気配の消し方 その2

気配は消えるのは当たり前。
あえて少し強めの言い方をしてみた。単純に「強さ」という物差しを使えば気配など見えていても、これまで学んで得た技や道具を使った方が強い。「慣れた身体」でなら安心して技も道具も使える。しかし、「今以上」の困難に出会った時、それまでの技や道具は役に立たない

気配を消す方法を知っていれば、技や道具が効かない相手であっても、何とかなる可能性が上がる。もちろん、相手も気配を消せるのであればもちろん「衝突」が起こるが、現代の常識では気配はよくわからないもの、として考えられているのだから、覚えておいて損はない。

気配を消す姿勢

気配とは「起こり」、力の入れ具合によって生まれる。これまで漠然としていたものが、はっきりしてきた。力の出どころ、原動力が違うのだから当然だ。
通常、動きは「筋肉」によって生まれる。それは力を入れるものもあれば、抜くことによって生まれるものもある。まぁ、大抵は力を入れるものに頼る。「筋トレして測れる力」を伸ばすのはわかりやすくて人気がある。

もう一つ、「力を抜く事」で生まれるものがある。例えば膝。膝の力を抜けば身体は倒れる。その時の動きを生かし、技にする。脱力系の技も人気だが、これだって、内にあるもの。筋肉のオンオフだ。系統は同じ。

また、もう一つ「慣れた日常」で得ている「何気ない動き」というのもあるだろう。何気ない動きには気配がない。それを「やろうとする心」もないのだから、筋肉に命令する必要もないし、脱力しすぎることもない。ある意味、理想的なのだが、問題がある。それはピンチの時には使えない、という事。

ピンチと日常

何気ない動きを自然に身に着けられる人がいる。それぞれに限界があり、その限界内で動いている時には平気感が得られ、やろうとも思わず、淡々と処理ができる。

これは武術の話だけではなく、お金が主役の現代でも同じ。
1万円をポンと使える人もいればそうでない人もいる。
また、仕事でなら何千万、何億というお金を動かせる人も、プライベートではそうはいかない。個人の財布と会社の財布は違うものだ。
また、経営者となっても、この先の投資として無限にお金を使えるわけじゃない、持っていたとしても、自分の限界以上のお金には躊躇が生まれる。

大きさの問題ではなく、程度の問題。誰しも、限界という壁があり、それの内側は日常、外側がピンチ、そういうお話。

私の稽古は研究稽古。甲野先生に教わった。
常に、自分の限界を見て、それまでの技や術理に頼れないものと向き合い、探る。
組織にある教えや基本、教えたがりの先輩や師匠がいるとこれは出来ない。大抵の場合、限界を探るよりも、安全なところで動けるものを学んでしまう。

試合など、ルールの中で試しあう、と安心が得られる。臆病な私はちょっとした試合だって緊張し、「ピンチ」になるが、そうじゃなく、それを楽しめる人、心を日常にしておける人はいるはず。そういう人が成績を残していく。
ピンチと日常をわかっていればいいのだが、日常ばかりで過ごすといざという時の事を忘れ、ピンチに遭遇した時、パニックになるかもしれない。

心に振り回されないもの、それが身体

気配の消し方の話だった。話を戻して、姿勢の話をする。
心に任せて動けば日常の中では気配が消せる。皆そう、誰でも、家の中、慣れたところで行う慣れた仕事では気配は出ない。問題はピンチの時。

このピンチの時に心が一瞬でも動けばそれが身体を縛る。その緊張は気配になり、動く前に終わってしまう。何とか、しなくてはいけないがずっと、手がかりすらなかった。

頭を落として、目が自由になる事がわかった。頭の中にある常識では「弱くなる姿勢」だったにも関わらず、それまで見えなかったものを見る余裕が出来た。
弱い方にも生き残る道がある、それが今回のノートを書くきっかけになっている。

さらに姿勢を弱くしてみよう。そう考えるのは難しくない。
頭は落として俯かせた。その先は何だろう。頭の重さに引かれ、自然と腰が曲がり、骨盤から力がなくなっていくのがわかる。簡単な事だったが、それを試そう、と思うまでに何十年もかかってしまったんだなぁ、と不思議な気持ち。

腰を曲げれば力が入らない。最近は誰もが骨盤を立てる事の有用性を説くが、それは西洋的。それが出来るのは健康なうちだけ、まぁ、20代前半ぐらいまでだろう。首が細い日本人には骨盤を立て、背骨を主役にする姿勢は無理だったのだ。
しかし、これはなかなか言いにくい(笑)。

当たり前のように健康法としてヨガなどが入り、西洋の教えが蔓延している。昔ながらの姿勢は「ダメ」とされ、誰もが骨盤を立てる。それで動ければいいのだが、どうしたって無理。
一人では何とか姿勢の保持が出来ても、誰かにちょっと邪魔をされたら姿勢は崩れる。そもそもが無理なのだ、とあきらめなくては昔ながらの姿勢には興味は持てない。

自分の思いにあった姿勢を作れば、それは心には壊されなくなる。身体の有効性、存在しているという確かさを知れば頭の常識は変えられる。心に振り回されないもの、それが身体だ。

気配の出ない姿勢

前回、気配が出ない姿勢として、腰を曲げ背中に大気圧を感じられるようにした姿勢を紹介した。今日はそれをもう少し詳しく、丁寧に言葉にしようと思ったが、話がそれてしまった。
また、次回、改めて腰が曲がった姿勢を書きます。今度はちゃんと。最初から(笑)。

【稽古予定】参加受付中
5/22(土)神奈川川崎稽古
5/29(土)甲野善紀浜松稽古

5/12(水) 名古屋緑区
5/21(金) 名古屋熱田
5/26(水) 名古屋緑区
5/27(木) 瀬戸ヒーリング
5/28 (金) 名古屋東山

詳細はウェブサイトで。
カラダラボ ウェブサイト

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