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アメリカはデジタルガバナンスを先導せよ(3)(CSISの記事)

本記事は、前回のアメリカはデジタルガバナンスを先導せよ(1)及び(2)(CSISの記事)続編である。前回までの記事は、以下のリンクを参照。

2.記事読後の感想について
  以前取り扱った、データローカライゼーションの記事よりも大枠の議論という位置付けになっている。本記事に関連した重要な部分については、以下の通り。

  ① ITUの機能及び議長選
    本来は電話や無線周波数帯の割り当てなどを主たる議題を論じる場であったが、中国が議長職を長い間占拠し、取り扱う対象項目を徐々に拡大させてきた。IPの規格についてはインターネット技術特別調査委員会(IETF)が主に取り扱ってきたが、中国がITUの対象項目を拡大させ、IPについても提案するようになっている。ロシアやアフリカ諸国を抱き込んで過半数を取りに来ており、アクセス制限、監視や検閲、データローカライゼーションのツールとして、新IP規格を推進しようとしている。今回アメリカがITUの議長職を積極的に取りに来ているこの動きは歓迎すべきものである。ただ、日本の方では本件が全くと言っていいほど話題になっておらず、担当の総務省が公開している資料からも主体的に取り組みを読み取ることができない。
    日本の基本方針は、アメリカへの追随であるということで、ある意味では思考停止に陥っていても問題ないと見ているのだろう。しかしバイデン政権の外交もかなり怪しく、先のアフガニスタンでの失敗を見ても、アジアや中東諸国と良好な関係を構築することは期待できない。このため、日本はアメリカのカバーしきれない部分を積極的にフォローすることが重要である。今後も続報が入り次第、この件については記事にしていきたいと思う。    

  ② サイバー能力構築事業
    未来のデジタルガバナンスは、途上国がキャスティングボートを握っている。従って、途上国が自由民主主義陣営側になるのか、権威主義的陣営側になるのかが、インターネット等の未来を決めることとなり、平時からの途上国との向き合い方が重要になる。
    サイバー空間ソラリウム委員会は白書で経済支援基金を活用するべきとしているが、途上国のサイバーセキュリティインフラが軍事もしくは準軍事的な位置づけとなっていることが多く、基金の要件の制約により、支援に活用できないと指摘している。
こういったつまらない要件を撤廃し、柔軟に運用できるよう改善することが今後のサイバー能力構築事業にとって有益である。
    日本もサイバーに関する支援事業を実施するとしているが、軍事的な問題から民間部門への支援しかできないと言う事にもなりかねない。まずはクアッドの枠組みから開始し、オーストラリアなどの支援事業に相乗りするなどし、軍事的な側面の色を表向き薄めて取り組むなど、したたかな外交を展開する必要があるだろう。

 アフガニスタン、政局や総選挙などで、こういった地味ではあるが重要な問題が見逃されがちである。デジタル庁の発足式での記者会見でもサイバーセキュリティについてはほとんど話が出てこないということもあり、日本人の意識が十分に涵養されていないように思われる。
  昨年のドコモ口座事件の時に若干話題になったが、コロナ関連ですぐに話題が消えてしまった。このままでは何か大きな事件が発生してからでなければ動かない、ということになる。内閣サイバーセキュリティセンター、デジタル庁などによる、来年2月ごろのサイバーセキュリティ月間などの取り組みなどに期待したいと思う。


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