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経済安全保障と商務省の組織強化(CYBER SCOOP記事)

写真出展:NiklasによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/niklas9416-4093236/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6849995

 2022年9月20日にCYBER SCOOPは、アメリカ商務省の経済安全保障の取組に関する記事を発表した。内容は、商務省の対中輸出規制が十分に機能していないことから、商務省の組織強化の必要性を提言するものである。経済安全保障が取りざたされて久しいが、実際の運用は困難を極めており、それはアメリカでも同様のようである。今後の日本が見習うべき政策の方向性が提示されている優良な記事であることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Commerce lacks intelligence resources to keep U.S. tech from fueling Chinese cyberthreat, experts warn)
https://www.cyberscoop.com/senate-intel-to-strengthen-intelligence-exports/

1.本記事の内容について
 ・アメリカの機微技術の輸出を所管する商務省には、十分な機密情報が共有されていないと専門家から指摘されている。事実、多くの機微製品がいまだに中国で流通していることから、産業安全保障局に十分な人員がいるのか、インテリジェンスコミュニティと十分な情報共有ができているのかについて、疑義が呈されている。
 ・昨年度の実績では、産業安全保障局は86%もの輸出許可を発出したが、専門家によると経済安全保障の観点から過度な数値であり、過去10年の実績においても90%以上も承認している。このような状況に対処するためバイデン政権は、各種政策を打ち出している。5月には、中国からのサイバーセキュリティの脅威に対応するため、新たな政令を発出した。8月には半導体法案に署名し、半導体の国内生産に500億ドルの予算を計上し、中国産への依存を軽減する方向に舵を切った。9月15日には、人工知能向け半導体及び半導体製造装置を輸出規制する政令を発出している。
 ・ただ産業安全保障局の体制は脆弱であり、国家安全保障で重要な役割を果たす人工知能、半導体などの先端技術に対処できない状況である。また対外投資委員会についても十分な情報を有しておらず、公開情報を駆使して何とか技術に関する情報を取得するといった作業をせざるを得なくなっているともされている。
 ・2023年インテリジェンス権限法は、国家情報長官が輸出規制や対外投資監視のため、商務省に各種情報を提供する試験的取り組みを承認した。上院インテリジェンス委員会のワーナー委員長も、輸出規制やエンティティリスト作成などの支援を行う用意があると発言している。産業安全保障局もこのことを認識しており、裁量予算を2億ドル、593の役職の増員を要求した。最近、448名の輸出規制関係に従事する専門職を採用している。
 ・またインテリジェンスコミュニティとの連携を深めている。新しい技術の登場や分野横断的な取り組みのため、インテリジェンスコミュニティからの情報提供拡大を求めており、国家情報長官室との連携についても言及している。
 ・2020年の対中輸出額は1250億ドルに達しているが、このうち産業安全保障局の許可が必要な額は半分以下である。申請があったもののうち、94%(2652件)が承認されており、ほとんど輸出管理が機能していないと指摘する意見もある。(これは民間側が承認されそうな案件のみを申請していることから、見かけの数値が大きくなっているという意見もある。)
 ・また産業安全保障局には、中国語の専門家が必要である。調査やリストアップなどの作業で中国語に不案内なために十分な対応ができていないと指摘されており、こういった点においても人員強化が必要である。その他、インテリジェンスコミュニティからは組織的な対応が不明確な部分があり、効果的に組織が対応するためには外交安全保障部門の中核に据えていく必要があるだろう。

2.本記事読後の感想
  経済安全保障のジレンマが見え隠れする記事である。技術保護や情報セキュリティという観点からは輸出規制をするべきだが、一方で売上の減少という憂き目にあう。最終的にはバランスの問題ということになるのだろうが、どの水準までであれば合意形成できるかがカギになるのである。
  経済官庁を安全保障体制に組み込むことは至極当然の流れではあるが、一方で自由貿易や規制緩和といった別方向の力も働く分野であることから、どのような落としどころを見出すのかが重要である。日本においては経済側の論理が強く安全保障の取組が徹底されない傾向にあることから、アメリカの先例を見ながら対応を進めていく必要があるだろう。
  ただ現在の政権にこのような対応を期待できなそうである。林外務大臣のような媚中派を続投させるような無能な岸田政権では、いくら法案が可決されたとしても運用面で骨抜きにされてしまうだろう。このような有害な政権には一刻も早く退陣していただき、体勢を立て直さなければならない。幸か不幸か、支持率が低下して政局の雰囲気が少しだけ出てきているのは明るい兆しだろうか。統一教会や国葬の問題が取りざたされているが、実際には現実的な政権運営ができていないことが本質にあるように思われる。補正予算は組んでおらず、コロナ対策でも既存の政策を継続するのみで損失を被っている業界への給付などの経済対策もされていない。安全保障面についても中国の実弾演習に対する対応などで無能を露呈しており、こういった失政が不満を鬱積させることになっていると考えるべきである。これを機に政権運営を抜本的に見直していただきたいが、目先の支持率を気にして統一教会問題のような下らない案件でお茶を濁すようなことはしてほしくない。

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