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中国の巨大技術企業規制が意味するもの(THE DIPLOMATの記事)

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 2021年12月13日にTHE DIPLOMATは、中国の巨大技術企業規制に関する記事を発表した。内容は、今年9月に施行されたデータセキュリティ法及び個人情報保護法の影響を概観するものである。中国が企業を規制していること自体は目新しい情報ではないが、法的な根拠について説明したものは珍しいことから、参考としてその概要について紹介させていただく。

↓リンク先(Will China’s Regulatory ‘Great Wall’ Hamper AI Ambitions?)
https://thediplomat.com/2021/12/will-chinas-regulatory-great-wall-hamper-ai-ambitions/

1.本記事の内容について
 ・今年9月、中国サイバー空間委員会は予測アルゴリズム規制3か年計画を発表し、中国企業はこの規制に従わざるを得なくなった。この規制は、年初に可決し11月から施行された、データセキュリティ法(DSL)及び個人情報保護法(PIPL)という2つの厳格な法律に基づいたものである。
 ・今回のデータ保護及びアルゴリズム規制は、中国の段階的な技術部門規制の新たな試みであると見られている。この規制は国家のデータ収集能力にほとんど影響を与えないが、企業には多大なコストを課す事になり、長期的な発展目標の障害になる可能性がある。
 ・データセキュリティ法は、中国企業による侵略的なデータ収集を抑制するものであり、特に国家安全保障及び中国共産党の公益を侵害する可能性のある国内外における情報収集活動を規制する。本法の曖昧さを考えると、多くの中国企業は1000ドルから15万ドルの法外な罰金やビジネス免許の停止などのリスクを冒すことはなく、過度に抑制的に対応するだろう。
 ・個人情報保護法は、企業にサイバーセキュリティチームを創設し、研修を実施し、国家安全保障上の脅威となりうる情報を指定する分類に応じて整理することを義務化している。この包括的な規制の枠組みは74の条文から成り、中国人民の個人情報を取り扱う全ての企業が遵守する必要がある。
 ・今回の規制はどのような意味を持つのか?まず、中国がAIで世界覇権を握るという問題と、巨大技術企業に対する規制免除の問題がある。習近平は巨大技術企業の力をそぎ落とそうとしているが、このことは投資に大きな影響を与えた。データセキュリティ法可決直後の香港ハンセン指数は2.5%も下落したが、主な企業はテンセント、アリババなどの巨大技術企業であり、数百億ドルに相当する下落だった。DiDiは、データセキュリティ法違反により、ニューヨーク証券取引所のIPOの件で提訴されたが、その後ユーザーが30%減少し、株価は40%以上下落した。
 ・中国はインテリジェンスや警察業務で、国家インテリジェンス法第7条、国家安全保障省第77条及びサイバーセキュリティ法第28条に基づき、代理で情報収集業務に当たらせることが可能であり、歴史的にはバイドゥ、アリババ、テンセントに頼ってきた。今回の方施行により、これら企業はどれだけ情報収集能力を制限されることになるのだろうか?
 ・今回の法規制の対象は、企業のみであり、党や政府機関ではないが、公的部門がどれだけ民間企業に依存するのかについては不明確である。企業側からすると、規制を受けるとしても、安全保障機関から提供される膨大なデータは魅力的であり、AI開発などへの基礎データとしての活用が期待できる。この規制により、既存の企業は自由を規制され、新規参入企業にとっては大きな参入障壁になるが、中国の技術企業の在り方を大きく変容させるものになるだろう。

2.本記事読後の感想
  今回の政策は極めて単純であり、中国共産党の権力を安定させるという一点である。自国の企業に過度な規制を課すという一見すると愚かな行為であるが、権力闘争という点からは、合理的ではある。本来は民主化に向かうべきだが、中国共産党の仕組みがこれを許さないわけである。ただ自傷行為であることには変わりないため、これはチャンスであることは確かである。ただ、これをのんびりと眺めているだけでは、チャンスをものにすることはできない。この間するべきことは、中国から早期に脱出すること、中国から脱出した技術者を囲い込むこと、中国から奪取可能な基幹的な技術を整理することだろう。
 もっとも、外交ボイコットを巡るやり取りや日米首脳会談の日程が決定していない状況などを鑑みると、岸田政権には期待できないため、小林経済安全保障担当大臣や甘利元幹事長辺りに期待するしかないだろう。

  なお、データセキュリティ法及び個人情報保護法の影響については、以下の記事を参照いただければ幸いである。

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