河井克行と検察の不起訴 /『検事失格』市川寛

河井克行 (元法務大臣) 氏の事件が話題になっています。
もともと河井克行・河井案里 夫婦は、選挙のときに政治関係者に金を配って買収した罪でそろって逮捕されていたようです。これが2019年の話。

最近になって、その事件の捜査方法に不正があったんじゃないかという疑いがでてきています。
どうやら汚い金を "受け取った側" の政治関係者たちを取り調べるときに、担当の検察が 「あなたを不起訴にするから "渡した側" の河井夫妻を有罪にできるような証言をしてくれ」 と交渉した疑いがあるようです。

夫妻の有罪判決が出た2021年の記事を見つけましたが、この時点から 「なぜ金を受け取った側が不起訴なんだ」 という疑念はあったようです。
今年になってやっと、録音データの存在などから、その疑念が具体的なかたちで浮かび上がってきたような流れなんだと思います。

選挙買収事件は贈収賄事件と同様、現金を渡した買収側と渡された受領側の双方が存在して成立し、双方が罪に問われるのが大半だ。だが、特捜部が選んだのは克行被告と案里氏という買収側の罪だけを問う道だった。

ちなみにこの記事の翌年に不起訴の判断が見直され、
100人のうちの9人が起訴、25人が略式起訴されています。
(どうやら上記のような批判的な意見を受けての変更だったようです)


手前味噌ですが、僕は検察が 「不起訴にする権利を使って、実質的な司法権を握っているんじゃないか」 という危機感を前々から持っていました。

(だらだらと喋っている配信動画なので時間が惜しい人はみないでください)

なぜそういう危機感を持ったかといえば、マル激という番組で検察の問題が取り上げられたことや、市川寛さんの『検事失格』という本を読んだことがきっかけです。

市川寛さんは元検察官でしたが、自分がおこなった不正な捜査を自ら認めて、そのあと検察官を辞職した方です。
その後に出されたいわば "検察の内部告発本" が『検事失格』です。
その中で描かれる検察の 「脅してもいいから無理矢理にでも罪を認めさせろ」 という姿勢は衝撃でした。

ただし本にはあえて検察の悪い面ばかりが書かれている可能性もあります。
また著者が配属された部署だけが悪かったという可能性もあります。
これだけで検察全体の姿勢を判断するのは早計だと思います。
本の中では検察が取り調べ相手を 「悪人だ」 と決めつけて真実を捻じ曲げていますが、我々自身も検察機関に対して同じような決めつけをしないよう注意しないといけない。


なのでここからは客観的事実ベースで語るために、
「刑事訴訟において起訴後の有罪率が約99%」 
というところから僕の思う危機感を説明しようと思います。

これはつまり 「検察が有罪だろうと判断した場合、裁判でも99%有罪が確定している」 ということです。
僕はこれを 「日本の検察は優秀だ!」 と捉えるのではなく、むしろ 「不起訴で済まされている人々」 のほうにこそ注目すべきだと思っています。

約99%という数字が示すのは検察の優秀さというよりは 「絶対に有罪にできる事件しか起訴しない」 という検察側の姿勢ではないでしょうか?
逆の言い方をすれば、少しでも無罪になりそうな要素があると不起訴で済ませてしまう。
そんな風に 「検察の判断で "無罪放免" になっている人たち」 が大量に存在するんじゃないかという解釈が僕の危機感につながります。

それだけならまだ良いんです。
裁判をするには手間も労力もかかるだろうし、どこかでふるいにかけるようなことは必要だと思います。

ただ重要なのは 「検察が容疑者を意図的に不起訴にすること」 を防ぐ仕組みがあるかどうかだと思います。
そういう仕組みがないと、検察が裁判官の役目をして 「あなたは無罪 (不起訴) です」 と解放してしまうようなことが起こり得ます。

もし10人の 「有罪っぽい人」 がいたとして、
検察はその人たちに対して2つの選択肢を持っているとします。
1. 起訴すれば有罪にできる
2. 証拠不十分で不起訴にもできる
このとき検察はその10人に対してこんな風に言うことができるんじゃないでしょうか。
「言うことを聞けば不起訴にする。でも逆らえば起訴するぞ」

その結果、検察の言うことを聞いた5人は不起訴になり解放されましたが、
残りの5人は従わなかったため起訴されて有罪判決を受けました。
……と、こんなことが起こり得るだろうと想像できるわけです。

専門家でもない僕の想像の話なので、そんなことが実際に起こっているのかどうかはわかりません。
もしそうしたことを防ぐような仕組みがあるとか、検察内部の姿勢が僕の想像と全然違うよという情報などがあれば、教えていただけるととても助かります。

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