ウクライナ危機に伴うロシアからのIT技術者流出(GRIDの記事)
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2022年3月25日にGRIDは、ロシアのIT技術者流出の現状に関する記事を発表した。内容は、経済制裁に伴い大量のIT技術者がすでにロシアから出国していること、4月以降にも10万人以上が出国すると見込まれていることを指摘し、ロシアの対応や科学技術部門への影響を概観するものである。
今回の戦争では様々な影響が指摘されているが、技術者の流出についてまとまった記事がなかなかなかったことから、参考としてその概要についてご紹介させていただく。
↓リンク先(The Ukraine invasion is accelerating Russia’s tech sector brain drain)
https://www.grid.news/story/technology/2022/03/25/the-ukraine-invasion-is-accelerating-russias-tech-sector-brain-drain/
1.本記事の内容について
・ウクライナ紛争に伴い、ロシアから技術者が流出している。正確な人数は不明であるが、3月22日にインタファクスが発表したロシア電気通信協会の記事によると、すでに約7万人が出国したと見込まれているとしており、4月には更に10万人が出国するとしている。ロシアは10億ドル規模のユニコーン企業ランキングで10位にランクインしているが、技術者の大量離脱によりこの地位は大きく後退することになるだろう。
・技術者が流出する理由は多々ある。まずプログラマーは、グローバル企業の撤退や制裁により仕事にありつけなくなっている。またコジェントのようなインターネット企業がロシアのネットワークを遮断するなどして、データの伝送速度が著しく低下していることから、技術者の労働環境が悪化していることも大きな要因である。
・主な出国先としては、旧ソ連諸国のアルメニア、カザフスタン、キルギスタンなどである。これは、ロシア系住民が多いことや陸路で容易に移動できるといった利点が指摘されている。ロシア政府は規制強化に尽力しており、あるニュースでは技術者が多数搭乗している航空機を特定し、国境警備隊が出国しようとする人々を厳しく尋問しているとしている。
・その他の試みとして、ロシアは西側諸国から独立したインターネットを構築しようとしているが、ネットワーク上の新しい鉄のカーテンを設けたとしても、長期的には技術者にとって不利な環境になるだけであり、功を奏さないだろう。
この状況下において、中国の技術企業がどのように動くかにかかっているだろう。つまり、ファーウェイのような企業がロシア市場を独占し、半導体を独占的に供給することができる良い機会だと見れば、それなりに凋落を遅らせることができるだろう。しかし科学技術の劣化は、避けられそうにない。
2.本記事読後の感想
技術者の流出に対して、弾圧や規制強化により対応しようとする所は何ともロシアらしいが、インタファクスの記事では若干異なる対応をしようとしているよう見える。ロシアのデジタル省はIT部門を支援しようとしているとのことである。法人税や3年ごとの監査の免除、技術者の兵役免除、3%以下の低利借入金などの支援が予定されているようだが、もっとも、額面通り受け止めることはできず、実際には掛け声倒れになるように思われる。
またロシアは、撤退した企業の復帰を今後10年は認めないとしており、グローバル企業が以前のように戻ってくることは想定できないことから、技術的な凋落に歯止めがかからないだろう。中国が間隙を縫って入り込むという議論もあるが、当のロシア側がそれほど容易に認めるとは思えず、中国も制裁対象になりえることから、こういった事態も考えにくい。
いずれにしても、この状況を覆す政策はほとんどないと思われる。ロシアが凋落しても黙っていては利益を得られないことから、流出した技術者をいかにうまく活用するのかが重要になってくる。ソ連崩壊時には多数の技術者や学者が流出し、アメリカをはじめとした西側諸国は大きく恩恵を受けた。しかし日本はほとんど亡命者を受け入れることがなかったことから、それほど恩恵を得られなかった。移民を推奨するわけではないが、高度な技能を持った人々を受け入れることは必ずしも悪いことではない。明治時代のお雇い外国人のように、ある程度囲い込むことも必要だろう。
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