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「理解のある彼くん」は発達障害女の救いになるのか?

※今回の記事はいつもにも増して過激です。発達障害の当事者の方、また親しい立場の方は読んでいて不快になる可能性があります。予めご注意ください。


Twitterで定期的に話題に上がる「理解のある彼くん」

何のことかサッパリ分からない人も多いと思うので簡単に説明すると。発達障害(や精神障害)を抱える女性が描いたエッセイ漫画で「昔から社会に馴染めず辛い思いをして、しにたいとばかり思っていました…。でも今は障害に理解がある彼氏(or旦那様)がいて毎日ハッピーです☆」という、よくあるオチである。

発達障害グレーゾーンであり喪女である私としては、このオチを見た当時は大そう怒り狂ったものである。

「なーにが毎日ハッピーです☆だ!?そりゃ愛してくれる人がいて、生活になんの心配もなければ障害なんて何のハンデにもならないだろうよ!結局のところマウントじゃねーか!恵まれてるくせに、二度と泣きごとを言うんじゃねぇぞ!!」

妬みによる怒り大爆発である。ついでに私と同じく発達障害を持つ未婚女性も、かなりの勢いで怒り狂っていた(なんなら凸って燃やしに行っていた)

で。その怒りの大噴火から月日が経過した今。冷静になって考える。

発達障害女で「理解のある彼くん」ができた人は、本当に人生を救われるのか?

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発達障害でも恋人が出来る容姿があるだけ恵まれているだろうという話はさておいて。

彼女が発達障害でも気にしない彼氏。それだけ聞くとまるで菩薩のように心が広く素晴らしい男性に見えるものだが。実際にどんな男性なのか蓋を開けてみると、なかなかどうして闇が深い。

多いのが、彼氏も同じく障害があるパターン。そして無職やフリーター。女遊びが激しかったり、冗談で暴力を振るうなど。外見はさておき、婚活市場ではとてもじゃないが「選ばれない」側の特性を持った男性が多いのである。

しかし中には「容姿も稼ぎも良く、性格も〇」という、SSRスペックの彼氏をゲットした強運な女性も稀に存在する。

「この彼氏と結婚して、障害に苦しめられてきた日々ともおさらば!シンデレラストーリーを歩むのよ!」

と思うところだが、なかなか現実は難しい。

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まず、その彼氏が結婚をしてくれるのかという問題がある。「恋人にはいいけど、結婚は健常者の女性が良いなぁ」と、結婚適齢期にアッサリ捨てられる不安は拭えない。

もし彼が結婚に乗り気だったとしても、彼のご両親が良い顔をするとは限らない。息子が連れてきた女性に障害があると分かって、歓迎してくれる親というのは残念ながら少ないだろう。説得するにせよ、強引に駆け落ちするにせよ、大変な作業だ。

よく発達障害のある男性が「女は障害があっても、家庭に入って家事さえしていればいいんだから人生イージーだよなぁ」とボヤくが。障害の種類によっては、この家事こそが鬼門だったりする。妻があまりに家事ができず、離婚になるケースもある。専業主婦ならご近所付き合いもそつなくこなさなければならない。


最後の難関は「子供」だ。

まだ医学的にハッキリとした数値は出ていないが、発達障害というのはそれなりに高い確率で子供に遺伝すると言われている。多少は世間に「発達障害」の存在が知られ始めているが、その育児は健常者よりもとにかく手がかかる。子供の障害の重さによっては、大人がつきっきりで見ていないといけない。

そして。障害のある子どもが産まれた途端、逃げ出す父親も残念ながらいるのである。ネットの海を覗けば、夫に見捨てられて一人で障害のある子どもを育てる女性の怨嗟の声を、あちこちで目にすることが出来る。

もし離婚してシングルマザーになった場合。「自分は発達障害で大したキャリアもなく、職歴も空白。子どもも障害持ち」という、独身時代よりも過酷な人生が待っている。自分が障害を抱えた状態で子供を持つというのは、「何があってもこの子を育てる」という強い覚悟と、それが成せる土台が必要なのだ。

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別に私は「発達障害を持つ女は幸せになれない」とか、「まともな結婚は出来ない」と言うつもりはない。

しかし、「自分の障害を否定しない恋人と出会えれば、私もまともな人生を歩めるのね!!」と舞い上がってしまうのは危険だ。

今までの人生を思い返して欲しい。自分の理想通りに物事が全て進んだことなどあっただろうか?そんな人はまず居ないだろう。例えこれまでが順調だったとしても、それがこの先何十年も続く保証などない。

私たちは大きな足枷をつけている。だから他の人の何倍も、慎重にならなくてはいけない。目の前に浮かぶ立派な船は、泥船かもしれないのだから。

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