麻雀界のファンによる迷惑行為はこれが原因! 「出待ち」の発生原因は?
これは、僕が大学でやっている研究、かつ教授に【概要書いてよ】と言われ、その途中の未完成のやつをそのままコピペしただけのものです。色々適当な部分があってもお目こぼし願います(笑)
今後改訂・補足・論文の形態にしてちゃんとしたものにする予定なので、事実と違うものがあればご指摘いただけますと幸いです。
2024年1月27日、Mリーグのチーム「KONAMI麻雀格闘俱楽部」に所属する伊達朱里紗プロ(日本プロ麻雀連盟)が「出待ち」についてポストしたことがX上で大きな反響を呼んだ。内容(全文ママ)は以下の通りである。
これに対し、「BEAST Japanext」に所属する菅原千瑛プロ(日本プロ麻雀連盟)は以下のように反応した。
「セガサミーフェニックス」所属の魚谷侑未プロ(日本プロ麻雀連盟)は以下のように論じた。
日本プロ麻雀連盟理事(メディア対策部長、法務部長代行)の黒木真生はこの問題を取り上げ、竹書房近代麻雀編集部が運営するnote(有料記事)において、他のトラブルについて紹介した。
出待ち問題を始めとする麻雀プロへの迷惑行為がいつから始まったのかは定かではない。しかし、今から17年以上前の2007年以前には既にそれに準ずる行為があったと分かる。
近代麻雀黒木(2022)には、以下のような記載がある。
どうやら、当時は悪質なものではなかったようである。
しかし、魚谷侑未プロが2020年1月3日に麻雀愛好家に返信(リプライ)する形で出待ち問題に言及した「駅出待ち一番怖いからアウトー」というリプライは、既に悪質な出待ちが存在したことを示している。しかし、麻雀界という社会での社会問題となるほど迷惑行為の問題が取り上げられることはなかった。
筆者の知る限り、社会問題として初めて大々的にクレイム申し立てをしたのは、2022年4月20日のMリーグ/プロ麻雀リーグのX公式アカウントがした以下のポストである。「Mリーグより皆様へのお願いとなります」とポストし、以下の文面が書かれた画像が貼られている。
これを引用して黒木(2022)が「麻雀の世界も『出待ち』や『入り待ち』をされるようになったのかと感心する声もあったが、実はけっこう前から『出待ち』問題はあった。」と書いているのを見ると、問題としては存在していたが、クレイム申し立てとしてはMリーグ機構の上記ポストが初めてだったと推測できる。
では、このような迷惑行為は何故発生したのであろうか。それについては、一足先に社会問題化している「アスリート盗撮」の例が参考になる。
「アスリート盗撮」について、どのような行為かは一般に広く知られているが、明確な定義はない。そこで、今回は「アスリート盗撮」の定義として、共同通信運動部編『アスリート盗撮』の定義を参照するものとする。その定義は以下のとおりである。
このアスリート盗撮がいつから始まり、どのような展開となっていったかは、浦中(2024)に詳しい。尚、筆者はアスリート盗撮問題の専門家ではなく、評価・真偽の判定が難しいため、当該論文の主張が正当であるかは他の専門家の評価を待ちたい。
浦中によれば、アスリート盗撮の起源は分からなかったようだ。しかし、1980年代にシンクロナイズドスイミング競技で活躍した小谷実可子選手の現役時代には、既に存在したようである。新聞社のアスリート盗撮に関する記事はほぼ1990年代後半からに集中しており、さらに日本水泳連盟が1998年にカメラ類の持ち込みなどを許可制にするなど、対策を講じていたことからすると、この1990年代後半説が有力になるという。さらに、盗撮や雑誌への投稿は80年代中盤からなされていたようである。
写真週刊誌では「男性のまなざし」(同性愛嫌悪と女性嫌いを内包した異性愛である男性の連帯であるホモソーシャリティ的な環境に影響され、女性への尊敬を欠いた無意識の認知の歪み(アンコンシャス・バイアス)により女性を撮影したり、男性が考える理想の女性像でドラマの脚本を書いたり、スポーツ競技を行う女性アスリートを性的対象として捉えてしまったりすること)のフィルターを通した女性アスリートの写真が紙面を飾り、その他取材対象者に対するプライバシー侵害、ゴシップ性、センセーショナリズム、取材方法、報道モラルに疑問が呈されていたそうだ。
写真投稿系雑誌も80年代に相次いで創刊された。80年代に入り、空前のアイドルブームが起こり、アイドルの街頭コンサート、サイン会における、アイドルの姿、特にスカートを履いたアイドルが座ったり、屈んだりした時の、いわゆる「パンチラ」写真、今でいう「ハプニング」、「お宝画像」を読者から投稿してもらい掲載していたといい、無名の女子中学生、高校生、大学生アスリート、新体操選手、カーニバルダンサーが今でいうアスリート盗撮のターゲットになっていたようだ。その後、これらの雑誌が廃刊となると、2000年代からはインターネットが急速に普及し始め、アスリート盗撮専門のサイト、動画共有サイトにこれらの画像が流れ、アスリート盗撮の画像がネット上で直接売買されるようになったという。
このような歴史の中で、浦中はアスリート盗撮の背景に関連すると思われる要素を抽出している。4つ挙げられているが、ここでは麻雀の迷惑行為問題と関わりがあると考えられるものだけに触れる。
浦中は、このような状況にも関わらず、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、JOC(日本オリンピック委員会)が対応するまで被害者保護・支援、法制度の整備が進まなかったことがアスリート盗撮を助長したと主張する。
その真偽は置いておくとして、前述したスポーツ界と同じような歴史を数十年遅れて麻雀界も歩んでいることは注目に値する。
麻雀が普及するまでの歴史は、齊藤(2023)に詳しい。
日本における麻雀は、大正10(1921)年頃、関西において始まり、1924年ころから関東に姿を見せ流行りだした(第一期麻雀全盛時代)。戦後大衆の間で再び流行し、「第二期麻雀全盛時代」が生じた。阿佐田哲也(色川武大)『麻雀放浪記』や、五味康祐『暗い金曜日の麻雀』などの麻雀小説が流行を支え、竹書房による月刊誌『近代麻雀』が創刊されるまでに至ったという。
しかし、裏を返せば「そこまで」であった。あくまで「観る」より「する」が主体で、麻雀界は藤田晋が登場するまで、大きく発展することはなかった。だがそれも、2014年に藤田が竹書房主催の「麻雀最強戦」に優勝すると、風向きが変わる。藤田はその2年後の2016年、「藤田晋invitational RTDマンスリーリーグ」、通称RTDリーグをスタートさせる。全対局はAbemaTV(現ABEMA)で放送され、麻雀を「観る」という文化を拡大させた。麻雀を観る文化はMONDO TVなどで存在はしていたものの、RTDリーグは現在Mリーグチーム「渋谷ABEMAS」所属の多井隆晴をして「(RTDリーグからの降級は)麻雀プロとしての死を意味する」と言わしめたほどの画期であり、それほどのステータス・注目度となっていた。
そして、2018年7月、麻雀のプロスポーツ化を目的とし、Mリーグが発足した。一般社団法人Mリーグ機構が運営し、初代チェアマンに藤田晋が、最高顧問にJリーグ初代チェアマンの川淵三郎が就任。開幕日に「大和証券グループ本社」とスポンサー契約を締結したことを発表し、名称を「大和証券Mリーグ」とし、2019年2月にはファイナルシリーズの冠スポンサーとして「朝日新聞社」とスポンサー契約を結んだことを発表した。トップスポンサーには「株式会社データX」「日清食品株式会社」「Y.U-mobile株式会社」が名を連ね、2024年現在その他6社、ホストチーム等合わせて21社がスポンサー契約を締結している。チームごとに「○○(チーム名)オフィシャルサポーター」という名称の個人スポンサーも募集され、グッズの販売等も行われるようになった。
ここから、「する」競技だった麻雀がRTDリーグを経て「観る」競技として成長し、Mリーグとして「大規模な商業化」を果たしたという過程が見て取れる。RTDリーグ設立からMリーグ設立までが約2年間だったことを考えると、前述したスポーツ界と比べ、異常な成長速度で「商業化を成し遂げた」ことが分かる。さらに、Mリーグをきっかけに「選手の商品化、商業化」も起こった。RTDリーグもMリーグも1日2戦放送されるが、RTDリーグの時は対局と対局の間にCMが流れていなかった。しかし、Mリーグは対局と対局の間にCMが流れ、そこに選手が出演しているのである。さらに、RTDリーグは男性はスーツ、女性は自身の衣装を着て対局を行うが、Mリーグは選手がスポンサー名の入ったチームユニフォームを着て対局を行っている。ここから「選手の身体の商品化」が進んだと見ることができる。
さらに、Mリーガーを一種の「アイドル」のように扱う現象も、ファンの間で見られる。YouTubeのコメントやXのポストなどでは、女性ファンが男性選手を、男性が女性選手を「かわいい」と麻雀技術よりも性的に捉えるコメントが多くみられる。男性のみが女性のみをアイドル化し性的消費するスポーツ界、男女関係なくアイドル化し性的消費をする麻雀界という違いはあれど、どちらも男性が女性を性的消費するという現象は同じである。
ここまで、スポーツ界と麻雀界は「競技の急速な商業化→選手の商品化、商業化→選手のアイドル化」という同じ過程を辿っていることを明らかにした。そして「出待ち」などの迷惑行為は、選手が商品でありアイドルである以上、このような過程の中で自然発生するものであり、商業として発展する上で避けては通れない道であると推測される。まだ浦中がスポーツ界に指摘する「性的消費がサブカルチャーとなっている」といえるほど目立ってはいないものの、このまま何の規制も生まれなければ、スポーツ界のアスリート盗撮と似たような状況まで深刻化する可能性が高いといえる。
次に、迷惑行為という大きなくくりから離れて「出待ち」という行為に絞り、なぜそのような迷惑行為を行うのかを考えてみる。
2021年から過去20年間のレジャー白書によると、麻雀の5年毎の女性プレイ人口比率は表1の通りである。
一方、2021年から過去6年間の麻雀のプレイ人口は表2の通りである。
ここでは、2018年のMリーグ発足をきっかけに急増し、その後緩やかに衰退、2021年に少し盛り返し、女性人口は大幅に減少したと読み取ることができる。
しかし、筆者の体感や麻雀界全体としての印象としては、確実に麻雀の競技人口は増加し、女性人口も増加しているという確信がある。少なくとも減少しているというこのデータは現在麻雀界にいる我々の実感から大きくかけ離れていることに違いはない。
この実感との乖離は、携帯やPCでプレイできる麻雀アプリ「雀魂」のダウンロード数の推移を見れば説明がつく(図1)。
図1からは、麻雀アプリで家などにいながら麻雀を楽しむ人が急増したことが見て取れる。雀魂にはアプリ内課金で回せるガチャがあるが、アプリを新しくダウンロードしてもガチャを回せるわけではない。すなわち、ガチャを回すための「リセマラ」がない。よって、1人で2つ以上アカウントを作る「サブアカ」を作る行為は一部見られるものの、「ダウンロード数」と「麻雀を新しく始めた人数」の間にはほぼ誤差の範囲で高い相関が見られると考えられる。
表1、表2に見られるレジャー白書の「麻雀人口」は、麻雀卓を3人ないし4人で実際に囲んで麻雀をするという「リアル麻雀」しか含まれていない。「麻雀アプリ」でしか麻雀をしない人は人数に数えないが、麻雀アプリだけでしか麻雀をしない人であっても、「麻雀をプレイする人」と考えるのが通常であろう。また、自身では麻雀をせず、プロの対局だけを観戦するという「観る雀」の人口も含まれていない。RTDリーグを経て麻雀は「する」から「観る」へと変わっていったと前述した。そのため、レジャー白書の麻雀参加人口はそのまま麻雀人口とは言えないのである。
Mリーグ機構の調査によると、2019年の麻雀人口は表3のようになっている。以上から、リアル麻雀はほぼ横ばいだが、ゲーム麻雀の人口によるプレイヤーの増加と「観る雀」の増加による市場規模拡大という現象が起きていると結論づけられる。
このように昨今の麻雀界の情勢を整理したところで、再び表1に戻ろう。2016年から2021年にかけて、女性の参加比率は5.1ポイント減少している。麻雀は趣味であるから、今まで継続的に楽しんでいたものをある日突然集団でやめるということは考えにくい。Mリーグで女性麻雀ファンを多く見るようになったという筆者の実感を踏まえても、女性がごっそり麻雀をやめたということはない。するとこれは、2つのケースが考えられる。1つ目は、女性の麻雀人口の増加とは比較にならない速度で男性の麻雀人口が増加したケース。2つ目は、女性がリアル麻雀からネット麻雀に移行したケースである。
そこで、レジャー白書による男性のリアル麻雀参加人口を見てみよう(表4)。急激な男性人口増加は見られない。すなわち、リアル麻雀の女性人口が減り、ネット麻雀に移行したと考えられる。
これは「麻雀店(雀荘)に女性が参加しにくい」という現象で説明がつく。Xでは、男性が麻雀店の女子トイレを勝手に使用したり、麻雀店で知り合った女性にストーカー等の迷惑行為があったりすることに対する注意喚起が頻繁に見られる。これは裏を返せば、そのような事例が多く起こっていることを意味する。
ところで、斉藤(2017)は、痴漢に対して社会全体にある認知の歪みを指摘する。
このような社会全体としての認知の歪みを「痴漢神話」というが、痴漢神話と同様の「麻雀店にいくと危ない目に遭うぞ!」は「麻雀店神話」とはいえない。これは認知の歪みではなく、紛れもない真実であるからだ。そして「自己責任を求める風潮」の下、「麻雀店に行って男性にこんなことをされたらこうしようね」という注意喚起が盛んに女性側に促され、麻雀界の女性は「麻雀店って怖そう」という印象を抱くに至る。これが、麻雀店に女性が新規参入しにくい空気を生みだし、その空気感が既存プレイヤー女性の離脱を後押ししたと考えられる。ただ麻雀を打つだけなら、ネット麻雀で事足りるからである。同じリターンでリスクを避けられるなら、そうするのが正しい。
麻雀店ベルバードを運営する鳥越しんじ(日本プロ麻雀連盟)は2024年1月26日に、普段の店舗の状況を告知するポストをした。そこには「ベルバード新橋店にいる女性プレイヤーは2~3割と平均的に多め」「ベルバード名古屋栄店は女性が全体の1~2割くらい」「ベルバードオフ会は女性プレイヤーが時に5割を超える」と記されている。ベルバードオフ会とは、プロや特定のスタッフ等に会いに行き、一緒に麻雀を打つという「イベント」であり、イメージとしては、アイドルのサイン会・握手会のようなものである。イベントになると5割近く女性プレイヤーが来店するにも関わらず、それ以外の「知らない人と麻雀を打つ」通常営業時は「1~3割(3割でも多め)」というのは、まさに女性が通常営業の麻雀店に入りにくい空気感があることを裏付けている。
これは筆者の主観にはなるが、ベルバードグループは初心者の女性が最も新規参入しやすい麻雀店の1つである。そのベルバードグループですらそうなのであるから、他の麻雀店、さらに賭けマージャンを行う「オンレート雀荘」になると、その参入のしづらさは「推して知るべし」である。筆者は賭けマージャンをしたことはないが、オンレート雀荘では、女性客が1人もいないことなど珍しくはないという。
このようなホモソーシャリティ的な環境では、男性優位のアンコンシャス・バイアスが生まれる。浦中(2024)の記述を筆者が整理したものを再度引用しよう。
すなわち、迷惑行為という大きなくくりの発生原因であった「歴史的な商業化の流れ」を間接的な原因とするならば、「出待ち」行為が起こる直接の原因は「男性のまなざし」による認知の歪みが原因である。
考えられる認知の歪みとしては、「ファンサービス神話」がある。
多くの麻雀プロは、ファンサービスをする。ファンがバスや電車等で偶然隣に乗った人がプロだとわかると「○○さんですか? 応援しています」と声をかけられるのは、有名麻雀プロの間では日常と化している。それに対して無視をすることは、通常あり得ない。「出待ち」には毅然と対応しても、そうとわからない状況でサインを求められたら、書いてあげる麻雀プロがほとんどであろう。サインは絶対に断っているという麻雀プロの話は今のところ聞いたことがない(今後規制によってイベント等を除いてサインは禁止という流れになっていくかもしれないが)。
そこで「ボクは○○プロのファンなのだから、自分が話しかけたら無視はできないはずだ」という認知の歪みを持ったとしても不思議ではない。そして、それが「無視されない」という安心感につながり、有名人に話しかけやすい心理的状況が作られる。さらに、有名人に応対してもらうことで、自分がそこに存在しているという実感である「自己存在感」が得られる。
この自己存在感は、「自己肯定感」「共感的人間関係の醸成」と並んで教育現場で「生徒指導の3要件」として最も重要視されているほど本人にポジティブな影響を与える大きな要素である。仮に拒否されたとしても、「有名人に無視されず丁寧に断られる」経験は、自己存在感を満たす。
すなわち、「出待ち」という迷惑行為は本人にとって、「自己存在感の欠如」という欲求不満を解消するための自慰行為なのである。
【参考文献・資料】
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魚谷侑未,2020年1月3日午後2:18,(https://x.com/yuumi1102/status/1212966554981130240?s=20,2024年2月21日取得)
‐麻雀“真”情報サイト「マーチャン」-,2018,「多井隆晴が『藤田晋ロス』に悲痛の叫び!? 初代王者が大苦戦を強いられた『ラスなし記録の罠』とは【RTDリーグ2018インタビュー】」(https://g-journal.jp/2018/05/post_6765.html,2024年2月21日取得)
斉藤章佳,2017,『男が痴漢になる理由』,株式会社イースト・プレス