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特許料に関するエリクソン対サムスンの訴訟(ハドソン研究所の記事)

写真出展:succoによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/succo-96729/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=802301

 ハドソン研究所は2021年4月9日に、サムスン対エリクソンの特許料の訴訟に関する記事を発表した。内容は、サムスンが法制度の不備を突いて、エリクソンに支払う特許のロイヤリティを不当に下げた。前回記事にした、CSISの知的財産保護の記事に関連する具体例としての位置づけである。日本にとっても良い教訓になると考えられることから、その概要を紹介させていただく。

 ↓リンク先(Amicus Brief by Adam Mossoff in Ericsson v. Samsung (Fed. Cir., April 9, 2021))
https://www.hudson.org/research/16846-amicus-brief-by-adam-mossoff-in-ericsson-v-samsung-fed-cir-april-9-2021

1.記事の内容について
  ・サムスンは、武漢地方裁判所にてエリクソンに対し、携帯電話特許のロイヤリティに関する訴訟を提起した。通常、特許の所有者は訴訟の提起について、原告から正式な通知を受賞することになっているが、サムスンは通知しなかった。また、サムスンは自身に対する訴訟の差し止め命令を勝ち取ったが、この審理手続きにエリクソンが参加することはできなかった。
 ・中国の裁判所は、法の支配から逸脱した運用を行っている。例えば、ファーウェイなどの国内企業がアメリカやヨーロッパの特許を利用する場合、そのロイヤリティ率を低く設定している。理由としては、ロイヤリティ率が法外であり、容認できない操業コストになるというものであり、今回の判決でも同様の見解を示した。
 ・本件はサムスンとエリクソンの関係に留まらない。もしこれが前例となると、特許の利用者は、自社に有利な裁判所を選ぶことができるということになる。特許保有者は高額なロイヤリティで不当に利益を出しているというように見えるが、実際には提供したライセンスに対するロイヤリティに関する合意について骨の折れる交渉をしており、この交渉は数年かかることも珍しくなく、実質的には市場よりも安価な金額で妥協せざるを得なくなっている。

2.記事読後の感想について
  民主主義国家と権威主義的国家が混在する世界における、イノベーションの共有の問題は非常に難しく、今回の記事もその極端な例のひとつである。あまりに知的財産を保護してしまうとその恩恵が広まらず、かと言ってフェアユースの観点であまりに広めてしまうと、イノベーションを発見した企業の利益が損なわれ、インセンティブが阻害されてしまうことになる。
  今回の件は韓国と武漢という何とも因縁めいた組み合わせであるが、不心得な国が良からぬことをしているというのはあらかじめ分かっていることであり、手をこまねいている間に、今回のような事件が起こったと言っても過言ではない。したがって、ただ中国や韓国がけしからんと批判しても仕方がない。どのような企業であっても今回のような法の不備を突くことは可能であることから、不備を正さなくてはならない。具体的には、知的財産のロイヤリティ率を各国で異なるレートにしておく、訴訟を提起できる裁判所の管轄国を決めておくなどの対処が有効になるだろうか。
  また、各国での知的財産保護の法整備も重要である。日本の農産品などのブランドを盗まれてしまうということが横行しているが、これは法的な不備が大きな要因となっている。今回の件を教訓に、日本でも機微技術や特許技術を保護する法整備を積極的に推進していただきたい。

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