どうぶつな会を見て〜どうぶつ番組における芸能人の扱いとは〜

正直言って、生きもの好きで芸能人にあまり興味がない僕にとっては、芸能人中心で、芸能人目当ての人が見ることを前提としている番組作りというか、中居正広さんという、かなり影響力の大きな人をメインに据えているからこその番組という感じに思えた番組だった。

どうぶつな会という特番は、2020年09月17日、テレビ朝日系列で放送された番組だ。

中居正広さんはどうぶつにあまり興味がないらしく、そんな中居さんにどうぶつを好きになってもらおうというコンセプトで作られた番組だ。

確かに、有名だったり大物だったりする芸能人を目当てにして番組を見る層というのは多い。MBSテレビ系で放送された、「教えてもらう前と後」という番組の第101回、2020年9月15日の放送回でも動物園を取り上げていたのだが、有名人を目当てに視聴している層というのをTwitterでも散見できた。むしろ、動物園の情報目当ての人よりも、そちらの方が多いくらいだった。

ココリコの田中さんなど、動物園や生きものに詳しい方や好きな方が動物園のことを紹介する回で、動物園好きとしてはわりと当たり前である、「動物園は朝一から見に行くこと」など、あまり知らない人にとっては新鮮であろう情報を発信してくれた番組であった。

その中で、芸能人たちの過去の写真を公開するというコーナーもあったのだが、正直行って僕には全く興味のないことで、早くそのコーナーが終わって欲しいと思ったくらいだった。けれど、芸能人目当てで見ている人にとっては、そちらの方が魅力的に思えたのではないだろうかと思っている。

そう言った例は他にもあり、NHKスペシャルのホットスポットでは、福山雅治さんのファンが福山雅治さんを中心に視聴しているということも確認できた。

福山雅治さんに関しては、実際にその場所に訪れていたり、生きものが好きだということが伝わってくる内容であったのだが、中居正広さんの番組に関してはどうしても周囲の「どうぶつ大好き芸能人」たちによるプレゼンを受ける側なので、リアクションを取る立場でしかないというのがあった。取り方はこなれているとはいえど、受け身になりがちだし、生きものに関する情報としてはそれなりにはあるのだが、結局ペットの映像や感動的な話に流れていき、僕としては微妙な感じがした。

以前レビューしたzoo-1グランプリという番組は、芸能人の方が登場しているとはいえ、それが本質を邪魔しない程度に収まってはいた。けれど、どうぶつな会は、「なかい」が入っているように中居正広さんを中心としているということもあり、そこが大切なのだなという扱いが強かった。どうぶつ番組では、誰に主体性を置くかによって、視聴者層や受け取り方が異なってくる。今回は、芸能人が中心だったからこそ、僕のような生きもの好きとしてはやや不満な内容になりがちだったのではないかと考えている。

そもそも、どうぶつ番組における芸能人の扱いとは、どういうものであるのだろうか。スタジオにいてリアクションを取ったり、ロケして大きな声を出すといった場合が多く、わかりやすく言えば「騒がしい」という感じが強い。騒がしいといことは、バラエティ番組に関していえば盛り上げるということで大切なのであるが、人間以外のどうぶつを相手にしている場合、「騒がしい」というのはむしろ迷惑行為になってしまう。実際、どうぶつな会でも、騒がしい人はどうぶつに好かれにくいということを放送していた。にもかかわらず、バラエティ番組には騒がしさというのが求められてしまう。こういったことから、どうぶつ番組にはバラエティ番組において求められる賑やかさというのが、逆効果になり得るのではないだろうかと思えるのだ

内容に関しても気になることはあったのだが、それに関してはどうぶつバラエティ番組という媒体としてのあり方になるため、割愛させて頂く。志村どうぶつ園が最終回になるため、そちらのレビューで語る予定にはなる。

芸能人目当てであっても、僕は「生きものたちのことを知って欲しい」という思いがあるからこそ、それについては反対しない。けれど、芸能人だけを見て生きものたちのことを見てくれないのだけは、悲しいことだなと思っている。決してそれは、芸能人の問題ではなくて、番組の構成の問題なのではないだろうかと考えている。

人間は忘れていく生きものでもある。僕はたまたま生きものに関する覚えが良いだけで、内容とかは忘れにくい。けれど、過剰な情報の中で溺れている人たちにとっては忘れても良い情報になってしまうのではないかという思いがある。あくまで目当ては芸能人という人が多いからこそ、主役はそちらになってしまう。けれど、そのせいで、生きものたちが持つ素晴らしさを伝えきれないのではないか、もしかしたら興味を示してくれないのではないか、そういった思いを抱いてしまうくらいには、残念ながら人間のことを信じきれていない。

有名人が、生きもののことを好いてくれることは、生きもの好きとしては素晴らしいと思っているし、是非とも魅力を広めて欲しいとも考えている。けれど、現実はそう甘くない。有名人だけに注目してしまう人も多くいるのだ。どうぶつ番組としてであるのに、有名人に主体を置いた番組が、僕としてはあまり好きじゃないのだ。

有名な方がアンバサダーを行うことで少しでも知名度をあげようとする試みだってある。ほんの少しでも効果があるとするならば、その一歩を進むことだって否定はできないだろう。けれど、本当にどうぶつ達のことを考えるような、動物園やどうぶつ達のことを主役に据えた番組が増えていけばいいとは思う。

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