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「完全矯正値だけが正解と思う危険性」

今回のテーマは大きく分けると3つです

・眼鏡の慣れ
・KBの状態を確認する
・慣れやすい度数の目安

眼鏡の測定をするときに、完全矯正値をベースにするのか、眼鏡の慣れをベースにするのか?

こんな疑問をみなさんはもったことはないですか?

基本的に初めのうちは完全矯正値をベースにするよう教えられることが一般的のようですが、

この眼鏡測定マスター塾では、完全矯正値と眼鏡の慣れをミックスした理論でお伝えしています。

そもそも
眼鏡の慣れとは何か?

人の体には「慣れ」と言われる能力があり、
その変化は若いほど早く慣れやすく、年を重ねるごとに遅くなります

年配の方が時代の変化についていけず
思考が固まっている人が多いのはそのためですね。

こと眼鏡に関しても同じで、同じ度数に長い期間慣れるほど、

新しい度数の変化に慣れる速さは年代によって変わります

イメージは次の通りで、

「若い人ほど変化に慣れるのが早くがまん強い」
「年配になるほど変化に慣れるのが遅くがまんできない」

これを前提とした度数の処方がお客さんにとって精度の高い処方
なることが多いです。

たまに「この処方は間違いないから信じて慣らしなさい」
高齢者に強制する方もいるようですが、はたしてそれはその人にとって最善の度数なのでしょうか?

なぜなら人それぞれ「がまんできるレベルは違う」からです。

目的のために多少の痛みをがまんできる人もいれば
少しの変化にもがまんできない人がいます。

「正しい処方=希望された見え方に近づける」は正論なのですが、
その見え方にこの人は慣れる気があるのか?
そもそもこの人はその見え方を望んでいるのか?を
よく観察する必要があると考えます。

また、悪い意味で低矯正の度数に慣れることは視力が上がりにくくなる原因になります。

どういうことかというと、
低矯正で見えている世界(一般的には視力)にも慣れが存在し、
例えば視力0.4くらいの見え方に長年慣れていると度数を上げても視力そのものが
上がりにくいケースもよくあります。

なので視力を無理やり出すために
今より度数を強く上げることに慣れないといけなくなるんですね。

しかし人の目は不思議なもので、慣れている見え方が長いと
いくら度数を強めても「そこが限界値」と脳が認識し視力が出にくくなる現象が起こります。

一般の方には意外と知られていませんが、「度数を上げればいくらでも見えるようになる」と思われていますが
実は違って、視力は若くても出ないことはよくあります。

若い方はそれでも少しずつ矯正すれば視力が回復する兆しはあるでしょうが、
20代を超えるとそれが回復することはほぼなく、対応策としては
目の手術などが提案されることもありますね。

次に、KBの状態を確認する ですが、

眼鏡はその眼鏡を使っていた年月やフレームの状態がとても重要です。

例えば同じ度数であっても「レンズが傷だらけ」だったり、
かける位置がものすごく変だったり、フレームが変形した状態で
慣れてしまっていたりすると、同じ度数で作製しても必ず違和感が出ます。

詳しくはここでは書きませんが、レンズには光学中心と呼ばれる度数が入っている位置があり、

そこからズレると全く違う度数になるからです。

これはフィッテイングの要素も関係してくるのですが、
「同じ度数なのに見え方がなんか違和感ある」と言われた場合は

大体がKBのフィッテイングに慣れていることが原因です。

例えば、変な傾斜角、頂間距離、レンズの剥がれ、歪んだフレーム、

これらをKBと比べて近づけることで解決しやすくなります。

ただし、本来は正しくかけてこそ度数も視力も明視域も合うので、

お客さんにはなるべく正しいフィッティングに慣れて欲しいという意思は伝えておくほうがいいかと思います。

それでも変な調整にさせられることはありますけどね、、、

KBと比較することは測定のクロージングにも関係してくるので
持っている場合は必ず見え方の比較を行い、
フィッテイングも注意して観察しておくと良いでしょう。

次に、慣れやすい度数の目安 ですが

まず結論から、

慣れやすい度数にするためには5つの法則があり、

「KBの使用何数が3年以上は4段階以上動かさない」
「KBの使用年数が3年以上は乱視軸を15度以上変えない」
「PDは2ミリ以上変えない」
「左右バランスは逆転させない」
「加入度数は2段階以上上げない」

この5つが基本となり、そこからどうしても「視力を上げたい」などの
強い希望があった時は、この法則から少しだけ動かしていきます。

その他の法則と併用しながら処方を考えればさらに高い精度の処方が
高速で出来るようになりますので参考にしてくださいね。

これはこの測定塾の中で解説している測定の基礎であり
奥義とも言える法則なので、

よほどレンズのグレードを上げてもらえたり、
自らの意思で「主訴にもっと近づけたい」と言われない限り
この法則の中で処方をすれば、ほぼミスはなくなってきます。

「眼鏡の慣れ」でも少し触れましたが、

本来は希望通りにいきなり強く変化させてもいいのですが、
なぜ段階を踏むのかというと
心理学で、人は「他人に決められたことはがんばれない」のですが、
「自分の意志で選択したこと」はやり通そうとする力が働くからです。

結果は同じでもそこに自分の意志で望んだ変化なのか?
他人が決めた変化なのか?で感じ方は大きく変わるということなんですね。

もう少し具体的にどういうことかというと、ざっくりですが
例えばKB視力が0.5で、今回運転用に作りたいと希望があったとします。

視力は1.2まで出せたとした場合、あなたはどう合わせますか?

⬇️処方例として

検者が勝手に決めた場合、「運転だから1.0くらいは見えておいた方がいいですよ」

お客さんが決めた場合、「スマホも見るので0.8くらいがいいです」

同じ測定結果で視力が1.2出せる場合でも、話を聞かずにこちらが決めた場合と
質問をしてお客さんの環境に合わせた上で今回の希望に沿った処方をするのとでは
慣れようとする意思が違うのがわかるでしょうか?

お客さんは素人です。
眼鏡屋はプロとしてお客さんの希望に沿って
「質問、提案、体験、選択」してもらえるようにし希望を叶えるためには
メリット、デメリットをわかりやすく伝えていく必要があるんです。

人には「慣れ」という便利な能力がありますが、悪く働く場合も多くあります。

こと眼鏡を作る時にはこの「慣れ」をお客さんごとに見極める必要があり、
「希望に沿うためには新しい度数に慣れる努力ができますか?」と
会話の中で聞き取りながら案内、誘導していくことが高速高精度検査には
必要となるのです。

繰り返しになりますが、そのためにはお客さんに、

「質問」→「提案」→「説明」→「体験」→「選択」

を「理解しているな」と反応があるまでスムーズに説明出来るといいですね。

完全矯正値とKBの慣れを考慮した処方の、

どちらを採用するかは悩むポイントですが、大切なことは「お客さんの主訴とリアクションをよく見る」ことです。

完全矯正値を押し付けることや、「慣れの範囲を越えたく無い」というのは、測定者の都合です。

眼鏡の測定で大切なことは、「お客さんを見ること」

これは特にベテランになるほど見えなくなる場合が多いので、「自分の力を過信しない」これに尽きると思います。

これから測定を覚えていく方は、このことをよく覚えておくと、今後の大きな力になりますよ


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