天動説と地動説 その2

「点」について

天動説と地動説という言葉を使って伝え始めたのは今年になってから。昨年末、その「きっかけ」は得ていました。
その「きっかけ」とは「点」についての新しい認識でした。

点や線、面、立体という考え方を私はよく使います。それはゼロ次元、1次元、2次元、3次元のように身体を見ていく事で頭の中で基準を作りやすくなるからです。

今は心の時代。心に思い浮かべた世界を、誰かがまた、心で共感し、世界を作る時代です。これ、いったい、何次元なんでしょう。点や線、面や立体というわかりやすい次元ではなく、複雑に相互に入り乱れて作られています。量子力学ではこの世は「高次元の世界」、と言われますが、それを受け入れるしかないかな、と思ってしまいます。

ただし、それは「心の世界」。「身体の世界」はもう少しシンプル。そして、そのシンプルさを追求していった時、最後に見つかるのが「点」です。

線と面の動き

これまで私の術理は主に線や面、立体の働きが主でした。身体がバラバラになったり、魂に気づいたり、見えないものも扱っていますから、ちょっとばかりは高次元な感覚もありますが、とてつもなく苦しい時、嫌な時、そんな時に見つかる重い身体をどうにかするのには、シンプルな身体感覚の方が役に立ちます。

武術として考えれば、ギュッと腕をつかまれた時など、立体としての塊が強く現れます。心的な働きを求めて高次元にも行けますが、逆にもっと分解し、面的に見て、力の線を探れば、極々自然にその状況を抜け出せたりするものです。

高次元的な動きは不思議さが強く、触れずに崩す、みたいな技もあり得ます。そんな心躍る技は強い魅力の力がありますが、動きの線を捉え、受け流し、接点をずらして逃げ場を作るような動きは「当たり前」に見えます。
ただ、その「当たり前」を「どんな時にも」、表現できるようになるのが武術です。地味ですが、私の研究のほとんどはこのあたりの次元を追ってきました。

もちろん、「点」についても考えてはいましたが、点からほんの少しでも動きを作れば簡単に「線」の動きへと変わってしまいます。
例えば、丹田に力が入るとします。体の中に散らかっている雑な力を丹田に集めれば、一塊感が生まれます。その力をぎゅっとへそ下へと集めればその大きさから「点」の感覚が生まれます。

耐えるだけであれば、すべてのストレスを丹田に集め続ける、という点の感覚は続きますが、手足を動かし、「何かをしたくなる」ものです。
線の感覚や面の感覚は「∞」であらわされる形の力を借りれば「循環」し、意識は続きます。
しかし、点ではそれがなく、どうしても、持続が難しいというか、「点であり続けながら動く」というのを肉体レベルでは考えもしなかったのです。

接点以外を動かす

それが、たまたま、「接点以外を動かす」という感覚を見つけ、動いていながら、動いていない、という矛盾した意識を同時に持つ事ができるのだ、と気づきました。
それが昨年末です。

中心点が一つあり、その点を止めれば、左右、どちらにも同じような滑らかさは生まれます。
テーブルに置かれた一枚の紙に針を突き刺せば、針を中心に紙は左右どちらにも動きます。紙がどれだけ滑らかに動いても、しっかりとテーブルに刺された中心点は変わりません。
この「感じ」を身体で表現できるようになり、これまで考えもしなかった方向へと身体が動き出しました。

最初、その中心点は相手との間に生まれた「接点」が手掛かりになりました。それがやがて、自分の体の中にも作れるようになったわけですが、左手の指先に中心点を置いた時、身体がぐるりと回りだすのを感じたというわけです。

地動説を実感

この時、左手の指先が「太陽」そして、手、前腕、上腕、左半身、背骨、右半身、右上腕、右前腕、右手、それぞれが「惑星」のように感じられ、つながりがありつつも、それぞれが独立して、動き出すのを感じました。
その時稽古をしていたのが小学生だった、というのもあるのでしょう。感覚そのままに「地動説」という伝え方をしたのですが、大人相手だったら、恥ずかしさが先に来たりして、言葉にならなかったかもしれません。

はずみで生まれた地動説という感覚も、言葉にして伝えていれば、むしろ、これが本来の身体の使い方ではないか、と思うしかなくなってきます。
もちろん、丹田、正中線を中心として考えて、手足を支配するような天動説的な動きも「可能」です。
しかし、可能ではあっても、無理がでるのもわかるはず。だんだんと体にかかる負担は増えていきます。

今、オリンピックが行われて、超人たちが飛んだり跳ねたり、回ったり、凄い動きを見せてくれてはいますが、その動きは歳を重ねた後には残りません。スポーツは頑丈さ比べ、という面が強すぎます。
若い頃にしっかりと天動説を楽しみ、年老いたなら、自然に任せられる地動説で動く、そんな理解があってもいいとおもうのですが、どうやら、それは全く理解されていないよう。いくつになっても「努力」と「鍛錬」が人気です。

ちょっと書き出すとあっという間に二千文字(笑)。
テキトーに読み飛ばしながら、こんな世界もあるのだ、と頭の片隅においてください。きっと、手を合わせた時にはわかります。

【稽古予定】参加受付中
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2/26(土) 浜松

2月の「大垣」はお休みです。
詳細はウェブサイトで。
カラダラボ ウェブサイト

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