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飲んだ酒は吐かない・1「DV・モラルハラスメントとはなんなのか」


DV・モラルハラスメント加害夫と長らく結婚生活を送り、昨年ようやく離婚。その体験については「モラハラ・DV夫との離婚手順」というタイトルで1から11までの記事にまとめ、脱出準備、離婚までの手続きや住まいの探し方など具体的な情報や知恵を書きました。

ここでは、そこで書ききれなかったこと、DVやモラルハラスメントとは結局のところ何なのかを始め、被害者となってしまうタイプ、加害者の人物像などについて、私自身がさまざまなものから学んだり体験から実感したことを掘り下げていきたいと思います。

その1となる本記事では、DV・モラルハラスメントとは何か、ということと、被害者がコントロールされていく3つの段階について、体験して知ったことを解説してみました。

まだ被害を自覚できていないひとに、自分の置かれた状況に気づき、考え、行動するきっかけにしてもらえればと思います。

「飲んだ酒は吐かない」は酒好きの私のポリシーで、いったん飲んだものはきちんと自分の中で消化していこう、そう思って本稿のタイトルにしました。


DVとは


DV(ドメスティック・バイオレンス)とは恋人や夫婦など親しい関係にある男女間で(または同性のパートナー間でも)起こる暴力のことで、デートで会うたびに暴力を振るわれる「デートDV」など、必ずしも一緒に暮らしていなくてもありえるものです。

この暴力は、サイクルとなって現れるのが特徴で、ハネムーン期と呼ばれる時期には過剰に優しく、プレゼントを贈ったり優し気な言葉をかけるなど愛情深くみえる態度もありますが、次第に緊張が高まる時期に入り、理由なく冷たい態度になる・イライラして暴言を吐くなどに続き、物に当たったり家財を破壊する、相手を殴る・蹴る・首を絞めるなど激烈な暴力のサイクルに入ります。

そしてこの3つのサイクルを繰り返すうちに激しさが増していきます。(はっきりとこの経過が見える例ばかりではないこともありますが、一度でも手を上げられたり恫喝や威嚇で恐怖を感じることがあれば、それはDVといえます)

暴力を受けている被害者に対し、そうした経験のない人は『なぜ逃げないのだろう』と思うかもしれませんが、DVに遭っている人自身は繰り返される暴力で正常な判断力を失うほど疲弊し、相手から恫喝や脅迫により心理的にコントロールされているせいで、自分の状況を正しく自覚できないし、行動もできない状態です。

例えば、よく用いられる例としてサーカスの象の話があります。象を子象のころから鎖につないでおくと、成長してその鎖を切れるほどの力を持つようになっていても、鎖を切って逃げようとしないといわれますが、それと似ていて、力による支配で徹底的に自尊心を奪われ無力感を味わうと、逃げられない、自分は何もできない、逃げても捕まってひどい目に遭う、と強く思いこむようになってしまいます。

結婚生活や交際期間のあいだ徐々に支配され、次第に暴力に慣らされていくため正しい現状認識が出来なくなっていき、監禁されているわけでなくとも、相手の許可を経ていない行動を起こすことは被害者にとって、とても恐ろしく不可能なことになります。

被害者にとって、初めは自分が好んで選んだ相手でもあり、その相手から受けているひどい扱いは認めたくないという感情も働くので、事実を直視できず、ハネムーン期の相手の状態だけを認識しようとしたり、相手が暴力を辞め変わるはず、と思いこもうとする心の動きが強くなることもあります。

また、自分が受けている被害を外部に知られることを被害者自身が恥と感じていたり、加害者から公言しないように圧力をかけられることで、被害者が何事も無かったかのように装うため、他者からは仲の良い普通の夫婦に見えることすらあり、問題に介入してもらえる機会を失っていきます。

暴力のサイクルが繰り返されるうちに、被害者はますます疲弊し精神力を失っていき、最悪の場合は相手からの、または自らの死に至ります。


モラルハラスメントとは

モラルハラスメントは「モラル」よる「ハラスメント=精神的虐待」のことで、この「モラル」というのは、おもに被害を受ける側が「こうあるべき」と考えていることや、強いられて「守らなくては」と思い込んでいるルールなどを指します。
一般的な常識や「モラル」がそれに該当する場合もありますし、育ってきた過程で周囲から強いられてきたルールや理想がそれに当たることもあります。

被害者が守ろうと思うモラルを利用して、精神的にコントロール下に置き支配・虐待するのがモラルハラスメントなので、被害側にその「モラル」を遵守したい気持ちが強ければ強いほど、加害者にとっては、被害者がそれを破った時や守れない時に感じる強い罪悪感を利用し、コントロールしやすいということになります。

私の場合は、DVもありましたが、日常的にはこのモラルハラスメントが中心でした。それは、初めはごく些細なことで不機嫌になった相手との「ケンカ」に思えましたが、そこでこちらが折れると、徐々にありとあらゆることが批判され、制約され、相手の不機嫌の原因になっていき「おれを不機嫌にさせたお前が悪い」と暴力に発展しました。いつも、今思い出すとバカらしく大人げない理由で、です。(このあたりのバカらしい出来事の数々についてはアメブロに書いています)


ただ、当初DVについては知識があったものの自分がそれに遭っていると認識できずにいたことと「モラルハラスメント」については知らずにいたので、自分の感じている不条理が一体なんなのか困惑し、苦しいばかりでした。それが、本を読んだりブログで同様の被害を受けている人との交流によって、自分の状況を理解していきました。

私の経験から振り返ってみると、モラルハラスメントの行われかたには段階があり、それはおおむね次のように分けられます。(ここでは、特に夫婦間や交際関係で行われる男性から女性へのモラルハラスメントを前提にしています)

*必ずしも順序に沿って進むとは限らず、3つの段階を行ったり来たりするのを繰り返したり、段階の違いをはっきり分けられないこともあるはずですが、冷静に振り返ればおおむねこのような流れでコントロールされていたのがわかると思います。


モラルハラスメントが行われる段階

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