魂を実感するために その4 めまいの経験

頭の上には誰しも、持って生まれた「星」がある。
そんな事に気づいてしまった2月。
意識が頭の上にとどまる事で自然と重心が上がったようです。

これまで偶然というか、日常生活の中でですが、「踵」を使う事によって、「浮き」が手に入る事に気づいたのです。
身体が浮く、というのはわかりやすい身体感覚です。身体が浮く事で、動きは格段に良くなります。

ただ、踏ん張りはなくなりますから、それまで持っていた技は使えません。相手に触れた瞬間、身体に強烈な軸が生まれ、回転が始まる、そんな感じです。
相手を崩すのは、この回転力のおかげです。

大抵の人は「技」を学びます。「組織」に属し、伝えられてきた技を学びます。覚えきれない時には弱いまま、数年たって、技が身に付き始めた時、強くなった、と喜べます。
ただ、これがいけない。

小成は大成を遠ざけます。

技を覚えてしまったからこそ、それを捨てられないのです。
甲野先生に出会い、身体感覚の世界を知って、30年が近づいてきました。やった、これまで学んでしまった技を「忘れ」始めてきています。しかし、動き、ぶつかれば、ついつい、これまでの技が出てしまいます。それほど、頭の影響は強いのです。

「浮き」の軽さを経験し、自然とこれまでの技から遠く離れたような気がしました。まぁ、考えてみれば当然です。立ち方、踏ん張り方がかわったのです。足を止めて、腰を要に手を動かす形から、左右どちらかにずらした軸を中心に回転させるのです。これまでの技は自然と、出来なくなります。

新しい何かを求める時、「出来なくなる」というのは大切です。
もう、それしかない、という道を見つけられたら、自然と新しい上達が始まります。
私にとって「めまい」はまさにそれです。

突然現れた「めまい」。ぐるぐる、ものすごいスピードで目が回り、止まらない。めまいという言葉は簡単ですが、まさか、こんなにも激しいものとは考えもしませんでした。

それでも、3週間もすれば日常です。力も入れれるようになり、元通り・・・になる事もできました。
しかし、私はこれまでの動きには戻るのをやめました。理由は簡単、いつ、またこうしためまいが襲ってくるかわからないからです。
イザという時に役に立たないかもしれない使い方に命は懸けられません(笑)。

めまいを経験し、考え方というか、求めるものがガラリとかわりました。
目の前に敵を見つける事が出来たのは、私が健康だから。私の立っている場所がしっかりとしていて、安全だから。
しかし、めまいを持てば、もう、目の前の敵以上の困難が「自分の中」に生まれます。自分の中をなんとかする、そんな思いが強くなりました。

これを書いているのは10月。
今思えば、あの時、元に戻る事をやめられた選択が本当に良かった、と思います。
そして、それが出来たのは、私が守らなくてはいけない教え、基本を持っていなかったから。

もし、組織を持っていれば、それがトップでも、下っ端であってもです、きっと、大きくスタイルを変えるのは難しかったと思うのです。
これまで、一人稽古として、身体の声を探ってきたからこそ、新しく出会った世界にも同じように、探索する気持ちを失わず、向き合えたのだと思います。

ポジティブに変わる世界を探るのは簡単です。しかし、ネガティブに包まれた時にもその世界を受け入れ、「興味をもって」探る事、これは大切な事です。

今回、これは「魂」の世界を伝えるために書いていますが、それ自体の使い方などはすぐに当たり前になり、飽きるものです。それは魂であってもそう。
だからこそ、それ自体ではなく、学び方、探り方こそ、伝えたいと思っています。

ただ、学び方こそ、マニュアルには出来るものではありません。自分の身を通して、経験を通してでしか得られないものです。
今、世の中が便利に、安心に、安全に、親切になりました。何かをしよう、と望めばネットにも、リアルにもそれを教えてくれる親切な人がたくさん見つかります。
合わなければ別な人を探す。それも出来ます。技、テクニックはそれで得られるでしょう。しかし、誰かに頼る、という学び方しか知らなければ、誰も答えの知らない問題に出会った時、どうしようもなくなり、絶望してしまうはず。

私はいつも、身体に問いをぶつけています。
困ったときには身体が緊張していて、不快なのです。ただ、その不快にも気づけないほど、緊張していたりするから厄介(笑)。
武術を通して、身体の感度を上げていく。気づけば、結果的にですが、どんどんと快適に、愉快になっていきます。

めまいは「病」です。「病気」ではありません。
これ、わかりますか?
「病」ではありますが、困った事ではなく、稽古としてみればありがたい経験になり、新しい世界を見る事ができるものです。
病によって、気持ちを落としてしまう、これが「病気」です。

コロナのおかげで、免疫の話もよく聞くようになりました。
気分よくいられれば、免疫も強くなり、大丈夫。それを皆、「知っている」のです。
ちゃんと気持ちが落ちていないかどうか、それもわかるようになるのが、稽古です。転んでもただでは起きません(笑)。

めまいに関しても、甲野先生のメルマガに稽古録として寄稿させていただいています。よろしければご覧ください。

風の先、風の跡 Vol.244<稽古録:円の動きの原理に新しい展開が…><不思議な縁に導かれて、映画『1/4の奇跡』を観る/山口潤・カラダラボ代表の横顔><めまいの身体感覚的考察 第1回 寄稿・山口潤>ほか

【稽古予定】参加受付中
10/30(土)甲野先生の名古屋稽古会
10/31(日)つくば稽古会
11/27(土)川崎稽古会、新会場!

10/17(日) 名古屋
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10/27(水) 名古屋
10/27(水) 大垣←再開!

詳細はウェブサイトで。
カラダラボ ウェブサイト

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