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失言について

人はなぜ失言をするのか。政治家や企業経営者などで、失言をしてしまって、あとで撤回する人が多い。

前々から思うのだが、実は、失言こそが、その人の「ホンネ」である。

失言とは、「言わずもがななこと、言ってはいけないことを、ついうっかりと言ってしまう」ことを意味する。

心の中で、何を思ったところで、個々人の勝手である。日本国憲法でも、思想・良心の自由が保障されている。だが、口に出した途端、公人の場合、発言には責任が伴うこととなる。

静岡県の川勝知事は、もともとは大学教員である。研究者としての実績がどれほどのものかについては、寡聞にして知らない。昔から、「学生一流、校舎二流、教授三流」と言われて久しい大学の出身で、そのまま母校の教員になった人物である。「一流」の方なのか、「三流」の方なのか、僕には判断できかねる。専攻が比較経済史で、研究内容としては英国議会資料の分析とのこと。少なくとも、現代の日本においてプラクティカルな専門分野とは思えないが、間違っていたら、ごめんなさい。

いずれにせよ、大学教員も含めて教師という人種は、総じて世間知らずな人物が多い。若い頃から、「先生」と呼ばれるのに慣れてしまっている。日常、相手にするのは学生であり、「上から目線」でも苦情が来ない相手である。教員同士は互いの領分には基本的には不可侵である。したがって、何を言っても構わないという身分に慣れてしまっている。

そういう人物が、政治の世界に入って、有権者から叩かれる立場になると、今までとは勝手が違うので、ずいぶんとやりにくかったに違いない。

まずは、「叩かれ慣れ」していない。長年、何を言ってもお咎めなしの恵まれた境遇にあったのに、政治家になった途端に、何を言っても、いろいろなことを言われてしまうのだ。

きっと相当にストレスや不満があったに違いない。そのわりに、よく4期も務め上げたことに、むしろ感心してしまう。

今までも舌禍事件はいくつか起こしている。この人の失言についてはパターンが決まっており、誰かを貶めたり、揶揄するようなものが多い。だから、彼の発言によって、誰かを傷つけることになってしまうのだ。今回の「職業差別発言」も同様である。

何度も言うとおり、もともとの生業が大学教員であるためか、知らず知らずのうちに世間を見下すような態度を取るのが、当たり前になってしまっているのであろう。だから、懲りることなく、何回でも同じような問題を起こしてしまうのであろう。

繰り返し舌禍事件を起こすのは、実のところ、何も反省していないからである。口では、謝罪めいたことを喋ってはいるが、腹の中では、反省していないし、自分が間違ったことを言ったとも思っていない。「オレ様の発言に対して、世間は何もわかっていない」「真意を理解できない世間の連中は、やはりアホである」と思っているに違いない。

だから、冒頭に書いたとおり、「失言」こそが、彼の「本心」「ホンネ」だと思うのだ。

今回、知事を辞職することになったのは、彼自身が喋っているとおり、リニア工事の邪魔をしたことで、当初の完成時期をJR東海が正式に延期発表したことを受けて、彼自身としては、「一定の成果を挙げた」と納得したからなのか、他にも何か理由があるのか、それは知らない。リニア工事の邪魔をした理由も、静岡県に本社を置く某大手軽自動車メーカーのトップがJR東海のことが嫌いだからとか、某国の意向を受けているからとか、いろいろ憶測やら珍説やらが飛び交っているが、それらの真偽も僕にはわからないし、興味もないことである。

いずれにせよ、地元有権者による直接選挙で選ばれた知事とか市長というものは、地元に対して大きな影響力を行使することができる立場である。米国の大統領は、2期8年が任期の上限とされており、フランクリン・ルーズベルト以降で3選された例はない。同様に、首長についても、任期の上限を設けた方が良いのではないだろうか。

川勝知事のように、4期も務める例は、他の自治体でもあるのだろうが、大きな権限を持つ立場であればこそ、同じ人間が長くポジションに居座るのは決して好ましくないことだし、今回のような問題が起きるのも、まったく関係がないとは言い切れない。

もっとも、川勝氏の他に適任者がいなかったのだとすれば、これはこれで困ったことであるが……。

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