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中国の新しいフェイクニュース規制(rest of worldの記事)

写真出展:ComputerizerによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/computerizer-4588466/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2301646

 2022年1月10日にrest of worldは、中国が最近導入した新しいフェイクニュース規制に関する記事を発表した。内容は、ソーシャルメディアプラットフォーマーのニュース照会などのアルゴリズムに規制をかけ、プラットフォーマーにフェイクニュース等の規制の責任を負わせるというものである。この手の規制は世界初のものであり、今後の他の国々にも影響を与えると考えられることから、その概要について紹介させていただく。

↓リンク先(China steps up efforts to ban deepfakes. Will it work?)
https://restofworld.org/2022/china-steps-up-efforts-to-ban-deepfakes/

1.本記事の内容について
 ・1月3日の週に、中国の4つのインターネット規制当局が、アルゴリズムの使用に関する新しい規制を発表した。その内容は、ユーザーの行動に影響を与えるアルゴリズムの使用を直接規制しようとするものであり、この手のものとしては初のものとなる。今回の規制により、TikTokのようなソーシャルメディアプラットフォームが創作コンテンツを推奨することが禁じられることになったが、これはフェイクニュースやディープフェイクを規制するためである。
 ・オンラインニュース配信業者にはすでに類似の規制がかけられており、機械学習やVRなどを活用したツールによりフェイクニュースなどを共有することが禁じられており、検知した場合には表示することが義務付けられている。新しい規制はプラットフォーマーが、強力なアルゴリズムを用いてフェイクニュースを創出することを制限しようとするものである。中国はフェイクニュースの発信元を特定することが困難であることに着目し、プラットフォーマーにその責を負わせようとしているのである。
 ・今回の規制で想定されているフェイクニュースは、詐欺や社会不安をあおるものである。しかし「ニュース情報」という言葉には多分に解釈の余地がある。ユーモア、反対の意思の表明、社会批評などはフェイク動画や画像などを使用することもあり、こういった単純な偽情報以外のものも規制の対象となる可能性がある。
 ・ディープフェイクや操作されたメディアを検知することは非常に困難であり、大企業のビッグデータにより機械学習したAIであっても十分な精度で検知することはできない。AIによるディープフェイクの検知が可能となったのはここ3、4年のことであり、しかもディープフェイクの作成方法について熟知し、良質なメディアと協力関係を駆逐して初めて可能になるのである。
 ・この新しい規制は、安全保障上の検証のため、「世論」に影響を与えているプラットフォーマーのアルゴリズムのコードを、政府に提出するよう求めており、アルゴリズムそのものを監査する道を開くことになる。アルゴリズムがどのように稼働しているか否かを検証するには、コードを検証しなければ不可能であり、企業側は機密情報を開示しなくてはならなくなる。
 ・プラットフォーマーがこの規制に違反した場合、1万5600万ドルの罰金が科され、訴追されることになる。また違反の程度に応じて、情報収集に協力し、アップデートもしくはコンテンツの追加を停止する、安全保障上の検証を受けるといった義務も発生する。
 ・アメリカ、イギリス、EUは、アルゴリズム規制やディープフェイク対策を開始しているが、プラットフォーマーの保護法制や言論の自由などにより、中国ほど包括的な法律を制定することはできないだろう。ただ、今後の中国の動向から学ぶべき点は多いだろう。

2.本記事読後の感想
  中国は巨大技術企業への規制を強めており、データセキュリティ法や個人情報保護法により、共産党や政府当局が民間企業のデータを監視できるような体制が構築されている。今回はこれだけに留まらず、民間企業の技術の根幹にまで踏み込んできた。アルゴリズムのコードまで監査できるようになれば、民間企業を党の意のままにできるようになるということである。最も、共産党内にそれだけの技官がいるとは思えないが。
  この規制で苦しむのが中国だけならいいのだが、おそらくそれだけにとどまらない。中国の技術企業は正規ルートで世界中から技術情報を収集しており、その成果が中国共産党の手に渡るとすると、企業秘密が漏洩する可能性が高くなる。アルゴリズムのコードについても他の技術企業が提供した技術が含まれていた場合、サイバーセキュリティの手法などが漏洩してしまう可能性もある。その他、海外で操業している中国企業にこの規制が域外適用されれば、世界各国でこの規制が展開されることになる。
  ただ他の国々が当面対処できることはないようにも思われる。この規制の運用についてしばらく様子見を決め込むしかないだろう。もしディープフェイクの規制に有効な知見が得られるなら、それでいい。情報漏洩などの手段に悪用される可能性が予見できる場合には、既存の法制で中国企業に網をかけるという手段を取ればよいだろう。
  今回の内容とは別になるが、こういったニュースが日本ではほとんど出てこないのが気になる所である。サイバー関係者はもちろん把握しているだろうが、現代においてはサイバー空間に関する動向は地理的な安全保障と同質のものと把握するべきである。北朝鮮のミサイル、尖閣諸島の有事などに着目しがちであるが、こういった動向も広く周知していくよう、政府に対応していただきたいものである。  

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