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キンモクセイを上書きしたい

ご近所じゅうから
キンモクセイの香りが
どこからともなく立ちこめる
日曜の夕暮れ。

野生の小学生軍団と
パパ軍団(子どもと遊んでくれるパパ勢)が
日没ギリギリまで鬼ごっこをして遊んでいる。

パパさん世代は
キンモクセイの香りがすると
どうしても「トイレのにおいだ!」と
はしゃいでコメントしてしまうのだが

令和を生きる小学生軍団は
キョトンとして

「それうちのパパも言ってた」
「うちも」
と口々に不思議がる。

私も昭和生まれなので
残念ながら

キンモクセイの香り=トイレ
の呪縛から長年抜け出せずにいたのだが

ここ数年、
トイレの芳香剤でキンモクセイに
遭遇しなかったこともあり

お散歩の途中でキンモクセイの香りが
してきても

「トイレ」と思わなくなり

こうなるといよいよ

山田詠美の放課後の音符(キイノート)で
綴られていた
キンモクセイにまつわる文章の甘酸っぱさに
集中できるようになった。

金木犀の匂いがする
甘くて歯が痛くなりそう
秋には恋に落ちないって決めていたけど
もう先に歯が痛い
金もくせいを食べたの
金もくせいも食べたの
だから
歯の痛みにはキス

山田詠美 放課後の音符

わぁぁぁ…甘い。
胸が苦しい。
苦しいけど欲しい甘さ。

気がつくと
パパさんたちに感化された小学生軍団が
「トイレ」「トイレ」と
連呼している。

君ら、キンモクセイなトイレなんて
知らんだろ!(笑)

時代を越えて追いかけてくる
キンモクセイ=トイレの図式。

キンモクセイを
甘く上書きするには
まだまだ時が必要かもしれない。





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