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妄想ストーリー「停留台風10号リンガー」

某地方気象庁支局のベテラン気象予報士・佐藤美咲が謎めいた台風のリンガーと闘う。本物の台風10号にインスパイアされた妄想ストーリーです。


停滞する脅威

名古屋気象台の深夜勤務室。佐藤美咲はモニターに映る台風10号の異常な動きに眉をひそめていた。
モニターに映る衛星画像を凝視して
「これは...普通じゃない。こんな動きは見たことがない...」
台風10号は、まるで生き物のように日本列島の上空でゆっくりと蠢いていた。その動きは、これまでの台風の常識を覆すものだった。
「美咲さん、こんな時間まで」
同僚の山田が声をかけてきた。
「山田さん、この台風、おかしいんです。まるで...意思を持っているかのようで」
美咲は焦りを隠せない様子で説明を始めた。
「動きが遅すぎる。それに、全国各地で線状降水帯が発生している。こんなの初めてです」
と言ったかどうかという時、突然警報音が鳴り響いた。
「また新たな線状降水帯か...今度はどこだ?」
山田は眉をひそめた。台風は日本列島上空でほとんど停滞し、全国各地に線状降水帯を発生させていた。
「信じられない...全国47都道府県、同時に線状降水帯が発生している!」

線状降水帯が47都道府県で発生

「確かに異常だな。でも、自然現象としては説明がつくんじゃないか?」
美咲は首を横に振った。
「いいえ、これは...人為的なものかもしれません」
「何だって?」
山田は驚いて声を上げた。その時、支局長の緊急連絡が入った。
「佐藤、山田、すぐに会議室に来てくれ。重大な情報が入った」
二人が会議室に駆け込むと、そこには緊張した面持ちの支局長が待っていた。
「諸君、極秘情報だ。この台風、人工的に操作されている可能性がある」
会議室に集まった職員たちの空気が凍りついた。
「この台風、人工的に操作されている可能性が高い。犯人はB国気象院の若手研究者という情報も入っている」
「実は1週間前、気象制御の実験をしていた研究所から、重要な装置が盗まれた。その装置が、この台風を操っているらしい」
美咲は息を呑んだ。一同がざわめく中、美咲は疑問を口にした。
「なぜB国が...?」
支局長は深刻な表情で続けた。
「容疑者の目的はまだ不明だ。だが、このまま台風が日本上空に停まれば、未曾有の災害になりかねない」
支局長は二人を見つめて言った。
「君たちには、この台風の異常性を分析し、操作の痕跡を見つけ出してもらう。それが、この危機を止める唯一の手がかりになるかもしれない」

(続く)

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