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無の日々。

先日新入社員と話していて「最近どう?」と聞いたら「無ですね」という答えが返ってきた。

別の日、4コ上の先輩と話していると「ここ5年くらい全く成長を感じていないんだよね」と言ってた。


こういう気持ち、正直すごくよくわかるしたぶん同じことを言ってると思う。

無だな、と感じる日々というのは、この生活が今日終わっても別にいいし、30年続いても別にいいという日々のことだろう。

無の日々は刺激や変化とは無縁なので、成長も実感しにくい。

特段苦しくもないというのがポイントで、死ぬほど苦しければそこから脱するために頑張るが、そういうわけでもないのでなんとなくそのまま日々が進んでいく。


こういう気持ちは自分という人間の病理だと思っていたけど、結構世代的なものなのかもしれない。


この間朝井リョウの「スター」を読んだ。

あらすじはこんな感じ。

新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応──プロとアマチュアの境界線なき今、作品の質や価値は、何をもって測られるのか。新時代の スター は誰だ。

映像業界の現状への鋭い分析から、みんなが共有する価値観がなくなった時代の苦悩まで議論が拡大していく語り口は相変わらずめちゃくちゃ面白かった。

でも正直、おれとはあんまり関係ないなと思ってしまった。

「スター」に出てくるふたりは、実現したいことがはっきりあってそこへのアプローチの違いが対照的になっている。

そもそも実現したいことも思い付かず、かと言って日々の生活に苦しんでいるわけでもない人間は、この作品の議論にはあまり含まれていない。


朝井リョウの「スター」とかお笑いの「第7世代」的な価値観とか、「自由に目指したいものを目指していいんだ!」という主張は今の時代を表すものとしてよく見聞きする。

でも実際は「何を目指しても良くなったから、何も目指さなくなった」という人が結構多いのではないか。


無の生活は、苦しくはないけど間違いなくつまらない。

「無ですね」と早くも口にする新入社員に「無だよね〜」以外の返答ができる日が早く来るといいんだけど。


サイトウでした。



@いえもん
ホルン吹けたんか!!
なんか想像したら似合うね。
山で吹いてそう。


@きっちゃん
何時に起きて何時に寝たのかの記録だけでも結構興味あります。

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