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【かくかくしかじか 小噺 Vol.10】

 店主kaquがきままに語ります。

 本日のスペシャルプレートからピックアップしてのかく語りき。もはやプチエッセイ。

■本日のスペシャルプレートのおはなし。 

(A)Mutton roast or (B) Ojri /Dal/Salad/Rice/Beetroot chutney/Cucumber Achar /ginger Achar/dessert/Achar……の9品

★『Ojri』(パキスタン)

下処理がとても大変だったため、再登場はしばらく先……と思っていましたが、ぜひ食べてもらいたい友人が今日お休みまで取って来てくれるとのことだったので一念発起して再登場です笑

ということで、オジリの裏話を。

『羊の胃袋の臭みをどうやってなくすか?』という悩みはどの国も同じようで、何に一番時間がかかるかというとその臭みとりの手間に一番時間がかかるのと、今回も臭みが無事にとれるだろうかと神に祈るような気持ちになります。
というのは、別の機会で南インドの胃袋料理を作ったとき、別のメーカーで旨味がなくて臭みが…という事態があったからです。
そういうときは作り直せばいいのですが、何せ羊の胃袋はちょっとやそっとで手に入るものではありません。そして下処理に何時間かかるかと考えると、真夏の怪談以上にぞくっとするものです。それでもなぜ作るのか? といえば、やっぱり喜んでくださる方がいらっしゃることと、何時間も何時間も(多分半日以上はかけて)仕込みをして、無事に出来上がった、柔らかくて、ちょっと野性的な感じがしつつ、少し歯の間に挟まりながらも愛嬌のある甘味と旨味があるオジリが出来上がって、パキスタン料理っぽいあかーい油が浮かんでるのを見てひとりニヤリとするこの瞬間。
この、してやったり感。――私は羊の胃袋に勝ったぞ、とそのために作っているのかもしれません。

そしてこのオジリ、ちょっとボリュームのわりにお値段張って申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、下処理が大変すぎて、指がいたくていたくて、気づいたらキズができていたり(手袋はしていても中で擦れるのでしょうか)指の皮が厚くなる……ということで、面の皮も多少厚めに今後作るモチベーションのために少し増やして設定させていただいてすみません。
この場で謝らせてください笑

★Beetroot chutney

このビーツのチャトニに関してはいつも何に挑戦しているのか本人もさっぱりわからないのですが、どんどんシンプルになってきている副菜です。
でも何に挑戦しているのかわからないというのは嘘で、料理教室で料理を習ってきて、「ああ、ああいう火加減と色味ができるようになりたい」その一心を技術として試す場だと思っているのです。

また、某柑橘師匠の「太郎くんが出発してから〇分後に次郎くんが出発しました、では二人が合流するのは何分後でしょう」が頭から離れません(笑)

不思議なことにこれらの気持ちや志を抱いて毎回本気で挑んでいるうちに、自分が理想としている味はもっと引き算しても成り立つということに気が付いて、とうとう塩が一つまみになりました。

外食ということで、やはり正直なところ家庭料理よりも多めに塩を使用いたしますから、箸休めという意味でもこの甘味がぴったりなのではないかと私は思うのです。
ここまで来てしまうと、なにか味付けを足したときに「今日は失敗したんじゃないか」と思われそうで怖いのですが、そうならないように毎回努力は重ねていきますし、プレートの主菜副菜によっての味の変化は楽しんでいきたいのでこれからも温かく見守ってください。
(あらかじめバリアを貼ったわけではありません。た、たぶん……)


★ゴーヤとレモンと茗荷とアサリのアチャール

いつも月曜日に行く八百屋さんがあります。そこで先週見つけたのが深雪茄子。出来上がったコンポート、正直茄子のデザートってどうだろうとドキドキしておりましたが、皆様にお気に召していただけてホッとして、ついまた買っちゃったからこれでおーわりと思っていたのに、目が合ったゴーヤ。しかもとってもお安い。

いや正直な話、皮まで食べられるレモンと茗荷とアサリを足したら、ゴーヤが安くても結局ねぇ……というツッコミは言い得て妙で、原価やばいんじゃ…というツッコミはまったくその通りでございます。でも八百屋に行く前に着信があったラインで叔母がくるとなったら、話は別。父方の叔母が来ることは私にとって父親が来てくれるのと同じ気持ち。だってお店を始めてからときどき思うときがあるのです。

もし父が生きていたら、どう思うのかな? 味は気に入ってもらえるのかな? と。

私の家はとても厳格でしたので、学生時代に趣味ごとでひょうひょうとしていているように見えても、うしろめたさでいっぱいで今みたいに好きなことを大切な時間だと思ってできたことってありませんでした。きっと進んでほしかったレールとは違った方向を歩んでしまった私をどう思うのかというのは私にとってきっと一生の難問かもしれません。

叔母はとても私や妹をかわいがってくださって、私の母いわくいつもハイカラな物を持ってきてくれたとのことでした。サーティーワンアイスクリームとか、あとレースの産着とか……

こういう叔母のところがなんだか亡くなった父も同じで、いつも知らなかった食べ物や美味しいお店や新しいものを教えてくれたのを思い出します。

料理教室に通い始めてから、父方の実家にインド料理を持って行ったことが度々あったのですが、95歳を超えた祖母や叔母、叔父がとくに抵抗なく喜んで食べてくれて、私にはやっぱりこの家の血が流れているんだなと。
だから旬のものを楽しく食べてもらえる遊び心があるものを作りました。アチャールは今日のメニューにたくさんあるのですが(笑)

こうして間借りをさせていただいている間、自分のお財布が許すときはちょっとの背伸びもいいのかなと思いながら、せっせとレシピを書き上げて仕上げたのでした。

……今回こうしてエッセイにしてみましたがどうでしょうか。
様子見つつ、しばらく続けてみようと思います。

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