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半導体調達担当のつぶやき(2022/08/17)


書き始める理由


半導体を開発する側から使う側に転職し、2017年からとある企業の電子部品調達(主に半導体)をしております。

転職してすぐの2017~18年もMLCCを始め半導体の調達困難な時期があり、落ち着いてきたところに各国でコロナによりロックダウンとなり、
 車載半導体のキャンセル/在宅需要関係の注文⇒車載の再注文
 ⇒納期つかずパニック注文⇒半導体LTの長期化=半導体調達難
となり現在に至っています。
細かく言うとトランプ前大統領時代の中国HUAWEIへの輸出規制もあり、中華系スマホメイカーの過剰発注もあったりと。。色々重なりました。

私が調達している物で現時点で半導体のLT(Lead Time)は最大で82週です。約1年と7ヶ月後にしか手に入らない!
物に寄りますがコロナ禍の前はだいたい16~35週くらいでした。
コロナ禍前のようにLTに合わせてサプライヤと交渉しPOを打つだけでは調達が出来なくなっています。

2017年の調達難の時期を踏まえ2018年以降も個人的に市況情報や、レアメタルの先物価格など様々なフリーの情報ソースを集めて市況予測をして対策を打ってきました。
ただ、記録をしていなかったので、
 どの程度の精度であたっていたのか?
 どの指標や情報を見てどう考えたのか?
などが曖昧になってしまっているため、記録のためNoteに残してみよう!
と思いたちました。

ということで、色々な意見などもあると思いますが、個人的見解ということで優しく見守って頂けたら幸いです。



全体の市況感

アメリカの状況

米国のCPIとか雇用統計などに注目していますが、7月は先行指標の資源価格の下落など織り込まれてたようでしたが、雇用統計の方はトランプ元大統領の移民抑制とコロナ禍での給付金などでまだ賃金上昇が5%台となっていてアメリカ経済は強い状態のままで、インフレリスクが低下してきているので結構旨くソフトランニング出来そうな気がしています。
ただ、EUや中国がかなりまずい気がしています。

EUの状況

EUはエネルギー価格上昇からの高CPIが続き、賃金上昇がそれに合わせて上がってしまうが、エネルギー価格はロシア依存も大きいため長期化する。そんななかカーボンニュートラル政策は推進されるため、スタグフレーションに陥ってしまうリスクが上がっていると感じている。23年は相当厳しくなるのかなと。。

中国の状況

中国経済は既に現れていた不動産バブルの崩壊が始まっており、若者の失業率が19%になっていると言う記事が出ていたり、昨日は1%の利下げが実施された。日本の90年代後半の就職氷河期時代の規模の大きい版のような状況になってきているように見える。
ただ違いは為替が固定されている(政府の意志でコントロールができる?)ので国による財政投資で回避できるか?ところですが、中国は過去も公共投資で景気を支え続けて成長率を維持してきていましたが、今まで見えてこなかった失業率などが顕在化してきたなかで、続いている米中貿易摩擦もあり初めての深い谷を経験する可能性を懸念している。
習近平氏の3選までは持つと思うが。。。

半導体の市況について

半導体の需給状況として、LTについては現状維持でまだ長期化されたままの状況。最長で82週は変わらず。
ただし、ディスクリートでMOSFETなどは若干LTが緩和してきた。

実感として厳しいのは
 MCU(90nm~180nm)は未だに厳しい。。特にST、Microchipなどは特に
 WiFiなどの通信系のMCU(40~55nm)
 電源周りのアナログIC
これ以外の半導体はかなり緩和してきている実感がある。
まだクリスマス商戦向けの製造ピークなので、実際のキャンセルはでていないようだが、国慶節空けくらいからLT緩和が更に進むのではと予想している。

上記を考えた背景は下記記事などの状況と商社在庫の状況ヒアリングなどからの予想です。

先日の日経新聞でも半導体在庫についての記事も出ていましたが、実際に商社各社と話してもどこのメーカーも半導体納期状況のバラツキが大きく在庫が厳しくなっている実感はある。

またTSMC/UMCなどの四半期コメントでも在庫削減フェーズに入ったと指摘するコメントも出てきている。

半導体市況に対するリスク

在庫調整が起きているのはスマホ、Laptop、Game、Wearableなど一部に限られており、景気循環というよりはコロナ特需に対する在庫調整で、車載など含め全体の需要としては右肩上がりの方向性は維持されていると考えられるため需給均衡されるの比較的早くLT改善が進まない可能性もあり。

また、引き続き中国のゼロコロナ政策によるサプライチェーンリスクによる需給悪化懸念あり。

景気減速や半導体需要の減速がみられているがコロナ特需の一時的な調整にとどまり、需給改善は2023年以降も限定的である可能性がある

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