松雪泰子さんについて考える(34)『心の糸』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:7点(/10点)
作品の面白さ:10点(/10点)
制作年:2010年(NHK)
視聴方法:U-NEXT
 
※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや結末には触れないようしております。
 
NHK名古屋制作のスペシャルドラマ。耳が聞こえない聾者の母親(松雪泰子)と、ピアノで音大を目指す耳が聞こえる息子(神木隆之介)の親子の物語。
 
とにかく、作品自体が素晴らしい。70分少々というコンパクトな中に、親子愛、親のエゴと子どもの自我の衝突、世代間の価値観の齟齬、聾者とそうでない者の間にある越えがたい壁…等、色んなテーマが無理なく詰まっている。ストーリー展開のテンポも、伏線の張り方も見事。細かい設定やエピソードも含めて、それぞれがちゃんとつながる仕掛けになっている。
 
脚本は龍居由佳里さん。オリジナルドラマなので原作はない。よくこんなにキレイに無駄なくおさめた上に、観る者に色んなことを考えさせられる脚本を書いたなぁと尊敬してしまう。ちなみに、松雪さん出演作では『愛、ときどき嘘』(1998年)、『砂の器』(2004年)がある。
 
一番新鮮だったのは、松雪さんの演じた母親を、善人一辺倒に描かなかったことだ。お涙頂戴の軽薄な作品だと、障がいを持つ人はとにかく善人に描かれるか、または悲劇の人のように仕立て上げられるが、そういったものとは一線を画す。どこにでもいる母親がかかえるエゴと負けん気の強さが一貫していて、説得力のあるキャラクター設定だった。だからこそ、この母親を通して、色々なことをこちら側も考えさえられるし、画面の中から様々なメッセージが伝わってくる。
 
母親役の松雪さんも息子役の神木隆之介さんもどちらも好演。本当の親子のように自然な演技だった。
 
ということで、とにかくドラマ自体が良かったの一言に尽きる。まだ観たことの無い方にはおすすめだ。
 
なお、U-NEXTで視聴可能だが、なぜか出演者情報が登録されていないので、作品名で検索しないとヒットしない。ご注意を。

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