険性のあるような異常気温を要因とした全体の死亡率、高温と低温による相対的な死亡率を定量化することとした。
 ・研究手法
  調査対象地域として、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、イタリア、日本、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、イギリス、アメリカの384都市を選択し、各都市における、週間の傾向や日数を統計的に調整し、高温及び低温による影響を比較できるようにした。また調整した数値により、各国における生存最適気温を推計した。
・死亡率
  本研究が分析対象とした死亡事例は、1985年から2012年までの74,225,200件である。今回の調査対象における気温を要因とした全体の死亡率は、7.71%(95%信頼区間で7.43%から7.91%の間)であった。また各国間で大きな差があり、タイでは3.37%(95%信頼区間で3.06%から3.63%の間)、中国では11.0%(95%信頼区間で9.29%から12.47%の間)であった。気温による最小死亡率のパーセンタイルは、熱帯において約60%パーセンタイル、温帯においては80%から90%パーセンタイルになる。気温による死亡は、高温(0.42% 95%信頼区間は0.39%から0.44%)よりも低温(7.29% 95%信頼区間は7.02%から7.49%)の方が多くなっている。全体の死亡率のうち、極端な低温及び高温による死亡は、0.86%(95%信頼区間は0.84%から0.87%)(詳細については、表1及び2参照)

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・結論
  ほとんどの気温関係の死亡は、低温が要因となっている。極端な気温の日の影響は想定ほどではなく、むしろ生存最適気温よりも若干乖離した日々の影響よりもはるかに小さい。この結果は、気候変動シナリオに応じた将来の公衆衛生策定に重要な示唆を与えることになるだろう。

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