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#72 チョーサーの物語を調査する。「英語教師のための英語史」第4章(その1)

辺見、他(2018)の「英語教師のための英語史」第4章は中英語の代表的作品「カンタベリー物語」についてである。

「カンタベリー物語」とは

著者のチョーサーは14世紀のロンドン税関長である。その代表作が表題にある「The Tales of Canterbury カンタベリー物語」(以下、CT)である。物語は、チョーサーが1130年に完成したカンタベリー大聖堂訪問の際、同じ宿屋に泊まっていた人たちと物語を語りながら旅をするという筋書きであるため、さまざまな話(ロマンス、コメディー、説教など)があり、また話し手による英語方言の差異などが垣間見れる貴重なものとなっている。

第4章では、まずCTに見られる語形、語彙、統語法についての紹介がある。それぞれ中英語後期の特徴とも言え、とても興味深い。

語形

語形では、madeがmakedとなっている例を示している。また、madeやhadはsyncope(語中音消失)とされているのが興味深い。bridやthriddeの音位変換前の綴りの紹介があった。ME atte best -> ModE at best

語彙

時代を経て、同じ語彙が意味変化を起こす例はよく見られる。堀田先生は、以下でその分類をしている。

ここでは、中英語ではsillyがhappy, fortunateの意味であったり、niceがfoolishの意味で使用されるなど、形容詞の意味変化(pejoration, amelioration)とfowlの特殊化(specialization)のことが取り上げられている。

統語法

二人称代名詞のthouやyowのこと、独立不定詞の副詞がより豊かだったこと(sooth to seynなど)、dreamやthinkの人称構文、非人称構文(methinksなど)、そして法助動詞oughtのことが掲載されている。

方言

古英語と同じく、14世紀は北部、東ミッドランド、西ミッドランド、南西部、南東部の5地域での方言に分かれている。カンタベリー物語はさまざまな語り手が話す方式なので、The Reeve's Taleなどに見られる、例えば主語Iの代わりのIkや、homeがhamと綴られた北部方言の例が示されている。

今日はこんなところです。


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