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ウクライナ情勢第24報(戦争研究所の記事)

写真出展:ELG21によるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/elg21-3764790/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7036018

 今回は、戦争研究所が発表しているウクライナ情勢第24報について紹介する。内容は4月15日から4月21日を総括したものである。この間、各国の軍事支援やブチャの虐殺などの展開が見られ、ロシアの劣勢が明らかになった。今回は、主に情勢を巡る背景部分に着目していただければと思う。

↓リンク先(UKRAINE CONFLICT UPDATE 24)
https://www.understandingwar.org/backgrounder/ukraine-invasion-update-24

 1.概要
   今回発表したウクライナ情勢第24報は、4月15日から4月21日の重要な政治的事項、公表された情報について取り扱っている。概要については以下の通り。

  ・ロシアとウクライナは、ここ数週間で停戦交渉を再開することはないと見込まれる。双方は東部ウクライナの戦況の展開により、今後の対応を考えようとしている。特にウクライナはロシアを撃退することができるという自信を持っていることから、戦況が悪化しない限り交渉を再開しないだろう。
  ・ロシアは遅々として進まない戦果をごまかすため、ウクライナ戦争をNATOとの戦争であると喧伝するようになっている。
  ・ロシアは占領した南部ウクライナに傀儡国家を樹立しようとしており、恒久的にこれらの地域を支配しようとしている。
  ・ロシアとベラルーシは、西側諸国の経済制裁はヨーロッパ経済に打撃を与えるものであり、制裁軽減措置が奏功していると喧伝している。
  ・ロシアはNATOの拡大抑止及びウクライナの西側諸国との軍事連携を抑止するのに失敗している。
  ・この段階に至っても、ロシアが戦術的核兵器を使用する兆候はない。

 2.重要項目
  ① 停戦交渉
   ・ラブロフ外相は、4月19日にウクライナ侵攻の第二段階が開始されたと発表し、その目的はドネツク人民共和国及びルガンスク人民共和国の「完全な開放」であるとしている。4月17日にゼレンスキー大統領は、ロシア軍及び政治層は信用できず、東部ウクライナの戦況によっては、キーウを再度侵攻する可能性があると述べており、領土については一切妥協しないという意思を強調した。
  ・ロシアの虐殺行為が明らかになるにつれ、ウクライナ側の式が向上し、交渉再開が暗礁に乗り上げている。4月17日のCNNのインタビューで、ゼレンスキー大統領は、交渉を望むものは誰もいないと述べている。クレバ外相は、マリウポリに残っている防衛軍を殺害すれば、レッドラインになりえると語った。また4月20日にゼレンスキー大統領は、ロシア政府がマリウポリの住民と防衛軍を撤退させる「特別交渉」提案を拒否したと語った。
  ・対してロシアは、ウクライナが和平交渉を拒んでいると喧伝し、ウクライナ侵攻を正当化しようとしている。ペスコフ報道官は、ウクライナが頻繁に対場を変えて、一貫した交渉ができないようにしていると批判し、ザカロワ報道官は、西側諸国が交渉をコントロールしており、陽動作戦として利用していると批判した。
  
② ロシアの情報工作
 ・ロシアは国内向けにウクライナ戦争を正当化するため、戦争を西側諸国との戦争と再定義している。ザカロワ報道官は、アメリカとNATOがウクライナを操っており、8年前からアメリカが東部ウクライナにおける戦争を煽り立ててきたと述べた。ロシア議会の外交委員会のスルツスキー委員長は、アメリカとイギリスがロシアへの対峙を正当化するためにウクライナを利用していると批判した。ヴォロディン議長は、ウクライナによる兵器調達及びNATO加盟の動きにより、ロシアがウクライナを侵攻せざるを得なくなったと主張した。メドヴェージェフ安全保障委員会副委員長は、ウクライナの外国人傭兵もナチの一部であるとし、捉えられた場合は「非ナチ化」の制裁対象になると述べた。今後ロシアは、ウクライナの自治が弱体化していること、ウクライナ戦争がNATOとの戦争と再定義することで、犠牲者を正当化しようとするだろう。
 ・ロシアは虐殺を計画している地域、もしくは虐殺した地域において、ウクライナ軍が虐殺していると主張することで、戦争犯罪の糾弾を回避しようとしている。
 ロシアはウクライナ軍が民間人を人の盾として利用し、ハリコフ州のロゾヴァ駅の攻撃をロシアへの憎悪を先導するために利用していると批判した。(クラマトルスク駅の攻撃と同様のパターンである。)
 ・ルガンスク人民共和国のロシア人高官は、ウクライナの特殊部隊が集会にテロ攻撃を計画していると主張しているが、このような攻撃は発生していない。またロシア国防省は、以下のような主張を展開している;ウクライナ軍がマリウポリで投降した市民を殺害しようとしている;ザポリージャ、オデッサ、スームィ、ハリコフ州で人間の盾を使っている;オデッサでロシア人を虐殺している。このような発言からわかることは、すでに虐殺している、もしくはオデッサで虐殺を計画しているということである。
 ・ポリャンスキー国連政府代表部第一副代表は、4月18日以前にアゾフスタール製鉄所に民間人が存在しているとは把握しておらず、原理主義者とネオナチが民間人を人間の盾として工場に拘束していると主張している。その他、ネオナチがヘルソンの学校を本拠として利用しているという主張も展開している。ルガンスク人民共和国のロシア人高官は、ウクライナ軍がイースター(4月24日)にザポリージャ、ハリコフの協会を攻撃しようとしていると主張している。
 ・ウクライナのブラチュク オデッサ方面軍報道官は、ヘルソン人民共和国を樹立する住民投票を行うため、複数のロケットランチャーによりヘルソンを攻撃しようとしていると発表している。
 ・ロシアは、この段階での戦術的核兵器の使用は計画していないと見られる。4月19日にラブロフ外相はウクライナにおいて核兵器の使用計画はなく、既存兵器しか使用しないと述べており、ロシアメディアもこの情報を拡散している。ザカロワ報道官も、司法当局は核兵器利用を扇動する者を取り締まるべきであると主張し、ラブロフ外相の発言を補完している。
 ・インテリジェンス評価に詳しいアメリカ人高官によると、ロシアが核兵器を準備している兆候はないとしている。ロシア政府は過度な攻撃によりNATOが介入してくる事態を回避しようとしている。当研究所では核兵器の使用を排除することはできていないが、ロシアがこの段階で核兵器を使用することはないと見ている。

③ ロシア国内における反戦運動及び検閲
 ・ロシア政府は、今回の戦争では軍や戦略亭重要施設を標的としているのみであり、ウクライナ民間人を標的とはしていないと主張し続けている。ロスコムナゾール(通信・情報技術・マスコミ分野監督庁)は、過去数週間において、独立系メディアや海外のメディアなどのウクライナ戦争報道へのアクセスを規制した。その他、反体制派のジャーナリスト、活動家、市民団体などを脅迫している。
 ・4月20日にロシア国防省は、戦死した遺族の情報を機密扱いにしたが、これは戦死者の数を隠蔽するための措置と見られている。

④ ロシアによる制裁への対応
 ・4月18日にプーチン大統領は、西側諸国による「電撃経済制裁」は失敗に終わったとし、ヨーロッパの生活水準が低下することになると主張した。メドヴェージェフ国家安全保障副委員長は、経済制裁によりハイパーインフレが発生し、ウクライナ難民の流入により犯罪が波及すると述べている。
 ・フォンデアライエン欧州委員長は、ロシアの破産は時間の問題であると述べた。ただロシアとベラルーシは、この経済制裁を新たな機会であると主張しており、クスヌリン副首相も、ロシアの若者が新たな発展の方法を模索するための良い機会であると主張している。ベラルーシのゴロフチェンコ首相は、食品以外の国家統制価格を導入することにより、システム的にインフレを軽減することができるとしている。
 

⑤ ロシアの占領政策
 ・ロシア政府は、占領した南部ウクライナ地域に代理国家を樹立しようとしている。ドネツク人民共和国のプシーリン元首は、ロゾフスキの住民が独自に会合を開き、満場一致でドネツク人民共和国に加わることになったと発表した。今後も住民が強制的に十院投票を強いられることになると見られている。ウクライナ軍は、4月27日にロシア軍がヘルソン人民共和国を樹立するための住民投票を計画していると発表した。その他、ヘルソンやザポリージャの住民をウクライナ軍との戦闘に徴用しようとしているとも発表している。またロシア軍は占領地の情報を制限しており、新ロシア的な情報を拡散している。国籍別ではロシア人が過半数であり、ウクライナ政府の発表によると、リビアからの数百名からなる傭兵は、東部ウクライナのポパスナの戦闘に従事しているとされている。その他の情報として、アジズアベバにあるロシア大使館の前に、エチオピア人傭兵数百名が集められているとされている。

⑥ ロシアの脅威認識
 ・北極評議会のコルチュノフ大使は、NATOの東方拡大は伝統的な中立ブロックにとって有害であると主張した。フィンランド議会は、NATOへの加盟の質疑を開始し、数週間後に加盟申請する見込みである。
 ・アメリカと西側諸国による軍事支援は、その効果を発揮している。ロシアは、アメリカとNATOによる軍事支援は戦争を悪化させ、予期できない結果をもたらすとけん制した。カービー報道官は、航空機の部品を含む軍事支援を行ったと発表した。4月21日にアメリカは8億ドルの追加支援を発表し、これは車両付きの榴弾砲72基、44万の弾薬、無人航空機121基、多目的装置や予備品などの支援である。またアメリカによるウクライナ兵の訓練も再開されており、ポーランドで数週間実施されることになるだろう。
 ・ヨーロッパ諸国の対応は以下の通り。
  4月21日にフィンランドが、防衛物資を送付した。(数は特定されていない。)
  ドイツのベアボック外相は、大砲やメンテナンスの訓練を実施すると発表し、対戦車兵器、スティンガー対航空兵器及び他の兵器も供与するとした。
  4月21日にデンマークのフレデリクセン首相は、ウクライナへの軍事支援予算を2倍にすると発表した。
  スペインのサンチェス首相は、200トンの銃弾や他の軍事物資を発送したと発表した。

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