松雪泰子さんについて考える(39)『TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:4点(/10点)
作品の面白さ:5点(/10点)
制作年:2013年(TBS)
視聴方法:DVDレンタル(TSUTAYAディスカス)
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
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<おことわり>
個人的に本作は好きになれませんでしたが、その感想を正直に書いています。この作品のことが好きな方にとっては、気分を害してしまう内容になっていると思いますので、お読みにならないでください。
 
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TBS金曜ドラマとして放送された本作。
主演の唐沢寿明さん演じる帆村正義(大学教授)をはじめとする窃盗集団「TAKE FIVE」は、利己的な動機によってではなく、悪事を働く人や企業から物を盗むのをポリシーとして活動している。そのTAKE FIVEを追い詰めていく刑事・笹原瑠衣役を松雪さんが務めた。笹原刑事は、自身の父親の死が、旧体制のTAKE FIVEの犯行によるものだという怨恨の感情から、彼らの逮捕に執念を燃やす。
 
とにかく出演者が豪華。唐沢寿明さん、松雪泰子さんだけでも十分なくらいだが、さらに松坂桃李さん、稲垣吾郎さん、六角精児さん、峰竜太さん、でんでんさん等。主演級が複数人いて、名脇役も揃っている。
 
そんな豪華な出演者が揃っているのに、本当に惜しい作品だった。何が残念かと言うと、とにかくキザで寒いのである。セリフと演出が。
 
まず、恥ずかしげもなく愛がどうのこうの言うサブタイトルが大げさに感じるのだが、作中でも同じテンションが貫かれている。「盗みには愛が必要だ」という意味がよく分からないセリフが、毎回、帆村(唐沢)や笹原(松雪)の口から金科玉条のごとく唱えられる。
 
この他にも「愛だよ、愛。」「お前はあいつのことを、愛しちまってるんだよ。」のようなセリフが各キャラクターの口から何度も出てきて、その度に観ている方が恥ずかしくなる。しかも、結局、盗みと愛とが何の関係があるのか、合理的な説明はなされないまま終わる。
 
寒い演出は他にもある。帆村(唐沢)が盗みを働くときは、ジャズの「TAKE FIVE」という曲を聴きながら実行するということになっている。そんな自己陶酔のようなことをする必要性も合理性も感じないし、それが帆村(唐沢)をカッコよくみせようとする演出なのだとしたら、逆に恥ずかしすぎるからやめておいた方が良かった。それに、この設定は後半の方では忘れ去られていたような気がするが、勘違いだろうか。途中から早送り気味に視聴したので見逃したかもしれないが。ちなみに、帆村(唐沢)の経営するバーで、この曲を歌手(JUJU)が歌うシーンが時折挿入されるが、これも不自然だった。
 
松雪さんの出演作でジャズが絡むと言えば、映画『笑う警官』(2009年)だが、この作品も最初から最後まで、ことごとくダサくて寒かった。ジャズを絡めてカッコよく見せようとしているシーンが特に。どうしてジャズを扱うとこうなるのだろう。
 
ここまで書くと、駄作だとでも言いたいように受け止められるかもしれないが、本作の主軸となっている笹原刑事(松雪)の父親の死をめぐる真相解明については、最終回で意外な結末を迎えて、見ごたえが無い訳ではなかった。また、中盤までの一話完結のストーリーも、筋だけで言えば悪くない。
 
つまり、自己陶酔的な演出・恥ずかしいセリフ・「愛」の乱れ撃ちさえなければ、そこそこ面白い作品になっていたはずなのに、そういった余計な添加物が多すぎるせいで、口当たりの悪い微妙な仕上がりになってしまったと思う。本当に惜しい。
 
特に、主演の唐沢さんは観ていて気の毒だった。セリフまわしも表情づくりも間の取り方も完璧なのに、キャラクター自体が寒いため、どうしようもなかった。逆に、唐沢さんでなかったら、もっととんでもないことになっていたのではないか。
 
そして、松雪さんの演じた笹原刑事だが、とにかく最初から最後まで暗い。父親の死の真相を追うという役柄上しかたがないかもしれないが、常に眉間にしわを寄せている感じ。笑顔のシーンは1回も無かったと思うし、激しく泣いたり怒ったりするシーンも無かった。ということで、松雪さんのファンにとっての見所は皆無。おすすめできるシーンも特にない。ちなみに、ある人物とのキスシーンが出てくるが、ストーリー的に必ずしも必要なシーンとは思えず、視聴者に媚びた無意味な演出だったと思う。
 
最後に、他の出演者について。
 
松坂桃李さんは、ニヒルで小憎たらしいキャラづくりが上手だったと思う。
 
六角精児さんはさすがの安定感。失礼を承知で言えば、どう考えても六角さんの顔に似合わないキザで寒いセリフを言わされていて、とても気の毒だった。
 
稲垣吾郎さんは、なんともいいがたい演技だった。ああいうキャラクターだと言われたらそれまでだが。

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