「鹿島アントラーズ」について
「浦和レッズ」について書いたので、今回は「鹿島アントラーズ」について書かねばならない。
実は日経新聞に「アントラーズの経営力」というシリーズ物の連載があり、それがなかなか秀逸な内容で感心していたのだ。この記事を読んで、近年のレッズに物足りなく思っていたものが何だったのか、より一層はっきりと理解できたような気がしたからである。
「鹿島アントラーズ」と言えば、レッズ・サポにとっては「不倶戴天の仇」みたいな存在であるが、アントラーズのファン・サポからすれば、レッズなんて別に眼中にないだろうし、ライバルだという認識もないのだろう。「ウチとは次元が違う」くらいには思われているかもしれない。
とにかく実績においては、残念ながらレッズでは比較の対象にはならない。「オリジナル10」の1つでありながら、J2に一度も降格したことのない2つのクラブのうちの1つであり(もう1つは、横浜Fマリノス)、リーグ戦での戦績は1回を除けば常に1ケタ順位である(12年に11位のみ例外)。獲得タイトルは20(J1リーグ8回、Jリーグカップ6回、天皇杯5回、AFCチャンピオンズリーグ1回)と、国内クラブでは最多である。とにかく30年間を通じて抜群の安定感を誇るクラブなのである。近年は川崎とか横浜が面白いサッカーでJリーグを盛り上げているが、30年間トータルの実績となると、やはり鹿島は別格だと認めざるを得ない。
16年のチャンピオンシップ決勝(年間勝点1位のレッズと、1stステージ優勝ながら年間勝点は3位のアントラーズが対戦)の第2戦、「さいたまスタジアム」で前半に先制しながら同点にされて、後半に入ってPKで追加点を取られて逆転負けを喫してしまい、年間勝点1位でありながらJ1優勝を逃してしまうというアホみたいな試合を、僕は「さいたまスタジアム」で目の前で見ている。
この時につくづく思ったことは、「喧嘩慣れていて、勝ち方を知り尽くしている奴等には絶対に勝てない」ということであった。所詮、レッズはJ1で1回しか優勝したことがないクラブであり、土壇場でのしたたかさとなるとアントラーズの敵ではなかったのである。
この時の試合も第1戦に勝利し、第2戦も前半で先制点を上げた時点で、完全に勝ったような気になっていたところ、前半のうちに同点に追いつかれてしまい、頭がテンパってしまったのであろう。あるいは攻撃大好きなミシャの悪い癖が出てしまったのか。この第2戦、このまま同点で終わったとしても、2戦合計での得点は上回るから優勝できたのだ。勝ち慣れたチームであれば、後半はリスクを冒さずにひたすら時計を回すことだけに専念したであろう。それなのにレッズは後半になって攻撃的な選手を投入して前がかりになって一気に攻め込む戦術を選択して、逆にバテたところでカウンターを食らい、慌てた槙野がPKを献上したのだ。槙野には悪いが、オウンゴールみたいなものである。
「アントラーズの経営力」を読むと、このクラブの強さの秘密は現場の監督や選手もさることながら、フロントの経営スタンスの一貫性にあることがわかる。
フロントがしっかりとしていて、自分たちのクラブのやりたいサッカーがどういうものなのかを経営陣も含めて全員が共通認識を有しているので、補強においてもブレがない。どれだけ人が入れ替わっても、ちゃんと文化は継承されているのだ。
老舗企業というのは、ブランドだけでなく、「らしさ」が代々受け継がれているものである。アントラーズはそういう点で既に老舗企業のような風格があると言って良い。
日本一の熱狂的なファン・サポを擁し、国内随一の観客動員力を誇るビッグクラブであるが、レッズに足りないのは「フロント力」である。
そして、そのレッズに足りないものを持っているのが、アントラーズということになる。