みんなの部屋_改_画像

(稽古場日誌2)情報の交通整理

しゃにかま企画『みんなの部屋・改』全8ステージ無事終演しました。

シチュエーションコメディとして作品を立ち上げるのに、覚悟はしていたもののここまで大変かと思い知らされた公演でした。

シチュエーションコメディに関しては前回のnoteを書いたので、作品として立ち上げるために取った方法を備忘録的に何点か残しておきます。

今回は作品で一番の土台になるであろう情報の交通整理について


〇情報の交通整理
シチュエーションコメディの前提として、登場人物がどのような動機と目的を持っていて、それを邪魔するのは何か、がきちんと客席に共有されることが必要になります。ここの情報が伝わってないと登場人物の悪戦苦闘の軌跡が追えずに置いてきぼりになってしまう。

『みんなの部屋・改』は上演時間が60分弱という短めの尺に7人もの登場人物が入れ替わり立ち代わり出てくる。

最初はかなり丁寧に彼らの感情の機微を掬い取っていたものの、あまりにも情報が複雑になりすぎて理解が追い付かない、観ていても何が起こっているのかわからなくなった。
微妙な感情の流れみたいなものはいったん後回しにして、登場人物が一番大事にしている価値観は何かを洗い出すと登場人物のうちの一人を除き、全員が登場人物の誰かに好意を持っている図式が現れた。

いったん各登場人物が最も大事にしている価値観が見えると、その価値観の矢印がだれにどのくらいの強さと鋭さで向いているのかを考えるとだいぶシンプルになり、情報の交通整理が効くようになってきた。

おっきな方向性が見えたらその上に感情の機微を載せることでかなりわかりやすくなって話が追いやすくなった。話が追えるように作るって、当たり前のようだけどこれをちゃんとやるのって意外と大変なのです。

情報の交通整理に寄与したもののひとつに客席の作り方もあった。


『みんなの部屋・改』は初演も再演もおそらくこれから上演されるときも基本は囲み舞台(舞台を客席が囲んで作られる舞台)で作られることが多いと思う。今回も最初は囲み舞台で作品作りを進めていたけどいろんな制約があったため対面舞台を試しにやってみると、囲みでいろんな方向から見ていた時よりもずっと話の理解がしやすかった。これは囲み舞台だと観る場所から構図がかなり変わってしまい、登場人物の関係図を画として全員共通で作るのがしんどくなることが原因と思われる。


対面舞台だと、多少舞台と客席に距離が出る部分を許容すれば画は物凄く作りやすい。画が作れれば登場人物同士の関係も見せやすくなる。

実を言うと自分が『みんなの部屋・改』再演を見たときも中盤に理解が追い付かなくなる瞬間が何度かあった。今回のしゃにかま企画の『みんなの部屋・改』は終演後のお客さんの話を聞く限り結構な割合のお客さんを置いていかずに最後まで連れていけたのではないかと思っている。

演者の瞬発力だけで笑わすわけではない、シチュエーションの上に立つからこそ生まれる面白さを目指していたので、最初から最後まで情報をいかに整理して伝えるかここは一番神経を使った。

ただ、情報が整理して伝わったからと言ってそれがすぐに「面白い」につながるかというとまったくそんなことはなくて、情報の整理ができてやっとスタート地点。ここにその座組じゃないとできない面白さを乗っけていけるかは別のお話。

次回はそのあたりのことを書きたいと思っています。

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