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果たして外来種「は」悪者なのか〜「池の水ぜんぶ抜く」を見て〜

不定期時代は見ていたけれど、月一回のレギュラー番組になったことであまり見なくなった番組がある。それが、テレビ東京系列の「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く」という番組だ。最初の頃は、生きもののことを知ることができると思っていたのだが、何度も続けていくうちに、どうしてもぬぐい切れない違和感が出てきてしまったのだ。

元々は、「池の水を全部抜いたら何が出てくるのか」ということをテーマにしていたのだが、それが回を重ねて行くうちにテーマがずれてきていて、「緊急SOS」というように、依頼を受けてお城の堀や池の水を全部抜き、在来種を捜索したり外来種を除去したりすることが多くなってきた。

そして、「生態系の破壊王」などのキャッチーな二つ名をつけて外来種を映している。これこそが僕がどうしても嫌な感じを受けてしまう一つ目の理由だ。

果たして、外来種は悪者なのだろうか。

同じく静岡大学の加藤英明先生が出ている「鉄腕DASH」の企画である「グリル厄介」では、「厄介者」としながらも「罪はないが」としている。グリル厄介は、端的にいえば、人間にとっては増えすぎたことで「厄介」な生きものを捕まえて料理することで消費することで数を減らしていくことにつながらないかというテーマで、食べることで向き合うということをしていくような内容だ。

このふたつの違いは、罪があるのは外来種なのかそうではないのか、の違いだと思っている。このスタンスの差が、どうしても僕は池の水ぜんぶ抜くを好きになれない理由なのだろう。人間が連れてきたという、外来種。そもそもの話として、人間が連れてこなければ、こんなにも問題にはならなかっただろう。けれど、その罪を「外来種」になすり付けるのは、あまりにも都合の良すぎる話なのではないだろうか

外来種を人為的に連れて来た以上、連れて来た側に責任がある。今はもうこの世にいない人間が行ったとしても、人間がやったことが返ってきている以上、人間たちが抱えていくような罪なのではないかと考えている。知識もないのに生きものを飼育して、無理だと思ったら逃してしまったり、養殖場から逃げ出してしまったりなどで野生化してしまった。これは、人間がやってしまったことなのだからこそ、人間が抱えていくべき罪なのではないだろうか。ただ単に外来種を悪者にしてしまえば、問題を本当に解決したことには繋がらないのではないかと思う

もう一つは、「純粋にうるさい」ことが挙げられる。日曜ビッグ「バラエティ」としているように、この番組は「バラエティ番組」なのだ。バラエティ番組は盛り上げるためにうるささを利用しているのだが、それがやかましく感じてしまい、敬遠するようになってしまった。どうぶつ番組におけるうるささが、生きもの好きとは相性が悪いことが違うnoteでも述べたが、ナレーションも含めてとてもうるさいのだ。それが嫌になって、僕は敬遠しがちになった。

そして、三つ目の理由が、「池の水を抜く際に、在来種を殺しかねない行為」をしてしまったことでもある。外来種を除去する際に、池の水を抜いて水量を減らすことで、少しの水に生きものが集中してしまう。そうすると、僅酸素に対して生きものの数が多くなりすぎることで窒息してしまう危険性がある。そして、多くの人が池に入ってしまったことで、専門家が対応できる数を超えてしまったということもある。それが、「自然環境を守る」ということを標榜しているのに、生きものを無闇に殺してしまったということが、なによりも問題なのではないかと考えている。

最近は、抜く事で在来種にも影響が出るようなことはしないようにしてきているが、それでも、池の水を全部抜くことのリスクを軽視していたことには変わりない。人間は環境を変えることができる以上、それを間違えた方向に進めてしまえば、望んでいることとは逆の効果が出てきてしまうのだ。「生きものたちを救う」。それは良い事ではあるけれど、生きものたちは人間よりも下の存在ではない。対等な、地球上で生きている、仲間たちなのだ。

もちろん、対等だからといっても、生きものたちを殺すことが悪いことであるとは必ずしもいえるわけじゃない。あくまで、他の生きものたちだって生きていることを考えて欲しいということだ。外来種「が」悪者なのではない。外来種「を」悪者にさせてしまったことがなによりも問題なのだ。だからこそ、これ以上悪者にしないために、人間が外来種に対して責任を持って対処すべきではあると思う。

最後に、加藤英明先生の「日本の動物園全部行く」というコーナーだが、個人的にはむしろこれこそレギュラー化したほうが面白いのではないだろうかと考えている。

初回では、「JAZAに加盟していない施設」である草津熱帯圏ではあるのだが、加藤先生が1番楽しんでいる様子がなによりも面白かった。解説のボリュームも、生きものたちを刺激しない程度に抑えつつ、そして割とマイナーな生きものたちや有名な生きものも解説していたのだが、それがなによりも面白い。専門家の知見の深さによる解説が生きものたちの展示を深く楽しめるようになるということがもっと広まってほしいと思うくらい、短いコーナーではあったが充実した内容であった。

日本全国には、JAZAに登録されている動物園だけでも90施設以上ある。そこに、東北サファリパークや草津熱帯圏などの非加盟園も含めれば軽く100は超える。月1なので一回の放送で1施設だけであるになら8年以上はかかる計算なのだが、それでも全ての施設を巡って欲しいという思いはある。

特に、野毛山動物園にある爬虫類館のカメ類や、どうぶつ王国系列でのスナネコがどこからきたのかなど、「様々な生きものをペットにするために輸入している状況」に関して、もっと深く解説してほしいと願っている

ペットにするために輸入し、飼育ができなくなって放流されたことで外来種として駆除されることが出てきてしまった以上、「なぜ」外来種がやってきてしまったのか、それに関係することである、生きものの輸入や密輸入といったことに、触れてほしい。

これ以上、多くの生きものたちを悪者扱いしないために、どうかこの声が届いてほしいと思っている。

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