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播磨陰陽師の独り言・第464話「狸と地車のこと」

 狸は、どこにでもいるような印象のある動物です。しかし、日本にしかいないそうです。ホンドタヌキとエゾタヌキの二種類しか存在しません。最近、外国で野生化している狸は、毛皮を取る目的で日本の狸が輸出されて逃げ出したものです。
 狸は、外国で〈アライグマのような犬〉と呼ばれています。他に似た生き物がいないそうで、ずいぶん曖昧な呼び名だと思います。
 東南アジアの動物園では狸が珍しく、かなり欲しがっています。希少動物と交換してくれる例も少なくありません。実は、アニメの影響で〈化ける動物〉として知られているのです。しかし、動物園にいる狸は化けません。
 最近では化ける狸も少なくなりました。昭和三十年代の都市開発で、野生の狸が減ったのが原因と言う説もあります。狸が〈化け狸〉となるには、一定の条件をクリアしなければなりません。その条件とは、年老いた狸が魄を吸収した時、はじめて化けることが出来るようになるとのこと。
 梅田の、とあるビルの上に、狸の祠があります。狸なのに、なぜか〈お稲荷さん〉と呼ばれています。狸の祠も狐の祠も、すべて〈お稲荷さん〉と呼ばれます。狐狸どころか恵比寿さんも同じように呼ばれています。
 お稲荷さんと呼ばれる祠の多くは、本来は道祖神が置かれていたものです。中身が何であろうと〈お稲荷さん〉と呼ばれています。
 近くに狸の祠と狐の祠があったら、互いに牽制し合います。大阪では狸を、京都では狐を祀る傾向が強いです、
 狸の祠には、古くは車輪が飾ってありました。車輪は田の形に抜いた物なので〈田抜き〉と呼ばれていました。これがやがて〈狸〉の字をあてるようになって行きます。元々は〈地車だんじり〉と呼ばれていました。これがやがて祭りの呼び名となりました。
 関西にある地車のほとんどは大阪城を作った時から信仰されるようになりました。大阪城から関西全体に広まり、地車の龍踊りも広まって行きました。狸を信仰しているのに〈龍踊り〉と呼ぶのも妙ですが、これで良いのです。
 大阪城築城の当時、播磨陰陽師たちがたくさん雇われていました。治水のために必要とされたのです。その時、石工たちが笛や太鼓で音楽を奏で、石運びの指示を出しました。たくさんの人々が音楽で一斉に動く姿は圧巻だったそうです。そして、夜は酒を飲んで、石工たちが陰陽師の龍神のいんを真似して踊ったと言います。それが地車踊りのはじまりで、だから〈龍踊り〉と呼ぶのです。これは、播磨陰陽師たちが大阪城の周りに狸の祠を作り、地車と呼んで作業の安全を祈ったのを真似したのでした。

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