映画SMILE感想
パーカー・フィン監督の映画「SMILE」
映画の主人公はセラピストの女性。
精神病棟でカウンセリングを行なっている。
ある日受け持った患者が突然錯乱し、彼女の目の前で笑ったまま首を掻き切るというショッキングな自殺をとげるところから物語は始まる。
※以下ネタバレ注意。
※作中で猫が死にます。
セラピストの主人公が精神異常者に反転していく
自殺した女性患者は、自分にしか見えない邪悪な何かに殺されるという妄想に取り憑かれ、常に怯えていた。
しかし患者の死から数日後、セラピストの彼女にも同じ現象が起こり始める。
セラピストは精神病患者を「診察する」立場だ。
一見両者はとても近しい関係に見える。
しかし精神病棟の医師は患者を「精神異常者」として扱うのが前提だ。
実はセラピストは患者と最も遠い立場とも言える。
そんなセラピストの主人公は患者の自殺を見てしまってから、「患者が生前取り憑かれていた妄想」と全く同じ現象に悩まされることとなる。
本当に苦しいのは「人に見えないものが見えること」ではない
人に見えないものが見えるようになってしまった主人公。しかし真に主人公を追い詰めていくのはその現状そのものではない。
主人公を追い詰めたのは「自分の見たものや体験したことを周囲の人間が信じてくれないこと」だ。
主人公が真剣に真摯に周囲の人間を信頼して話せば話すほど、周囲の人間は彼女を危険人物と見なしていく。
タイトル「SMILE」の意味
真に怖いのは、「他者はSMILEの下で何を考えているのかわからない」という「他人への不信感」ということなのかもしれない。
どんなに笑顔で接していても、どんな関係性であっても相手が腹の底で何を考えているかなど永遠にわからない。
映画のラスト、笑顔の邪悪ななにかは笑顔のマスクをとり、中から禍々しくグロテスクな肉の化け物が姿を表す。どんなに親しい他人であっても自分に対する本心はあの化け物のようにグロテスクな何かなのかもしれない。
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