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半導体輸出規制法案から1年後の現状について(CSISの記事)

写真出展:Chris CiapalaによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/chrisci-1332261/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=906525

 CSISは2023年10月18日に、アメリカの半導体規制の改正に関する記事を発表した。内容は、10月17日に商務省安全保障局から発表された、新たな半導体規制について概観するものである。日本はTSMCの熊本工場やラピダスの北海道工場などで盛り上がっているが、輸出規制を巡る状況は絶えず変化しており、最新の情報を適宜把握しておかなければ米中を巡る動きを十分に理解することはできない。今後の技術覇権を考える参考として、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Updated October 7 Semiconductor Export Controls)
https://www.csis.org/analysis/updated-october-7-semiconductor-export-controls

1.記事の内容について
  ・2022年10月7日にアメリカ議会で半導体輸出規制法案が成立して1年が経過した。商務省安全保障局は法案の欠点を補完するべく10月17日に改正された規制を発表したが、これは大きな変更を伴うものとなっている。
  ・今回の改正は、以下の3つの主要な変更が含まれている。
①    規制対象半導体の範囲変更
 規制の対象となる半導体の範囲を変更し、処理密度に替えて半導体接続時の処理速度を基準とした。また、この基準に合致しない場合のグレーゾーンについても対象とすることがあるという留保を付けている。具体的にはエヌビディアのA800やH800半導体、インテルのガウディ2半導体などが対象となる。スマートフォンなどの民生品向けの半導体は対象外となるが、これまで規制されてこなかった半導体も対象となる可能性がある。
その他、中国が子会社や関連会社などを経由して規制対象の半導体を調達できないようにするため、迂回防止措置を改正した。中国本土だけでなく、マカオやアメリカの兵器輸出規制対象国に本拠がある企業も対象となる。この結果43か国が新たに規制対象となり、キルギスのような中継国も含まれることとなった。
②    半導体製造装置規制
 対象となる装置の範囲を拡大し、16ナノメーター以下の論理回路を処理する機器が主な対象となる。その他化学的な製造処理、エッチング加工などに関する装置も対象となっている。但し対象国は半導体そのものの範囲よりも狭く、今回の改正で追加となるのは22か国である。また一部例外を除き、個人やエンドユーザーについても明確にしている。
③    エンティティリストの対象拡大
 13の組織が追加され、バイレンテクノロジーデベロップメント、ライトクラウドなどが追加された。またエンティティリスト対象国に半導体を輸出している海外企業についても、規制対象となっている。
 ・今回の規制改正について、中国の反発は必至だろう。今やマイクロンの製品は重要インフラ等に使用することができなくなり、ガリウムやゲルマニウムを中国に輸出する際には許可が必要となった。最近ファーウェイが7ナノメーターの半導体を製造することに成功したという情報があり、もしこのニュースが真実であれば改正された規制の効果は半減するだろうが、中国に多大なるコストを課すことができ、自国生産できるようになるまで当面の間時間を稼ぐことはできるだろう。

2.記事読後の感想について
  テレビなどの報道を見ていると半導体に対する期待が過剰に宣伝され、一般の人々も何か明るいニュースであるように認識しているのだと思う。多少知識がある人はフラッシュメモリーやディスプレイなどの事例をもって、うまくいくわけがないと警戒感を持っていると思われるが、うまくいくか行かないかは政府ではなく実際に半導体に携わる人々の双肩にかかっている。いずれにせよ、日本人が一丸となって忍耐強く支援していくことが必要である。
 半導体産業の状況については中等品クラスの半導体不足は継続しており、自動車を中心として納期の遅れが広く知られている所であるが、先端半導体を中心とした供給過剰についても情報が出てきており、バラ色というわけではないことから、短期的な状況に一喜一憂せず、将来への投資であると理解した上で忍耐強く見守るしかない。
 ただ私はどちらかと言うと否定的に見ており、技術においても経済的な側面においても日本は脱落すると見ている。日本人総体としての危機感のなさや劣等性・後進性は先進国内でも有数なものであり、おそらく政府が短期的に結果を出せなかったというニュースが出回ったらそこで諦めてしまうのではと危惧している。
 何とかこの状況を打開することができればいいのだが、増税志向の岸田政権では国民の信頼が得られず、話も聞いてもらえないだろう。

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