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はなかっぱ創作小説・プロローグ「緑の村に迫りし悪意」

──ここは豊かな生命が溢れし惑星・地球。しかし、この地球は我々の住む時空とは別の時空に位置している。

 そして、この地球には様々な種族が共存して暮らしている。

 特別に秀でた能力は無いものの、知力で文明を築いてきた「人間」
 二本脚の動物の姿を持ち、元となった動物の力を持つ「獣人」
 物品を模した姿を持ち、元となった物品の力を操る「付喪神」
 河童や化け獣、人魚など、人知を超えた力を操れる伝説の生物「妖」

──場所は変わり、ここは地球のとある大陸に位置する村「やまびこ村」。
 この村は、森や川みたいな綺麗な自然に溢れており、主に「はなかっぱ族」と呼ばれる自在に花を咲かせられる妖(あやかし)と、獣人がのどかに暮らしている。
 やまびこ村に住まう、はなかっぱ族の少年「はなかっぱ」は、大人になったら頭に世界一偉大な花を咲かせる、という夢を抱きながら、日々優しい家族や友達と楽しく暮らしていた。

──そんなのどかな村を、大きな巨悪が襲おうとしていた。
 その巨悪の名は「黒羽根屋一味」。名高き悪党・黒羽根屋蝶兵衛が率いる犯罪組織である。様々な国家の支配や闇市場の運営、暗殺家業等を初めとする様々な悪事に手を染めている。

 しかし、一番の目的は若返りの花「わか蘭」を手に入れて力を取り戻し、全世界を征服する事であった。
 「わか蘭」ははなかっぱ族の頭にのみ咲く植物であり、食べた者に若さを与えると言われているが、咲かせられる逸材は少ない。その様な中、蝶兵衛はやまびこ村の少年・はなかっぱがわか蘭を咲かせ得る逸材であると睨み、やまびこ村の侵略、並びにはなかっぱ捕獲作戦に動き出した。

──ここは黒羽根屋城・蝶兵衛の間、蝶兵衛は一味の構成員を集めて会議を行っていた。
蝶兵衛
「我が黒羽根屋一味の同志よ。今日集まって貰った理由は他でもない。この儂が予てより追い求めていた『わか蘭』を咲かせ得る逸材が見つかった。
──その者の名は『はなかっぱ』。はなかっぱ族最強の男とされる、はす次郎の孫だ。儂が偵察隊を派遣して行った調査の結果、此奴こそがわか蘭を咲かせ得る存在であるとの結論が出た。」
 そして、蝶兵衛は続けて言った。
蝶兵衛
「ソーセージフィンガーよ、皆に資料を見せてやれ。」
???
「はい、蝶兵衛様。」
 蝶兵衛がソーセージフィンガーと呼んだ男は、黒いスーツに身を包んでいるが、指や頭部がソーセージそのもので構成されているという、異質なものであった。
ソーセージフィンガー
「皆の者よ。彼が件のわか蘭を咲かせ得る存在・はなかっぱの姿だ。一見何処にでも居るような子供に見えるが、油断をしてはならない。どの様な生物にも、秘めたる力というものが必ず存在する。それが代々強い力を受け継いできた血統の生まれであれば、尚更の事だ。」
蝶兵衛が言う。
蝶兵衛
「ソーセージフィンガーよ、解説の方、ご苦労だった。
今回行う作戦は大きく分けて、『やまびこ村の支配』と『はなかっぱの捕獲』の2つとなる。そして、今回の作戦の指揮を執るのは──
──がりぞーよ、お前だ。お前の蚊柱部隊の力を以て、はなかっぱを捕獲するのだ。分かったな?」
 蚊のコスチュームに身を包み、鋭い前歯を覗かせた少年は言った。
がりぞー
「はい、蝶兵衛様!この度は、このがりぞー様に任務を任せて頂き光栄ですってカー!今までの特訓の成果を活かし、必ずやはなかっぱの奴を捕まえてきてみせますってカー!!」
 しかし、彼の返事に口を挟む者が居た。ピンクのヘルメットと黒い蝶の羽根を携えた少女と、イチゴソフトクリームみたいな頭をした王様風の男だ。
少女
「えー、つまんなーい。アゲルもこの任務やりたかったなー!」
王様風の男
「ふん、お言葉ですが蝶兵衛様、吾輩の雲を操る力が有れば、はなかっぱの奴など直ぐに捕まえられる筈です。」
 蝶兵衛は、そんな騒ぎ立てる二人組を制する。
蝶兵衛
「安心したまえ、アゲルちゃん、ソフトキング。お前達にも仕事が山の様に有る。今は鍛え上げてきたがりぞーの力のお披露目としようではないか。」
 蝶兵衛に制された二人は、大人しく引き下がった。
アゲルちゃん
「はーい。」
ソフトキング
「御意。」
蝶兵衛が言った。
蝶兵衛
「少し話が逸れたが、がりぞーよ。お前の力、期待しておるぞ…ふはははは…。」
がりぞー
「はい、任せておいて下さいってカー!!」
 がりぞーが威勢よく返事をする傍らで、カエル姿の侍が刀の手入れをしながら言った。
カエル姿の侍
「ふっ…拙僧の出番は、もう少し後という訳か。まあ、がりぞーという少年がどれだけやれるかでも見せてもらうとしよう。」

 今、黒き悪意を帯びた蝶が、やまびこ村、そして世界全てを喰らい尽くさんとしていた……。

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第1章「やまびこ村編」に続く。

(あとがき)
本来ならば、このプロローグは9月上旬に投稿する予定でおりましたが、諸々の事情により公開が10月まで延びてしまいました。
この小説を読んで頂いている方々、誠に申し訳ありませんでした。
by Olganos

挿絵:ぶぶべべ様
https://twitter.com/bububebegreen?s=09

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