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祈りのカタログ・第二十九話「魔魅からろくろ首まで」

 魔魅まみと呼ばれるものは狸や鼬《いたち》やむじなの類のことてす。いずれも妖怪の一種として考えられています。狐は特に美しい女性に化けることが多いのですが、魔魅は物体や時には建物にまで化けると言われています。これらには化けられる範囲がとても広いと言う特徴があります。

 北海道、昔の蝦夷えぞには本州と同じ種類の狐も狸もいません。あの土地で狐狸こりと呼ばれる動物はキタキツネとエゾタヌキだけです。化けたり人に憑依したりする種類の狐と、北海道にしかいないキタキツネやエゾタヌキは別な生き物です。
 しかし、祖母は、
「蝦夷の土地にいる狐や狸と呼ばれる連中はむじなの一種じゃよ」
 と言っていました。
 この狢と言う言葉自体は狸の別名ですが、どうやら祖母の言っていたものは違う化け物のようでした。
 祖母は、
「狢は両手を広げて立つと三メートルくらいの大きさになる」
 とも言っていました。
 また、
鎌鼬かまいたちと言うのも狢の一種じゃよ」
 と言っていました。
 私のブログ『近世百物語』の中にも書いていますが、ある説に、
「鎌鼬と呼ぶのは、構える太刀と言う言葉が訛ったものである」
 と言うものがありました。剣術の刀の使い方に、この〈構え太刀〉があります。刀を体ごと高速で回転させ、真空状態を作って切る技法と言われています。
 鎌鼬は真空状態が出来て切れる現象と言われています。しかし、それが正しいのかどうかは定かではありません。一概に真空状態で切れる現象とだけ説明されていて何となく納得しています。実際はその真空状態で切れることは科学的には証明されていないそうです。

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