見出し画像

#63 「英語教師のための英語史」の第3章を読む(その2)。

辺見、他(2018)の「英語教師のための英語史」第3章の中英語の話題その2。ここにきて、中身が濃い。

借入語

中英語では外来語が大量に入ってきたが、ギリシャ語、ラテン語、フランス語、スカンジナビア語の影響が挙げられている。本書では本来語が8割、フランス語由来が1割、その他で1割とされていて、フランス語の多さが示されている。ただし、堀田先生のブログと同じく、ノルマン征服の直後ではなく、13世紀半ばから14世紀がフランス語流入の最盛期であることが示されている。また同時に古英語からのスカンジナビア語=古ノルド語の影響が示されている。skyrtaがskirt, shirtのdoubletとして他の二重語とともに紹介されている。

語尾の水平化

名詞の格変化が古英語から中英語になるにつれて、水平化した。たとえばstoneが例として出されているが、中英語では、単数形はまだ主格、属格、予格、対格で異なるものの、複数形ではすべてでstonesとなっている。現代英語では、単数形がすべて形が揃っているが、それに連なる流れが見える。
そのあとで、動詞のdo否定や不規則動詞のこと、語順、形容詞の強変化、弱変化のこと、副詞の-liceの発達のことが載っている。ここはむしろ、秋元ら(2023)の『近代英語における文法的・構文的変化』を読み込みたいところだ。

ほっと一息

中英語ということで、ほっと一息コーナーもかなり密度が高い。
(1) 綴り
様々な単語の綴りが多数あったことが記されている。たとえば、peopleが20以上、sheが60以上、throughは500以上であることが載っている(throughの綴りのバリエーションは堀田先生のサイトに掲載されている)。
(2)!と?
!はラテン語のIo(歓喜の喜び)、?はQuaestioに由来することが掲載されている。?は最初のqと最後のoからできており、このoが点になったとの説明がある。
(3) その他
この後もかなり濃い話が続く。関係詞のこと、仮定法と接続法、ニックネームなどに見える異分析、bridの音位変換、aliveの語源(on liveのonの接頭辞化)と盛りだくさんである。onのaへの変化はちょうど先日Voicyで堀田先生がtwice a weekのaはonの音変化であることを話題にされており、個人的にホットな話題だと感じた。Nowadaysのaとdaysのsと絡めて、個人的にホットな話題だと言える。

今日はこんなところです。次は第4章だが、第4章はChaucerについて。

今日のWords of the day. さまざまな辞書から。

swole (adj) MWから。slangで「筋肉ムキムキの」という意味。swell "to grow/to become bigger"のp.p. swollenから。ゲルマン祖語*swellananから、古英語に。それ以上は不明。ちなみに、swoleと入れて、イメージ検索するとやばいことになる(笑)。
emote (v) 大袈裟に感情を表すこと。emotionのback formation.
satisfactory (n) satisfyの形容詞だが、satisfy自体は、ラテン語satisfacere = satis "enough"+ facere "to make, do, perform"から。satisはさらに印欧祖語*sa- "to satisfy"に遡れるが、この*sa-には、sadも遡れる。sadは古英語では「満足した、満腹で」という意味だったが、「堅固な」→「重々しい」→「(精神的、肉体的に)いっぱいいっぱい」→「疲れた」と経て、13世紀ごろに現在の「悲しい」という意味へと変わったようだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?