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BtoB営業におけるOLD営業を弁護する


「OLD営業」という言葉はご存知だろうか?

下の動画をちょっと見れば、「あーあ、そう言えばタクシーの中で見たなあ」と言う人も結構いるのではないだろうか。

そう。「OLD営業」とはベルフェイスが、タクシーやTVで、照英さんが出てるCMの中で出てくる、あのフレーズである。「営業は足で稼ぐ」という言葉とともに、先輩営業マン3人が「ヒラメ筋」を露わにする・・・というあれである。

今回は「OLD営業」、あるいは「昭和の営業」と言われ、最近ちょっと揶揄されている「足で稼ぐ営業」の、弁護(笑)に回ろうと思う。

だって、昔も今も、「営業マンは自分のノウハウ」を説明するのがあまり上手でないから。そして、それを公開したがらないから。
実は「足で稼ぐ営業にもこんなに良い点があるよ」と言うのを知っていただくというのが、今回の話だ。

ちなみに、ベルフェイスは、今でこそ「オンライン商談システム国内実績NO.1」を標榜し、押しも押されぬトップカンパニーなのだが、ずいぶん前に、ここの営業マンから、「デモを早速オンラインで」と勧められ、当時システム管理だった私はそれに応じたことがある。しかしデモの途中、「固定電話を使用するのでネットのように固まらない」という自慢のセールスポイントとは裏腹に、見事にパソコンの(互いの顔が映る)画面が固まってしまい、結局、電話だけで商談をしたという思い出がある。
これは、このサービスがまだ出たての頃の話であり、今はそういうこともないだろう。また、その営業マンが良い人だったのと、「オンライン商談」のマニュアルや勉強会、トークスクリプト作りというソリューションも一緒に提供できると提案してくださり、「こんな時代になったのか」と社内がOLD営業だらけだった当時、ひじょうに驚いたのを、今でも鮮明に覚えている。

貼り紙や掲示物から重点課題を知る

自分の足を使って、お客様の会社に出かけて行くと、会社の廊下や部屋、玄関など様々なところに、貼り紙や掲示物が貼られていることがある。

「相手の会社の情報はホームページで調べる」ような時代ではあるが、如何せんホームページやネットに公開されている情報は、更新されていない古い情報だったり、あるいはしゃっちょこばっていて、参考にならない。

また、それらの媒体から数字やデータが分かっても、数字やデータはやはり数字やデータでしかないから、自分の会社の商品・製品を買えば解決すような困り事や課題については、そこから想像するしかない。面倒だ。

その点、お客様のオフィスはリアルタイムの情報の宝庫だ。立ち入り禁止場所に入るとか、閲覧不可のものを開くとか、そういう行為は除き、(お客様がうっかりなのか、わざとなのか分からないが)公開?している、こちらの目に入ってくる情報は、ひじょうに貴重だ。

ホワイトボードに書かれていること、共有デスクに投げられている業界誌、社用PCの銘柄・・・等、これらすべての後ろに購買や行動の理由があり、その理由の近辺に、困り事や重要課題があるからである。

下のような「グリーンバック」なるものまで、Web商談で相手に駆使されたら、ちょっとした画面背後のオフィス風景まで見えなくなり、当然このような情報はクローズドされてしまうので、「足」で顧客のオフィスに出かけて行くことは、とても貴重な機会なのである。

この人は決定権は持っているか?影響力のある人か?

応接室に通されると、まず、お茶が出てくる。お茶を出す人と面談者が違うことが多いが、そのようなとき、この二人が会話を交わす時がある。その会話の内容はともかく、お茶を出した人の面談者への対応で、二人の関係が見えることがある。

また1対nでの面談だと、時折、nの中で会話が始まる事がある。これも内容はともかく(と言うか、隠語を使ったり会話の音量を下げたりされて、よくわからないことが多いのだが)、そのnの中での上下関係や力関係が態度や言葉遣いから、見えることもある。

営業マンとして、「情報収集担当者」(もちろんこの人をぞんざいに扱う必要はまったくない)とずっと付き合っていても、相手の本当の課題や困り事は分からない。分からなければ提案のしようもない。

Webの商談や面談では、この辺の「人間関係」や「上下関係」が見えづらい。今や、BtoCもBtoBも、1回の購買の決定に関与する人は増え、その人間間の影響力の関係も複雑だ。しゃっちょこばった、画面の向こうの商談相手、もしくはn人からは、こういった情報は引出しずらい。

その場所に出かけて分かること

自分の「足」を使って、「相手の会社のビル(建物)を見に行く」。
「相手の会社を見に行く」というと、「イマイ」という名前を思い出してしまう。架空請求業者の言う「住所」に本当にオフィスがあるか?を見に行くというあれだ。

架空請求業者とビジネスをする人はまずいないから、見に行く理由は、「そこにオフィスがちゃんとあるか?」ではもちろんない。

1つは立地だ。どんな場所なのかは、一度行ったことがあるところなら、住所から想像はつくが、やはり実際に行ってみると、「どうしてそこなのか?」の理由(勝手な解釈も含む)が見つかり、相手の会社の考え方や課題を理解するきかっけになることが多い。

例えば、ある会社は、都内の大学や病院だらけの街中に会社を構えていたが、医療関係のビジネスも、学校関係のビジネスもしていなかった(周りはそんな会社ばかりだった)。

不思議に思っていたが、その会社から帰り道、徒歩7分くらいのところにある駅に着いてふと思ったのが、「小さな駅の割には乗り入れている鉄道の数が多いな」ということだった。しかもそれぞれの鉄道で1駅乗れば、すぐターミナル駅やハブ駅に行けるので、さらに使える鉄道は、2、3倍に増える。

さらに、これは机上や鉄道案内図では分からないことが多いが、この駅からちょっと歩いたところに、さらに別の鉄道が2本走っているのだ。

また、それぞれの鉄道(約1駅先の乗り換え先の鉄道も含めて)の行く先(終点)は、東京全域及び関東の主な都市になっている。要は、小さな目立たない駅だが、東京や関東のどこに行くのにも便利な駅なのだ。

後で、「なぜここへ?」とこの顧客に聞いたとき、上記の理由が相手の口から聞けたのと同時に、「商談後、一旦会社に寄って、準備をしてまた別の顧客に商談に行くことも可能だから」という理由も聞けた。

この会社は、大きくはないが、「営業マン」を使った人的販売で商売が成り立っており、その営業マンの意向をとても大切にしているから、オフィスを構える場所も、営業マンが仕事し易い場所ありきなのだろう。

そして、「営業マンありき」であるので、「属人化」「定着率」などの、「人的販売部隊特有の課題」が山積していた。「なぜこの場所にオフィスをかまえる?」という理由の奥に、その会社のビジネスモデルらしきものや、それがゆえの課題や悩みがあるのである。

Webは場所の隔たりや距離を乗り越えるが、場所そのものが語りかけてくる情報は「足」で稼がないと入ってこないのである。

ビルが語る事を理解する

これは、ある人のから受け売りなのだが、

「会社移転の理由は業容拡大以外であってはならない」

ことを、みなさんはご存知だろうか?私は最初、知らなかった。しかも何を言っているのかわからなかった。今は何となく分かる。

要は、「会社移転」とは、「手狭」「気分転換」「創立記念」・・・移転の理由は様々でも、「現在より快適で、広々としたオフィスに移転すること」であることは間違いない。

すると、当然家賃や税金が新たにかかる(上がる)。もちろん引っ越し費用もかかる。

色々かかるその中でも、家賃や税金は売上に関係なく固定的にかかるから、その分絶対に売上を今以上に上げないといけなくなる。だから業容拡大の見込みもないのに、「気分転換」や「手狭だ」などという理由で引っ越しするのは、経営が分かっていない奴のすることだ・・・というわけである。

だから、まともな経営をしている会社なら、「移転」の奥に「業容拡大」があると見て間違いないのだ。

各社のホームページの「History」には、会社の引っ越しの履歴が書かれているし、不動産会社のサイトには「ビルの写真」も載っている。また、決算書や公開資料を見れば、不動産購入や賃借量などの情報を得ることもできる。

しかし、実際に「足」を運んで、「移転前」と「移転後」のオフィスを目で見て、また周囲を歩いてその状況を見た方が、業容拡大の規模をよりリアルに感じることが出来る。

しかも、業容拡大以外の理由による移転である場合も、「足」を使って現オフィスに行き、「ずっとこちらでですか?」と尋ねれば、「移転したのか否か」「なぜ移転したのか?」も質問できる。Web商談では、相手とオフィスを見渡しながら、「(ずっと)こちらで?」とは言えない。相手と実際に、そのオフィスにいるからこそ、「商売の勢い」を探ることができるのである。

BtoBにおけるOLD営業を弁護する

確かに「OLD営業」、すなわち「足で稼ぐ営業」には弱点もある。
1日の商談数に限りがあったり、遠方の顧客の場合は「異動時間」がかかったり・・・。そして、オンライン営業はそれらのほとんどをカバーできる技術だ。

ただ、購買時に、「自社の抱える課題解決にマッチするか否か」を、顧客が一番重視する時代、顧客自身ですらはっきりしないその課題を明らかにし、その課題を、まず営業と顧客が合意できなければ、取引の入り口には立てない。

それには、やはり、いきなり、課題を合意する前に、色々な面から課題を検討すべきだ。それには、顧客がこちらに言わない、言いたがらない、気づいてない課題も知るべきで、オンラインだけでは、全課題の約1/3くらいしか分からないと思う。

OLD営業の最大の長所は、まさにこの「言わない」「言いたがらない」「気がつかない」などの「オンラインでは見えない顧客の課題」に迫ることができることだと思う。

以前、「『自分を知る』というフレーズに勇気をもらった」で紹介した私の仲間が、

マーケティングにも,いわばOLDとNEWがあり、どっちが良い悪いでもないのに、「若手とベテランがそれぞれのマーケティングの<ver.>を盾にとって争っている営業部隊が多い」と言っていた。

今、この異常な?状況下で、営業を見直すなら、「仕組み」だけでなく、この「営業部隊のOLD(ベテラン)とNEW(若手)の対立構造」であり、それを解決するにはどうするか?について、再度話をしたいそうだ。

2020年6月15日の11:00~と16:00~、「オンライン」でやるそう。前回は61名の参加があったみたいだ。お時間ある方は、小1時間、一緒に「営業やマーケティングOLDとNEWの両立(笑)」について、考えてみるのも良いのではないだろうか?