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怪しい世界の住人〈河童〉第八話「河童の生態」

❷ 勢子せこのこと

 勢子は河童の一種で、頭を芥子坊主にした三歳くらいの子供の姿のような妖怪です。このことから、若い河童なのかとも思います。
 また、猫のような小さなけものの姿であるとも言われますが、普段は姿が見せないそうです。
 また、島根の隠岐諸島では、勢子は一本足で、一歳ほどの赤ん坊のような姿と言われています。
 古書『観恵交話かんけいこうわ』には、一つ目で体毛がないが、それ以外は人間そっくりと書かれています。
 勢子は悪戯いたずら好きで、人がかまうと必ず悪戯するそうです。
 その時は、
いわしをくれてやるぞ」
 と言えば逃げて行くようです。
 ひいらぎと鰯の頭で悪鬼を祓う風習がありますが、その名残りなのかも知れません。

⑧ 河童の生態

❶ 河童と肝

 熊本の天草には年貢を納める河童の不思議な物語が残っています。
 その物語では、

——天草の下島と上島の間を一隻の船が通っていると、岸にいた男が、
「この樽と手紙を届けて欲しい。中は決して見ないでくれ」
 と言う。
 船頭は承諾して樽を乗せるが、あまりに重いので気になって中を開けて見ると、黒くてドロドロした人のきもが入っていた。
 手紙は河童の王様宛で、
「今年も年貢を納めます。九十九個しかありませんが、残りは船頭の肝を取ってください」
 と。怒った船頭は樽を海に投げ捨てた。

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