"さよなら照明塔"イベントに出かけた日のこと
雨の日だとしても、厚く覆われた雲の向こうにはいつも青い空が見えると聞いてから時々、雨粒の音を聞きながら晴れ渡る空を想像する事があった。
ある年の皆既日食ツアーに飛行機から見学するというものがあって、雨の影響を全く受けない空の上からの写真を見た時から、それは本当に存在するのをいつでも実感出来るようになった気もしている。
この間、旧川崎球場から見上げた照明塔のおかげで一度も応援した事のない球団の存在も同じように感じられるようになれそうだと思えた。
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旧川崎球場の照明塔が撤去されるというニュースを最初に知ったのはたしか去年の夏頃のこと。
私にとっては生まれた日として馴染みのある数字が、野球史に残る"10.19"として呼ばれるのを知ってから、なんとはなしに気になる存在としてあった旧川崎球場の遺構が撤去されるというニュースに、千葉ロッテマリーンズのファンでもないのに心がざわついていた。
大洋ホエールズのファンでも、もしくはロッテオリオンズのファンでもと言った方が正しいかもしれないけれど。
そうはいっても、実際に現地を訪れたこともない中では次の箇所を読んでも、正直、残されるものがあるだけでも凄い事なのではないかと思っていた。
よく見かける"発祥の地"等の説明を読む時、かつての面影も何もないビルとビルの合間で佇むだけだったとしても、出来事に思いを馳せるキッカケにしては十分に思っていた事もあったから、まだ、モニュメントとして一部が残されるというのなら石碑だけよりはずっと良いお話だと最初は思ってしまっていた。実際、配慮のあるお話ではあると言えるのだとも思う。全く何も無くなるというのではないのだから。
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ショーアップナイターの松本秀夫さんのこの記事と同じ内容のツイートを前日に見かけて、これは行かねばならないと決めた翌日は、照明塔のライトアップがされるにはとてもお似合いな晴れた日だった。
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JR川崎駅に降りると普段は改札を背にして左手のラゾーナ川崎方面に行く事が多いのだけど、その日は右手の大きな階段を降りてバス乗り場を探した。
目的地はもちろん旧川崎球場。今は富士通スタジアム川崎と呼ばれる球技場になっているその場所は川崎駅東口からバスで4駅。
教育文化会館前で降りて、歩いて2分の場所にあった。
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初めにロッテオリオンズの応援団をされていて、後に球団職員まで務められた横山さんのご挨拶があった。Twitterでフォローさせて貰っていたので、実際のお声と普段お見かけするツイートの重なるようなお話が、今は見えない野球場の面影と照明塔に不思議にリンクするような感覚を持たせてもらいながら、さよなら照明灯のイベントは始まっていた。
ショーアップナイターでお馴染みの松本さんが西村監督をご紹介される場面では、暮れていく空とも相まって今から試合が本当に始まるような、そんな気持ちにもなっていた。
実況としてのお声とトークショーとしてのものとはトーンや張りが違うのでその二つを聞かせて貰えたという意味では贅沢な一瞬になったのだけど、このまま過去のお写真を見ながらでも、松本さんの実況で一打席だけでも当時の再現があって欲しいとつい願ってしまう程の瞬間でもあった。
目の前に存在しないものをまるで見えるように聴かせて貰えるのがラジオの実況だから、松本さんの声を聞いただけで試合が始まると錯覚するのは当たり前にも思ったし、今と過去が交錯するようなリアリティーを持って西村監督の視線から見た川崎球場でのエピソードを教わる内に、当時を知らない私でもこの照明塔をこの角度から見上げられなくなってしまう事実に焦りに似たものを感じるようになっていた。
さよなら照明塔のイベントは、今年、まだあと何回か開催されると富士通スタジアム支配人田中さんのお話にあった。
イベントの予定が見られるサイトがないかと検索してみると川崎球場の歴史を振り返る講座が2月13日にあったこともわかった。
川崎球場の歴史を学ぶ中で、野球の歴史を更に追いかけてみたくなってくる。
翌朝、タイムラインに流れてきたツイートからサンスポさんに記事があるとわかったのでコンビニにて購入。
あの日ご一緒した皆さんは200人とあった。
お一人お一人のお顔を見た訳でも、お名前を交換した訳でもなかったけれど、過去から未来を繋げる光を共有したのがとても嬉しく、また機会があったら見に行きたいと思った。
野球ファンは古い時を思い出したり語り合うのが楽しいものだと横山さんのお話にあったのを思い出しながら、"ロマンティックなカクテル光線"の写真を眺めていると少し野球ファンとして成長出来たような気がした。
同じ景色を前にして、言葉に出来ずにただ見惚れていた時に、松本秀夫さんが照明塔の輪郭をラジオの実況の時のように際立たせて下さった言葉を胸に秘めていると、次に東京ドームに行く時は、見慣れた回転扉もいつもと違う視線で見つめてしまいそうだ。
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