『白狐の妖と娘の御話』

画像1 其ノ壱「白狐の妖と娘の御話。」 #花藍堂粧戯画帖
画像2 昔々の御話です。此処ではない何処か、我々が棲う日ノ本に限りなく似た世界での、悲しい悲しい御話です。どうぞ、お時間ある方は読んで頂けると幸いです。
画像3 心から好いた男を奪われた娘は傷心のあまり床に伏した。しかし、不運にもその娘の「愛されたい」と願う強い情念を嗅ぎ付け、夢に現れた白狐の妖に、とある『契約』を持ち掛けられたのだツた。。
画像4 誘惑に負けた娘は、妖に魂を預け、いつしか夜毎に男を誘惑し魂を喰らう物ノ怪と化した。一時の感情で交わした『契約』それは、これから起こる悲劇の始まりに過ぎなかツた…そう、相手は所詮は狐なのだから…
画像5 美しい黒檀のような黒髪は夜毎男を喰らう度、白銀へと変わり、男達の血液に染まって行く。。
画像6 どんどんと、己に憑く纏う白狐の妖の姿と瓜二つに代わり行く、娘が気付く頃にはもう時既に…夜毎、忌まわしき姿に変わり行くのだった…
画像7 白狐の妖は娘に「実に美味そうな情念じゃ…其方にどんな男をも魅了し、惑わす力を与える代わりに、其方が生み出す情念を儂に喰らわせろ」と甘い誘惑を持ち掛ける。「さぁさ…死ぬは一定、花も実もならぬ終わりじゃ。死のう前に生きてみい」そう狐はニタリ、と嗤う。 (『雪狐々姿湖』より一部台詞引用)
画像8 娘は完全に正気を失っていた。気付いたら白狐の妖に魂を蝕まれ、自らも物ノ怪と化していた。一度喰らうてしまツては、もう…後戻りは出来ないと分かツていたのに。 「あゝ…足りない。満たされない。もう、しないから、お願い…あと、ヒトツだけ。許して。。」
画像9 「あゝ…足りない。満たされない。もう、しないから、お願い…あと、ヒトツだけ。許して。。」
画像10 いつの間にか、もうどれ程の男を喰らうただろうか…もう数え切れない程の喰らうた…そして、気付いた頃には、もう後戻りは出来なくなツてゐた。一度犯した過ちは、もう戻らない。後悔しても、もう遅い。 娘は男を魅了し、惑わす力を手に入れた代わりに、喰らいながらも永遠に後悔の念に苛まれる事になツてしまツた。 最初はただ、あの人に愛されたかツた…ただ、それだけなのに。
画像11 娘の求める本当に手に入れたい『愛』はもう永遠に手に入らない。 後悔しても、もう…娘は物ノ怪として生きて行くしかなくなツてしまツたのだツた。。 何年も、何十年も、何千年も、何万年も…満たされないまま、白狐の餌として永遠に生き続けなければない。そんな、悲しい悲しい御話。
画像12 <後書き> 今回は失恋の傷心中、彼女の「愛されたい」という強い情念を嗅ぎ付け夢に現れた白狐の妖に誑かされ、己も物ノ怪と化してしまった可哀想なお姫様を創作してみました。 結果的に彼女は一時的な感情で妖と契を交わして「如何なる男を魅了し、惑わせる力」を得ましたが…男たちからの愛は一時の感情でしかなく彼女の求める『本当の愛』を得る事は一生叶わなくなってしまったという悲しい結末。

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