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管制官について

1月2日に起きた、羽田空港における海保機とJAL機の衝突事故に関連して、思ったことを書き連ねたい。

僕は知らなかったのだが、羽田空港の離着陸数は、世界有数の混雑ぶりであり、1分間に1.5本の飛行機が離着陸しているのだという。

さらに驚いたのは、それだけ混雑しているにもかかわらず、管制官の仕事というのは、昔も今も、ほぼ「マンパワー」に依存しており、飛行機と管制官との口頭でのやり取り(しかも英語)で行なわれていることである。

我々の日常生活においても、「言った、言わない」的なコミュニケーション上の齟齬は起こり得る。これだけ混雑しており、ずっと緊張感を強いられる過酷な労働環境下で、ミスが起きないと考える方が無理があるような気がする。むしろ、人間がやる以上、一定の確率でミスは起きることを想定しておくべきなのであろう。

そのことは、パイロットや管制官がいくら使命感に溢れた優秀な人材揃いであったとしても関係ないことである。

日経の記事によれば、<元日本航空機長で日本ヒューマンファクター研究所(東京)の桑野偕紀所長は「点灯による誤進入防止システムのように、言語による意思疎通以外で安全確認を担保する仕組みの積極的な活用を検討すべきではないか」と話す。>とあるが、逆に言えば、人為的ミスが起きた場合に備えた、その程度の「リスク・ヘッジ」さえ現状では用意されていないということになる。

海保機は、前日に発生した能登半島地震のための支援物資を運ぶためのミッションを担っていたとのことであり、一刻も早く離陸したいとの思いから、気持ちが焦っていたのではないだろうか。そうした平時とは違う心理状況であったことも、今回の事故と無関係ではあるまい。

JAL機の乗員乗客が全員無事に脱出できたことに関しては、国際的にも称賛されているが、これは、いわば「たまたま」の僥倖だと考えるべきである。今回は、「結果オーライ」であったが、次もそのまた次も同じように大丈夫とは限らない。一歩間違えば、多くの死傷者が出る大惨事になっていたかもしれない事案なのだ。

今回の事案については、原因究明とそれに基づく再発防止策の策定に徹底的な取り組みが必要であろう。

直接の当事者だけの問題ではない。羽田空港の混雑ぶりや、それに対応する管制官の人員数、ヒューマンエラーを前提としたシステム対応の未整備等の大局的な原因についても避けて通ることはできない。国交省とか政府の無作為についても触れざるを得ない。

そうなるのを嫌がる人たちは一定数いるから、現場の人為的ミスだけで話を手仕舞いしようという圧力がかかるかもしれないが、それでは何も根本的に解決されない。

繰り返しになるが、今まで大丈夫だったのは、たまたま幸運だったから、現場が献身的に頑張っていたからに過ぎず、ホントは前々からヤバかったし、いつ大事故が起きても不思議ではない状況だったのかもしれない。

「ハインリッヒの法則」というのがある。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというものである。

したがって、軽微な「ヒヤリ・ハット」であっても、「何事もなくて良かったね」で片付けてしまわずに、背後にある原因を1つ1つ潰し込んで、しっかりとした対策を講じていくという地道な努力が必要であるし、それを怠っていると、いずれ取り返しのつかない重大事故が起きてしまうかもしれないのだ。

今回の事故に至るまでに、「ヒヤリ・ハット」はなかったのか、そうしたインシデントに関する情報が、関係者に共有され、原因究明や再発防止策の策定が行なわれていたのか、その辺りについても気になるところである。


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