本気でクイックドラフト研究録〜紋章クソ環境を楽しむ〜
初手でピックしたいカードは何ですか?
MTGアリーナ無課金勢の筆者は、レアをピックするのが好きだ。初手レアや流れてきたレアから、それを活かしたアーキタイプへ寄せて行く道程に楽しみがある。
貧者の味方、クイックドラフトも大いに楽しんでいる。珍しい事に、2024.1.19〜1.22で『イクサラン:失われし洞窟』(紋章付き)という変則クイックドラフトが実施された。変則環境大好きな筆者、このクソ環境も本気で研究したので、読み物として楽しんでもらえれば幸いだ。
Ⅰ.ルール解説
各プレイヤーは、チミルの紋章を所持してゲームをプレイする。その紋章とは「あなたの終了ステップの開始時に、発見5を行う。」
1ターン目から、5マナ以下のカードがランダムでプレイされる。しかも毎ターン、お互いに。
かなりダイナミズムな世界であり、意味の分からない体験が味わえる。
AIによるピックのクイックドラフトな為、レアの入る枚数が少ないのも特徴。AIのピック点数付けではレアはかなり高く、ほぼ流れて来ない。プレミアドラフトでは、空いているカラーやアーキタイプを読み取れば、流れて来たレアの恩恵を受けられることもある。特に2〜3パック目で顕著。だが、botにはその発想はないので、2〜3パック目の偏りが少ない。めちゃくちゃざっくり言うと「受けドラフト」の旨味は薄い。
Ⅱ.環境定義カード
ルールによる環境の特徴を語る前に、どうしても触れねばならない環境定義カードがある。
通常のドラフトでこのカードが入ると「失敗ドラフトだったな…」と反省するところだが、この環境においては環境を定義している。
初めの質問を繰り返すが、最も初手にピックしたいカードは何だろうか?ドラコサウルス??各種神??
もちろんそれらも嬉しい。しかし、色を選ばず入る神話レア。という点から筆者はチミルを挙げる。
さて、太陽の創造物の管理者の話に戻ろう。
チミルの紋章下では、毎ターン発見5を行う。太陽の創造物の管理者がいれば、発見5が倍だ。太陽の創造物の管理者は、チミル本体とほぼ同性能となる。
しかも、チミルの紋章ではチミル本体を捲ることはできないが、太陽の創造物の管理者は捲れる。さらに3/3の肉体付き。アーティファクトゆえの除去耐性や、打ち消されないインクの染みがあるものの、太陽の創造物の管理者がほぼ上位互換である。最もピックしたい初手レア候補、その上位互換がアンコモンにある。と考えると、このクソ環境の一端が伝わるだろうか。
自分自身も最優先でピックするし、対戦相手もこれを織り込んでいる。これをピックできた枚数、そしてこれをいかに早く紋章で捲ったかが勝敗に直結する。このあとこまごました研究録が続くが、すべては環境定義カードありき。なかなかのクソ環境である。
Ⅲ.キルターンは6〜7ターン
毎ターン発見5が起こるのだから、手数が増える。手数が増えるのだから、キルターンは通常より早い。当たり前だ。当たり前の話だが、つい忘れがち。以下も特徴が連なるが「キルターンは早い」という点を意識すると矛盾が楽しめる。
Ⅳ.5マナ域が強い
発見5。もちろん5マナ域をプレイするのが最強の捲り。意図的にピックするし投入する。
アルティサウルスは上記の中でも強いカードだが、今回は環境定義カードと同じ赤という加点があり、更に強い。飛行を止めて、自身の能力で最後のひと押し。というのは伝わり易いだろう。
ただし、盤面が膠着すると勘違いしてはいけない。お互いの発見5が繰り返される盤面は、かなりダイナミズム。あくまでキルターンは早い。
Ⅴ.2マナ2/2の賞味期限が短い
5マナ域をはじめとした中堅クリーチャーがさっさと出てくるので、2マナ域のクリーチャーはすぐにサイズ差が生まれる。
アーティファクトであり、タップシナジーもあり、落魄も誘発する。各アーキタイプに引っ張りだこだが、今回は優先度が落ちる。殴れない、賞味期限切れのタイミングが早い。
キルターンが早い。という表現は繰り返しているが、アグロ環境。という表現は不適切。このカードが強くないと聞けば理解しやすいのではないか。
Ⅵ.アグロを押し下げる要因
イクサラン 失われし洞窟環境はもともとある程度早い環境だ。その理由として、アグロを押し上げる要素がある。飛行と装備品だ。
細くて速い飛行クリーチャーを強化し、ダメージレースで差し切る。これがアグロを押し上げていた要因だ。ただし、このクソ環境では効果が薄い。先手1ターン目にプレイと捲りで上記2枚が揃ったとしよう。「勝ったなガハハ!!」となるよね⁉
相手からは、こんなんが平気で捲れる。アルティサウルスは到達があるので一番酷い話だが、そもそも。ダメージレースになっていないのだ。小粒の飛行はサイズが小さく、装備品は発見で捲れても装備マナを払わねば無価値。これらの要素は、発見で捲れるとハズレだ。デッキを軽くまとめてアグロに寄せるのが構造として弱い。アグロを押し下げる要因である。
発見で捲れると、どれもハズレだ。決着ターンまでマナを払うヒマがなく、腐って終わる覚悟が必要。
盤面に即座に影響を与えるカード群で、デッキを構築したい。
Ⅶ.マナ域を後ろに倒してミッドレンジすべし
ではどうすべきか?1〜3マナ域を有用なカードに絞って、4〜5マナ域を手厚く取るミッドレンジが筆者の答えだ。
低マナ域を絞る。というのはここまで解説した特徴から伝わるだろう。ただし、キルターンが早い≒手札を使い切れずに勝敗が決する。この点から、低マナ域を軽んじてはならない。手札を抱えて敗北する悔しさは、砂を嚙む想いだ。
低マナ域は除去の点数を上げる。そしてクリーチャーは、高マナ域とカード交換できるかを重視し厳選する。
どれももともと強いが、このレベルのカードでないと採用基準に達していない。ちなみに税血の刃は元はやや弱い寄りのカードだが、除去の点数が上がる好例として挙げた。
環境定義カラーの赤を含むマルチアンコには、この厳選したい2マナ域が揃っている。どれも高マナ域と交換できる要素があり、赤の強さを拍車をかける。唯一の4マナ域赤白カバロクティ・サンボーンに関しても、太陽の創造物の管理者との発見シナジーがある。
除去はいつでも強いのだが、加点要素も減点要素もあり面白い。
石化は、高マナ域が主戦力となる中、何でも対処できる長所がより際立つ。しかし、太陽の創造物の管理者が除去できない。
削剥は、タフネスが4以上が主戦力となる中、本当に倒したい相手に触れない短所がある。しかし、太陽の創造物の管理者を除去できる。
評価が乱高下して面白い。
後ろに倒したマナ域で何を入れるかだが、ぶっちゃけ何でもいい。普段は弱いと切り捨てるカードもばんばん入る。
この中堅サイズ達が複数でアタックしてブロックする。5マナ域で挙げたカード達は強いが、こいつらも立派な戦力だ。ダイナミックな戦闘を楽しもう。
Ⅷ.6マナ域には見えない壁がある
4〜5マナ域は手厚く取るが、6マナ域は必要ない。発見5でプレイできないからだ。重たいマナ域で勝負するなら、6マナ域も強いんじゃないの?と考えたくなるが、キルターンが早い事は忘れてはならない。
せいぜい1回しか攻撃やブロックに参加せずゲームが決着する。6マナ域は「マジでボム」や「落魄要素でサイクリング恐竜を入れたい」といった明確な理由を持って採用しよう。
Ⅸ.欲張りタッチカラー
発見すると、出ない色のカードだろうとプレイできる。タッチのリスクがありえないほど緩和されているので、強いカードはばんばんタッチすべし。手札がお互い残ったまま決着する=タッチが手札でダブついて負けるリスク、すら軽減されている。5マナカードは遠慮なくタッチしよう。
Ⅹ.発見シナジーに注意
太陽の創造物の管理者が複数枚デッキに入ると、発見カードが副次的に強化される。
ただし、低マナ域を絞る構築が推奨されるので、デッキ構築段階でしっかり検証しておくこと。発見3が誘発しても、3マナ以下のカードがデッキに存在しないシチュエーションがある。実際の対戦でも、5マナ域もりもりかつ上記カード群を採用した結果、発見3が虚空に消えていく対戦相手がいて可哀想だった。
低マナ域を絞る、というのは割合を下げれば目的を達成している。ライブラリー総数を増やすのは戦略としてアリだ。低マナ域の割合は低く抑えつつも、入っている絶対数は増やせる。あまりに発見して枯渇しそうな場合は一考しよう。
なお、ライブラリーアウト回避の目的ではないので勘違いしないように。チミルの紋章でライブラリーは薄くなる。残り枚数が一桁もざらだ。だが、そのライブラリーは土地がほとんどであり、発見では減らなくなる。その搾りカスがライブラリーアウトするより、どちらかのライフが無くなって決着する。
弱い1〜3マナ域を水増しするのではなく、あくまで厳選した低マナ域と手厚い4〜5マナ域を実現しよう。
Ⅺ.おわりに
お楽しみ頂けただろうか。
あまりにも期間が短い上に、まず間違いなく二度とないフォーマット。この研究録は、電子の海に漂う空虚な情報だろう。
ただ、短期間だからこそ成立するクソ環境、それ故の煌めきを感じて貰えたなら幸いだ。
まだこのクソ環境がアリーナに存在する状態で運良くこの記事に目を通して頂いた貴方は、ぜひ一度プレイしてみて欲しい。太陽の創造物の管理者を3枚ピックして喜ぶ、新たな発見が貴方を待っている。
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