唇と首の関係(唇№8)

唇の緊張に気がついておおよそ2か月。
この間の変身はこれまでにないほど。
最初の頃に書いた事ですが、唇の働きに気づいた事によって「触覚は終わった」という思いは今も変わっていません。
たくさんの技はもう要らなかったのだ、という思いは続いています。

ただ、唇の緊張が取れて身体の緊張がなくなっていると、それまでできなかった動きが現れます。
身に着けてしまった技はなかなか取れません。結果的に技になってしまう、それは仕方がない事みたいです。

首はパイプ役、大番頭

唇の働きがあまりに大きかったので、そこで満足をしてしまいました。
2か月じっくりとそれを楽しんでみると、自然と「飽き」がやってきます。
知っている事だけでは物足らない、そんな強欲が私にはあるんです(笑)。

そして見つかった「首」の働き。
ちょうどその瞬間の高揚した気持ちのまま書いたツイートがあるので、それを紹介しておきます。

以下は12/3のツイートです。
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私の稽古は「変」だ。身体を探る稽古には基本がない。基本を作れない。その日、その時の感覚こそ、主役になるべきで、決まった言葉を作ると、せっかくの感覚が消えていってしまう。言葉として使えるのは、存在が確かなものだけ。だから、同じ「唇」について話をしても毎回、説明が変わる。

今日も、久しぶりに参加された方に唇の働きを伝えていた時、新しい気づきを得る事が出来た。これまでやっていた動きでは満足できなくなっていたのだろう。唇を意識してもらい、歩いてもらう際、「首」が止まっている事が気になり、唇と首を連動させるように伝えてみた。するとどうだろう!

伝えた私も当然、こんな風に、とお手本を見せる。その動きが今までとまるで違うのだ!自分でも初めて行う動きを指摘して伝える、とは実に変な話だが、本当にびっくりするぐらい動きが変わった。これまでも、唇によって変化した動きには驚かされていたが、まだこんな動きも隠れていたのか!とびっくり。

唇を1センチ動かした時、その唇に首がついていくように意識をする。それが伝えた事。普段、首は固まって動かない。背骨方向に緩やかに、伸びやかにする、というのは良く言われる事。それはわかっている。しかし、上下左右、前後、首をダイナミックに動かそうとすると、詰まりが生まれやすい。

首は頭と胴体のパイプ役であり、動きが大きくなれば詰まってしまい、苦しくなる。しかし!胴体に従うのではなく、唇に従うようにすると動きは一変する!唇の自由さをそれまでの首はブレーキをかけていたのだ。首は唇に従い、助ける。そんな思いを持てば、ろくろっ首のように頭は自由になってしまう。

やはり首はパイプ役だったのだ。しかし、従う相手が違う。大きな胴体に従えばどうしても速く、細かく動くのが苦しくなる。しかし、唇が得意なのは速さと細かさ。望むところへとすぐに移動できるのが唇。そこに力を集めてくれるのが首だった。

日本の商店には「番頭」がいる。強烈な個性を持つトップは衝突を生む事が多い。見えているものが違うのだ、当然の事。しかし、その思いを末端まで伝えなければ仕事はなし得ない。そこで活躍するのが番頭ではないか、と思う。トップの思いを代わりに伝える。力ある番頭は組織全体を上手に導く。

首にはその力があるようだ。唇が望む場所へと意識を飛ばす。その時、1ミリもズレがないように首が従う。すると、首から下の大きな胴体は自然と動き出す。こんなに簡単に唇の動きが全身に波及するとは思いもよらなかった!今までのコツは全部吹き飛んでしまった(笑)

日曜日はつくばで稽古。どうしても、遠方の稽古は数ヶ月空いてしまう。その限られた時間で伝えなければ、という思いも強い。もちろん、唇はこれまでの術理の中でも抜群に簡単で、効果が高い。それでも伝えられるだろうか、という不安はあった。しかし、唇と首の関係が見つかり、不安はなくなった。

ただ、あまりに簡単なので、これを大切に思えないかもしれない、という妙な不安が出てきている(笑)。そこはもう、各自に任せるしかない。自分に何ができるのか、自分への可能性は自分で育てていくしかない。私は稽古を通して、人間には無限の可能性がある、と感じる事が出来た。本当にそうだった!

形ある実績、成果を残したわけじゃない。普通に毎日を過ごす中で人間ってすげーなー、と思えるようになった。一度や二度じゃない。もう、毎日だ。今W杯のおかげで世の中が少し明るくなっている。しかしそれは4年に一度。身体を探ればもっと、ダイレクトに、異次元の楽しさが溢れてくる事を伝えたい。
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唇もあり、首もある

興奮したツイートを見ると、恥ずかしさが湧いてきますが、これが正直な気持ち、仕方ありません(笑)。
ただ、この興奮は徐々に収まり、当たり前になります。
このツイートから1週間、すでに私の中では唇と首の関係は当たり前になり、もう興奮はありません。

興奮も合わせて伝えたい、と思う事もありますが、その熱だけが伝わると、「特別感」が強くなりすぎ、自分の中を見る機会を減らしてしまう事があります。
最近は熱もすぐ冷め、当たり前になるので、伝える時にはたいていが「当たり前」状態。淡々と伝えます。
受け取る側も特別感なしに、ふーん、と聞けますが、自分の中にもそれがあると、思いをもって、探ってほしいと思います。

私が伝える事は誰にでも出来る事、そう思っています。
理由はとにかく、そもそもの「身体がある」から。
たくさんの筋肉も、バランスの良い骨格、柔軟性の高い身体は要りません。感度だって、探っていれば自然と出てきます。だって、唇も、首も絶対に逃げないんですから、絶対に大丈夫です!

必要なのは自分を信じる力だけ。
私は生来、この能力が抜群に低かった(笑)。
しかし、身体感覚の世界を知って、一人稽古という道を得てから、徐々に変わりました。
稽古としては30年近く続けています。自信を持てた、と思う反面、まだまだ、人間の可能性を閉じ込めている、そんな気持ちがいつも湧いてきます。

触覚に関しては唇でひと段落、そんな気持ちを得ましたが、そのせいもあって、触覚以外にも興味が広がり、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、と探る世界がぐっと広がってしまいました。

とりあえずの唇の紹介はこの辺りで一区切りにして、また、次回から、広がってきた五感を紹介していけたらなぁ、と思います。

【関東稽古予定】参加受付中

12/18(日) 東京稽古 (満席になりました。現在はキャンセル待ちです。)
3/26(日)  つくば稽古 (余裕あります)
12月の関東稽古では、「唇の秘密」について、詳しくお伝えしたい思います。
基本もなければ、覚えなくてはいけない技もない。ペアを組んで号令に合わせて行う練習もありません。気楽に、興味本位でご参加ください。
申込、詳細はこちらのページから

【甲野善紀先生の名古屋稽古】参加受付中

2023/1/13(金) PM6:00~PM9:00
いつもとは違い、金曜日夜の開催です。

詳しくはウェブサイトでご確認ください。
申込、詳細はこちらのページから

【定期稽古】12月はいつもと予定が違います。

12/10(土) 浜松
12/11(日) 名古屋
12/14(水) 名古屋
12/15(木) 瀬戸ヒーリング
12/16(金) 栄中日文化センター
12/16(金) 名古屋熱田
12/18(日) 東京
12/22(木) 犬山中日文化センター
12/23(金) 名古屋東山
12/23(金) 名鉄カルチャーセンター名駅
12/24(土) 浜松稽古納め 10:00-17:00
12/27(火) 豊田中日文化センター
12/29(木)-30(金) 名古屋徹夜稽古
1/6(金) 一宮中日文化センター

12月大垣稽古はお休みです。
ヒーリング稽古
武術稽古


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