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eversharp 特にスカイライン

私はちょうどアメリカ万年筆の雄たるウォーターマンが敗れ、パーカーやシェーファーが台頭し、万年筆が文字通り「色付き、新たな形を探り始めた」時代に生まれました。  

私はその少し後、肌の色や相貌の多様性がすっかり認められたころに生まれました。
ヒトは私達より100年ほど遅れているようです

少し詳しい方なら1920-30年代、銀幕よろしく角張ったモノクロの世界に収まっていた万年筆を赤い導火線にカラフルな炸薬を備えた一団が鮮やかな爆発で見事解き放った事はご存じでしょう。
知らない方でも今説明した通りです。

見落とされがちですが、この爆破は色彩をケミカルにモノクロからリバーサルへ変化させただけでなく、フィジカルにそのフレームをもぶち破り形を自由にしました。
前者はパーカー、後者はシェーファーに代表される変化でしょう。


「万年筆と科學」において著者、渡部旭氏は「色軸は直ぐに飽和し、軸の形を工夫する必要が出てきた。そこで登場したシェーファーのバランス型は大胆かつ一部の隙も無いアッパレな手際だと感心、賞賛せざるをえない。」
(大意)と称しました。少し嫌味もあったでしょうが。※1



これらの動きから十年ほど後にこの万年筆は生まれました。

eversharp skyline 64



そこそこ柔らかいが、だからといって筆圧をかけるのはご法度だ。



デザインは工業デザイナーであるヘンリー・ドレイファス。
代表作品等はネットで見ていただくに任せるとして。
デザイン分野は素人なのでこれも任せます。

では、この時代の他社の万年筆を見てみることとします。
パーカーではヴァキュマチック、初期の51なんかもこのあたりでしょうか。
シェーファーではタッカウェイやらバランスの縞軸なんかです。敢えて個人的な見解を搾り出すとすれば、
「モンブランの二桁シリーズに続く産業デザイナーによるデザインの先駆け的存在」
「周りに合わせてなんとなーく色変えて、なんとなーく形を変えた、ドリックよりはるかに挑戦的。エライ!」
くらいでしょうか。
因みに、ユーロボックスでこのアールデコデザインに脳を侵され、スカイラインばっかりを買い続ける人に会ったことがあります。

次にモノとしてですが。
スカイラインが欲しい方は復刻の方をお勧めします。
オリジナルも悪かないですが、
年数がたって樹脂がまずい。
キャップの頭のエボが痩せて外れる。
細管が詰まる、若しくは無い。 ※2
首軸をネジでなく押し込む。
等持病と設計がまずいのとアメリカ出身なので全体的にアメリカンです。
治せなくはないので状態がいいのを買ってガッツリ手を入れれば復刻よりは安くあがると思いますが、、、

終わりに、大した感想は特に無いですが。
前提としてデスクセット、デスクペンが初登場し流行しており、それと同時にミリタリークリップが流行のデザインでした。
よくみるとどちらも取り入れられています。
机上を主戦場とするデスクペン型の尻に、文字通り戦場向けのミリタリークリップ。

万年筆は同じ取り合わせでデザインされていると思っています。
機能的デザインに矛盾無く破綻していない。
それはバランス型だろうがそうです。
両端を尖らせたオーバーサイズだろうがです。
しかしこれに至っては縁遠く、一方を見れば反対は不必要となるデザインを一つに落とし込んでいます。
(デザイン先行で設計に制約を受けたとはいえ)

その点で、言うなれば「万年筆デザイン考古学」上の大きな飛躍の一つ(例を挙げるならば前述した変革、ウォーターマンによるクリップの開発、51によるフーデッドデザイン etc)と評価されても良いのでは無いでしょうか。
奇抜で後に続く者は出ませんでしたが、、、



※1 渡部氏は大のウォーターマン贔屓だったのでパーカー、シェーファー両社の発想を認めつつ質が伴っていないとして批判的にも見ていた。

※2 全体を押し潰す作りなのでなかったところであまり不便はないと思われる。



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