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人のこころとからだ まとめ

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私たちの「こころ」や「からだ」について書いた文章をまとめています。こころとからだは、一つの現象の二つの現われであると思っています。人という営みは、個人のこころとからだを通して、多…
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#複雑系

夢見のダンス

私たちは普段さまざまにからだを動かしていますが、改めて考えてみると、ほとんどのからだの動きについて私たちは何も知りません。 「指一本動かすこと」についてすら、どのような仕組みで、どのようにその機能が果たされているのか、私たちは何も知りません。 スマホがいったいどんな仕組みで動いているのか、多くの人が何の知識も無いままに使っているように、からだについても私たちはほとんど何も知らないのです。 私たちは、成長する過程で身に付けた「何となくこうすると指が動く」というきわめて感覚

複雑系な稽古ということ

1.店員に虚を突かれる 酒類の販売に年齢確認が義務づけられた頃だったと思いますが、とある量販店でビールを買おうとしたら、レジの人に「年齢を確認できるものはありますか?」と訊かれたことがありました。 当時二十歳は大きく超えていましたし、今までそんな確認をされたこともなかったので、私は最初、何を言われているのかよく判らなくて、しばし呆然。 「あの…年齢を確認できる証明書など…」と改めて言われてハッと我に返り、もそもそと免許証を出したのですが、つい苦笑いしながら「…そんなに若く

複雑系な指導ということ

1.運動への未知の旅先日の記事で、私たちの運動は単純な「意図⇒行為」という線形的なカタチでは記述できないということを書きました。 何故なら、私たちの「知覚⇒意図⇒動作」というプロセスには多種多様な要素が介在していて、そうなるとその挙動は複雑系の領域に突入して、とうてい中枢的な制御の効くものではなくなるからです。 そう考えると、自身の運動の制御はもちろんですが、指導者による運動指導というものの困難さが、ますます際立ってきます。 自身の運動制御ですら困難なのに、それがさらに

複雑系な私たち

1.やわらかなからだ私たちのからだは、ロボットと違って「やわらかい」。 「やわらかい」ということは、それだけからだが自由に柔軟に変化するということですが、それはつまり私たちがからだを動かすときにとり得る動きのパターンが、ものすごい数の組み合わせを有しているということでもあります。 そう考えると、自身の行動を説明するときに「私はあらかじめ考えた通りに動いている」という語り口で語ることは、はたして可能なのでしょうか? それは、私たち人間が自分の行動を自分の意志で決めていると