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播磨陰陽師の独り言・第532話「偽物映像」

 その昔、外国テレビ番組の『スタートレック』がまだ『宇宙大作戦』と呼ばれていた頃、人工知能が映像を加工して、偽の映像を創り出すエピソードがありました。
 当時、映像と言えば光学フィルムでした。光学フィルムと言うのは、レンズから入った光をフィルムに受けて現像する方法です。デジタル配信に代わってから、映像は、ドットと呼ばれる光点の集まりになりました。
 光学フィルムを加工した偽物映像は、概念そのものが驚きでした。
 遥かな未来を描いたSF作品でも、まだ世の中が昔過ぎたのか、モニタはブラウン管でした。その中のフィルム映像が偽物だったのです。記録を変更しようもないフィルムが、現実のような偽物を創り出すなど考えられもしない時代のお話でした。
 しかし、最近は、生成AIが勝手に偽物映像を生み出してしまいます。それが〈普通の概念〉になってしまったことに、かえって驚きます。
 生成AIが造った映像を見ていると、まるで夢を見ているような感じがします。リアルなのですが、どこか妙な違和感を感じるのです。と言うのは、たとえば、海の生き物たちが自転車を運転している映像とか、猫の王様とか、普通は考えないものが多いからです。増え続ける雪の中の犬とかも妙です。
 人工知能が見ている夢を、そのまま動画にしているような感覚があります。
 夢と言えば、すでに、夢を映像化する装置が発明されているようです。眠っている時の脳をスキャンして、データに基づいて生成AIで動画を得る方法です。これが完成すれば見ている夢が映像化出来る訳です。
 自分が見ている夢を映像化した場合、著作権はどこにあるのでしょうね?
 時々思いますが、生成AI任せで造った映像や静止画を〈作品〉と呼んではいけないと思います。著作権は生成AIにあると思うのです。もちろん、参考にしたり、ベースにして造り直したりするのは構わないと思います。しかし、著作権を勘違いしている人が世の中には多くて、自分で買ったものの著作権は自分にあると勘違いする人もいるのです。買った人には著作権はありません。あくまで、オリジナルを作成した作者に著作権があるのです。
 少し前、著作権を理解していない人の舞踏を撮影したら、
「映像の著作権は出演者にあるから」
 と言われたことがあります。そんなことはありません。映像の場合、撮影した人に映像著作権があります。出ている人には肖像権しかありませんから……。

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