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ChatGPTのコスト感を知らない人は、自分の人生を悔い改めるべきである

生成AIを仕事で扱うようになると、取引先で「生成AIは仕事でこんな風に使うとよいですよ」とアドバイスする機会がある。そんなときに驚くのは、大半の人はChatGPTの名前を聞いたことはあっても、触ったことはないことだ。だから、「最新の人工知能なんだからスゴく高いに決まっている」と思い込んでいる。高いと思い込んでいるから使わない。使わないから、ChatGPTはおカネがかかるもの、無駄遣いはよくないと考え、ずっと使わない。

ソフトバンクグループの孫正義会長が「ChatGPT、GPT4を自分自身で仕事に関係あることで使っていない人はヤバい、人生を悔い改めたほうがよい」と言ってくれたので、AIの普及に手を貸す側は、自分の意見ではなく「孫さんがこういってる」と言える。実にありがたい。私はそこまで思ってないんですけど、孫さんは口が悪い人だから、なんて逃げられる。「ChatGPTを使っていない人はヤバい。火をおこせるようになったのに生肉を食い続けるくらいにヤバい。新幹線が開通したのに東京から徒歩で大阪まで行くくらいにヤバい」のである。

ChatGPTのコスト感を知らない人はもっとヤバい。付き合いのあるITベンダーに「御社は生成AIへの取り組みがまだなんですか、そうですか、では弊社から提案させてもらいますよ」なんて言われて、法外な値段をふっかけられる可能性が非常に高い。コスト感がない人は鴨である。

では、ChatGPTはいくらかかるのか。まず、質問サイト風の質問文を100件用意(この記事の最後にリンクがある)し、いつものように「生成AIツール for Excel」で回答させてみた。

使用モデルは「GPT-3.5 Turbo」、質問の長さは平均19字、回答の長さを最大1000トークンに設定したところ、結果は0.13ドル(約19円)で、得られた回答文の長さは平均637字だった。

次に、この回答を要約したときのコストを調べよう。以下は、要約前のテキストである。

成功するための秘訣は個人の定義によって異なるかもしれませんが、一般的な秘訣として以下の要素が挙げられます。

1. 目標設定: 成功するためには具体的で明確な目標を設定することが重要です。目標を明確にすることで、進むべき道や必要なステップが見えてきます。
(以下略)

「成功するための秘訣は何ですか?」への回答

上記のテキストを「=BB.ASK(CONCAT("次の文を半分くらいに要約してください: ",[@テキスト]))」という式でChatGPTに要約させると、以下のようになった。

成功の秘訣は人によって異なるが、一般的な要素として以下がある。目標設定、モチベーション、継続的な努力、自己啓発、ポジティブなマインドセット、チームワーク、柔軟性。これらは基本的な要素であり、個人の状況や目標に合わせて適用する必要がある。

「成功するための秘訣は何ですか?」への回答の要約

使用モデルは「GPT-3.5 Turbo」、要約の長さを最大1000トークンに設定したところ、結果は0.27ドル(約39円)で、得られた要約の長さは平均181字だった。

以上をまとめると、以下の表になる。

ChatGPTのコスト感(日本語100字あたり)

ChatGPTの料金は、GPT-3.5 Turboモデルの場合、入力1000トークンあたり0.001ドル、出力1000トークンあたり0.002ドルだが、トークン数は日本語で何文字なのか厳密には換算できない。概算としては上記の表のとおり、100字あたり3〜5銭と覚えておくとよいだろう。

こうしてコスト感を算出してみると、ChatGPT Plus(月額20ドル=約2890円)を使っている人は、出費に見合った成果を得られているのか気になる。GPT-3.5で質問する場合、APIであれば578万〜963万字の日本語を入出力するコストに相当する。GPT-4のコストはGPT-3.5の30倍だが、それでも19万〜32万字の入出力に相当する。しかも、ChatGPT Plusに加入しても、GPT-4の利用は40メッセージ/3日に制限(2023年12月現在)されている。つまり30日間に400メッセージ利用できる枠内で、19万〜32万字の日本語をやりとりしないと割に合わない。

ChatGPT Plusは応答速度が速いなどのメリットはあるものの、料金に見合ったメリットを感じられるかは本人の使い方に依存する。ハッキリ言えば、大半の人にはむしろデメリットのほうが大きいとも思える。その点、「生成AIツール for Excel」はAPIを利用するので、ほとんどの人は毎月数百円程度の出費で済むはずだ。ChatGPTのコスト感を知らない人は、自分の人生を悔い改めるべきである。

今回のサンプルファイルは以下からダウンロードできる。