見出し画像

(雑談)新幹線を海外で売るのは、なかなか難しそう

私も毎週のようにお世話になっている新幹線。速いし快適だし本数多いし、便利ですよね。東京名古屋間でもふつうに日帰りができてしまうのは凄いことですし、飛行機と違って手荷物検査等も無いので、すぐ予約してその場で乗れるのが、予定変更の多い私にとっては非常にありがたいのです。何より世界最初の(実用化された)高速旅客鉄道システムであり、日本を象徴するアイテムでもあります。

ところが、世界を見渡すと日本の新幹線方式は実はあんまり普及していなくて、明確に輸出されたのは唯一台湾のみで、それ以外に走っているところは無いです。中国も、最初は日本、スペイン、イタリア、ドイツなどの方式が参考にされていましたが、結局はスペインやイタリアに近い方式が採られているようですね。また高速鉄道車両の輸出でも、新幹線方式の電車が海外に輸出されたことはたぶんないです。新幹線技術が応用された高速車両がイギリスや台湾で走っているぐらいでしょうか。

一方世界では高速鉄道の輸出、こと高速鉄道車両の輸出はわりと盛んに行われていて、ドイツのICEがオランダとロシア、フランスのTGVがアメリカと韓国、スウェーデンのX2000が中国とアメリカ、イタリアのペンドリーノがフィンランドやスペイン、ポルトガルで、それぞれ輸出されて運行されています。ヨーロッパ発祥の高速鉄道が、ヨーロッパ圏内のみならず、海を越えて北米やアジアにも輸出されているんですね。

また中国の高速鉄道も最近ラオスまで線路を伸ばしましたし、インドネシア等に輸出されています。政治的なアレコレはいったん置いとくとして、現実的には中国方式を採用すると中国内の広大な鉄道ネットワークに乗り入れられ、さらに中国の鉄道はヨーロッパまで線路で繋がっていますから、貨物列車の運行等も見据えるとメリットが大きいのでしょう。上海號(上海-ハンブルク間定期貨物列車)は鉄道マニアの間では有名です。

新幹線とヨーロッパ・アメリカ等の鉄道は、線路幅が一緒の「標準軌」ですから、輸出すれば簡単に走らせられるような気もしますが、実際にはそんな鉄道模型のような簡単な話ではない、というのは鉄道マニアなのでよくわかっています。

そもそも新幹線とヨーロッパ発祥の高速鉄道は根本的に考え方が違います。新幹線は「新しい幹線」であり、既にある東海道本線等がパンクしたため、これを代替するものとして建設されたという経緯があります。なので専用の線路を敷き、踏切等も一切無くし、高速走行だけを考えた完璧なシステムが組まれています。2分感覚で超高速の列車が運行できるのは、この完璧なシステムが構築されているから為せる業ですね。一方ヨーロッパの高速鉄道は、日本で言うならば「在来線の超高速化」が基本です。都市部では従来の鉄道を走行し、郊外に出ると超高速走行可能な新線に乗る、という方式が多く採られています。東京駅の東海道線ホームを出発し、横浜ぐらいまでは在来線を走って、そこから高速新線で静岡に抜けるみたいなイメージですね。

この方式だと高速新線の建設は郊外だけで済みますし、大都市圏は既に敷かれている在来線を走ればいい、駅も新たに建設する必要がありませんので、建設費が大幅に圧縮できます。ただし在来線を走行するのである程度の冗長性が必要ですから、本数は日本の新幹線ほど増やせませんし、所要時間は日本の新幹線よりもかかります。そこはデメリットですが、土地が広い国では郊外に安く長大な高速新線を建設することで、それを打ち消すほどの利益が十二分に享受できるわけですね。また海外の在来線は、在来線とはいえ160キロ~200キロ程度出せる区間も多く、日本の感覚とは異なります。国によっては在来線をちょこっと改良して、高速鉄道として走らせれば十分というケースもあるようです。

日本の新幹線車両は「デカすぎる」問題もありそうですね。上記の理由から在来線を走行させる必要性等もあるので、海外の高速鉄道車両は車体が小さめですし、座席数もわりと少ない。ICEとかTGVに乗ると、(座席がデカいのもありますが)車内がめちゃくちゃ狭く感じます。日本は新幹線のために規格自体を新しく設計しているので車体がデカく、沿線の人口密度も高いので、定員数もめちゃくちゃ多い。日本の新幹線車両を持って行っても物理的にそのままでは走れないし、走れたとしても持て余してしまうことが予想されます。

だからといって輸出の為に新設計をするとなると、規模の経済性も享受できませんから、割高になってしまいます。そんなわけで、日本の新幹線方式をそのまま売ろうとするとコスト面で渋いし、車両単体での輸出も難しいので、結果海外では「売れない」のでしょう。逆に、日本と同じく西海岸本線の輸送逼迫が起こっていて、完全新線で高速線を作る必要に迫られていた台湾には、ちょうどよかったのかもしれませんね。

他にも、新幹線は寒冷地には強いが、砂漠や乾燥地帯には弱いという話を聞いたことがあります。弱いというか実績がないというほうが正しいかもしれません、日本には砂漠や乾燥地帯が無いですからね。なんにしても日本の新幹線を売ろうとすると、これはなかなか大変そうだなと感じた、というお話です。

アメリカの大地やヨーロッパの平原を疾走するN700、見てみたいですけどね。一応最近もテキサスで新幹線計画が進められているそうで、もし実現したら一度は乗ってみたいものです。見出し画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました、ありがとうございます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!