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「選民意識」について

「熊本を愛すること それが私の使命です」
これは、熊本県議会議員の井手順雄氏の得意のセリフなんだそうである。

その「熊本を愛する男」井手順雄が、夏の甲子園の応援中、禁煙の球場の応援席で喫煙していたというニュースを目にした。

禁煙であることを知らなかったとか、不注意とかではなくて、学校関係者から何度も注意されたにも拘らず、「はい、はい」と不真面目な対応をするばかりで、そのまま喫煙を続けていたのだという。

マスコミに取り上げられて、「(禁煙と)分かっていたが、ついつい吸ってしまった。謝罪したい」と話しているとのことであるが、騒ぎになって謝るくらいであれば、最初からタバコくらい我慢すればいいのだ。

加熱式タバコは、紙巻きタバコに比べて有害成分が少ないと言われており、健康面への影響を気にする喫煙者による利用が増えている。僕の周囲のヘビースモーカーも、何人かは加熱式タバコに切り替えた。しかしながら、発がん性物質その他の有害成分が含まれている点に関しても、加熱式タバコを吸う人が吐き出した煙(エアロゾル)による受動喫煙は生じる点に関しても、紙巻きタバコと大した違いはないと言われている。

今回の事件でも、スタンドで応援している生徒や、チアダンス部員からの、「タバコの煙で気持ちが悪い」という訴えがあったのだという。喫煙者がタバコを吸うのは自由であるが、周囲に迷惑をかけるのはエチケット違反である。しかも、未成年からの苦情を無視するとか、オトナとしてすごく恥ずかしい。しかもただのオトナではない。県議会議員の先生である。もっと恥ずかしい。

「選民意識」という言葉がある。

自分は選ばれた特別な存在であると考え、自分に関しては特別扱いされるのが当たり前であり、他人に対しては一方的に見下したり、攻撃したり、排除したりするような考え方のことをいう。

政治家、官僚、大企業のエライさん、芸能人といった、人からペコペコされるのに慣れた人たちの中には、だんだんと勘違いする人たちもいて、こうした「選民意識」を持ってしまったりするようだ。最近、銀座での不行状がバレて、芸能界をパージされそうになっている役者がいるが、彼などもどこかで勘違いをしてしまったのであろう。

今はスマホがあって、誰でもすぐに録画・録音ができるし、拡散することもできる。昔は情報を発信できるのはマスコミだけであった。だから彼らは「第4の権力」とか言われていたのだが、今は誰にでもできる。スマホを持っている人間全員が放送局みたいなものである。「ここだけの話」とか「絶対に内緒」とか、もはや不可能である。

井手議員も、後輩の応援だし、地元ではなくて甲子園だし、ちょっと羽目を外したかったのかもしれない。「旅の恥は搔き捨て」なんて便利な言葉もある。だが、今のご時世、それは通用しない。

井手議員は、6期目のベテラン議員であり、県議会議長も務めたことがあるという。今まで築き上げたキャリアにこんなしょうもないことで汚点を残すことになろうとは、本人も思わなかったに違いない。

「選民意識」と似て非なるが、「ノブレス・オブリージュ」という言葉がある。「身分の高い者はそれに相応して果たさなければならない社会的責任と義務がある」という意味である。本当に特別な存在であるならば、常に周りの人たちの見本になるような存在でありたいと考えるべきだし、そうであれば、今回みたいなつまらない事件は起こさなかっただろうにと思ってしまう。

言い換えれば、今の日本には、本当の意味での「選民」は存在しないということなのかもしれない。


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