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【中の人がどこより詳しく解説】イチから分かる自動車電動化


ご安全に!
今回記事はCASEの中で一番注目を集めている「E」(Electric)、電動化をどこよりも詳しく、最新情報で解説します。
世界で急激に進むEVシフト。しかし、実は電動化はEVシフトだけではありません。これさえ読めば、電動化はばっちり抑えられる。明日からの仕事や投資に役立つこと間違いなし。他人よりも一歩抜け出すことが出来ます。

全く知らない方でもイチから分かる内容。自動車業界の方だけでなく、就活生、自動車分野に投資を考えられている方、必見です。

*こちらはカッパッパのニュースレター「モビイマ!」4月発信分をまとめた記事です。ニュースレター登録いただくと週1回「5分でわかるクルマニュース」と「最新自動車業界コラム」が届きます。すでに2000人以上が購読。車関連に興味のある方ぜひこの機会に登録を。


CASEの「E」、電動化って何?

最初にクイズを出題!

世界で進む電動化2021年で最も電動化が進んでいる国はノルウェー。その電動化比率は「93.7%」。2位がアイスランド、3位がスウェーデンと欧州、特に北欧地域の電動化率が高くなっています。それでは2021年我が国日本の電動化率は、果たして何位でしょう?
① 8位
② 11位
➂ 33位
④ 40位
(読み進めると正解がわかります。)

自動車業界で今最も注目を集めている「電動化」。実はBEV、電気自動車ばかりが着目されていますが、電気自動車は電動化の中の一部分にすぎません。

電動化」は

「走行の際に電気を動力に使う駆動方式への転換」

走っている時に電気を動力として使用していれば「電動車」。実はハイブリッド車や燃料電池車も「電動化」には含まれるのです。

日本の報道では「電動化」⁼「電気自動車への移行」で語られ、多くの人がそう捉えています。しかし、日本が得意とするハイブリッド車も電動車。(自工会はこの点に非常に危機感を持ってわざわざ会見で言及するほど

よく海外メーカーや世界の自動車規制報道で「電動化」が使われるのですが、その中身が「電気自動車の割合」や「EVシフト」を指しているのか、HEVを含めた「電動化」なのかは注意が必要です。(また電動化以外にもややこしいキーワードがあるのでその点は後で解説します)

ここでクイズの回答を。

日本はHEV、ハイブリッド車の普及が他国に比べて進んでおり、電動化率は高い国。正解は「8位」で40.3%。電気自動車の普及が進んでいると報道される中国は「電動化」という視点では17.0%で33位。アメリカは11.2%で40位。

ニュースで「電動化」の言葉を目にしたときは実際に何を指しているのか、記事の中身で判断していきましょう。(誤った使い方がされている場合もあります)

電動化ってなんで必要なん?

ではそもそもなんで電動化が必要なのでしょう。

その理由はみなさんご存知の通り「地球環境のため」

現在、化石燃料の大量消費により地球全体でCO2を代表とする温室効果ガス⁼GHG(Greenhouse Gas)が増加。大気中の温室効果ガスが増えると、地表付近の気温が上がり、地球温暖化に。地球温暖化が進めば、平均気温の上昇や氷河、氷が溶けることによる海面の上昇、雨量/異常気象の増加が起き、気候そのものが変わってしまう。農作物が取れなくなる、海面上昇で住んでいる地域が水没するなど人々の生活に大きな影響を与え、莫大な損失をもたらすとされています。

この地球温暖化の影響を最小限に食い止めるため、世界各国が共同し、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催。2015年に採択されたパリ協定では、産業革命以降の気温上昇を2℃ないし1.5℃に抑制することが長期目標として掲げられました。

この地球温暖化を抑える手段として自動車業界には「電動化」が求められています。日本ではCO2排出量のうち16.0%を自動車が占めています。電動化により化石燃料の消費を減らすことで、地球温暖化を防止することが求められているのです。

【ややこしい】「電動化」キーワード解説

さて電動化とその背景がわかったので、具体的にその中身についてみていきましょう。最初に「電動化」≠「電気自動車」でも書きましたが、「電動化(+環境に優しいクルマ)」の内容は使われる定義が違っていて非常にややこしいです。

一目に分かる表がこちら!

1.【駆動方法別】自動車の解説

まずは駆動方法により自動車がどのように区分されるのか解説します。

【駆動方法】エンジン(内燃機関)

【燃料】化石燃料、天然ガス

ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も電気は駆動に使用するものの、内燃機関でも駆動するためICEに含まれます。

世界で規制が進んでいるのは化石燃料だけを使用する「純内燃機関車」。

なお、今後の技術動向次第でバイオ/水素燃料を使用することによって、CO2排出なしの内燃機関車が出てくる可能性もある。

内燃機関はこれまで完成車メーカー技術力が非常に高い+研究開発費が莫大=独壇場で、自動車産業の肝となっていたために、参入障壁が非常に高かった背景があります。

1-2.ハイブリッド車(HEV)

【駆動方法】エンジン(内燃機関)+モーター

【燃料】化石燃料、天然ガス

ガソリンで動く内燃機関(エンジン)と電気で動くモーターの2つの動力源を備えた自動車。

「シリーズ」「パラレル」「スプリット」という大きく分けて3つの方式が存在あります。

「シリーズ」:エンジンで発電した電力をバッテリーに蓄積し、モーターを駆動し走行。

エンジンはバッテリーへの蓄電のみに使い、走る際の動力源は完全にモーターのみ。そのため、走り心地はBEVとほぼ同様。

代表:日産「e-POWER」ダイハツ「e-SMART HYBRID」

「パラレル」:走行時はエンジンが主体で、モーターがサポート。

エンジンに負荷がかかる発進、加速時にモーターを駆動させることにより、燃料の消費を抑えることが出来ます。システム重量が軽く、コストも低く抑えられる点がメリット。

代表:スバル 「e-BOXER」ホンダ 「SPORT HYBRID i-DCD」

「スプリット」:走行状態により、エンジンとモーターを適切に使い分ける方式。シリーズ・パラレルの両方を使う形。

発進、低速時にはモーターのみで走行し、高負荷時や高速走行時にはエンジンも使用します。

代表:トヨタ「THSⅡ」

また「ストロングハイブリッド」「マイルドハイブリッド」という区分も存在します。

「ストロングハイブリッド」:電気モーターを搭載

「マイルドハイブリッド」:モーター機能付き発電機を搭載

マイルドハイブリッドはストロングハイブリッドよりも低コストで、近年欧州メーカーを中心に採用。日本では近年ではスズキが「S-エネチャージ」として販売を進めています。

日本メーカーのハイブリッド技術は海外メーカーと比べて技術的優位性があります。世界ではハイブリッド車の普及はこれから。実はBEV同様に成長市場です。

1-3.プラグインハイブリッド車(PHEV)

【駆動方法】エンジン(内燃機関)+モーター

【燃料】電気、化石燃料

ハイブリッドカー(HEV)に外部充電機能を加え、電気だけで走れる距離を大幅に長くした車。普段は電気だけで、遠出の際はガソリン+電気で航続距離長く乗れることが出来ます。

BEVと内燃機関車の良いとこどり…なのですが、その仕組み上、部品数が増え、機構が複雑になってしまう欠点も。

三菱「アウトランダーPHEV」やトヨタ「プリウス PHV」「Rav4 PHEV」が代表車種。

1-4.クリーンディーゼル車(CDV)

【駆動方法】エンジン(内燃機関)

【燃料】化石燃料(軽油)

ディーゼル車は、ガソリン車に比べ、燃費効率が良くパワフル/二酸化炭素排出量が少ないというメリットがある一方、大気汚染物質の排出量が多い/騒音が大きいというデメリットがありました。

技術開発により大気汚染物質、騒音など従来の課題を克服したのがグリーンディーゼル。代表車種としてマツダ「CX-5 XD」があります。

1-5.天然ガス自動車(NGV)

【駆動方法】エンジン(内燃機関)

【燃料】天然ガス

天然ガスを燃料にしている自動車。走行性能は基本的にガソリンを燃料としているクルマと同等。

二酸化炭素の排出量はガソリン車と比べ2~3割削減でき、硫黄酸化物も排出なし。主に商用車、バス、配送車、ゴミ収集車などで幅広く普及しています。

1-6.電気自動車(BEV)

【駆動方法】モーター

【燃料】電気

電動化で最も注目されこれから普及が進む、電気自動車。電気を用いてモーターで駆動するクルマ。

走行時のCO2排出はゼロのため、地球温暖化対策としてEVシフトが現在一気に進行中。ネックは主要コストの電池価格の高さと航続距離、充電インフラの整備、充電時間の長さ。

世界各地で政策として普及策が進められており、購入に際し、補助金が出ています。

モーター駆動により参入障壁が下がり、新興メーカーも乱立。産業政策として国家をあげて支援する国も多いです。日本メーカーはEVシフトを進めているものの、海外メーカーに比べ、電気自動車の開発、販売は遅れています。

1-7.燃料電池車(FCEV)

【駆動方法】モーター

【燃料】水素

外部から電気ではなく、専用のタンクに圧縮した水素を補給し、発電⇒モーターを駆動させ走行するクルマ。

水素と酸素のみを排出する究極のエコカー。BEVで問題となる航続距離や充電時間の長さが解消されます。しかし、タンクなどの部品や機構の複雑さから値段が高い+水素供給のステーション設置費用/条件のハードルが高いといった問題があります。一般車よりも商用車トラック向けでの利点が大きいとされています。

2022年3月、現在日本で販売されている一般車はトヨタ「MIRAI」のみです。


2.環境に優しい「自動車の区分」

世界では環境に優しい自動車の優遇が進んでいます。しかし、似たような言葉なのですが、実は含まれる自動車の区分が異なっていて、非常にややこしい。先ほど学んだ自動車区分を踏まえて、各キーワードが何を示すのか見ていきましょう。

1-1.電動車(xEV)

上記でもすでに解説済みですが、「走行の際に電気を動力に使うクルマ」。電気自動車(BEV)と思われがちですが、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車も含まれます。完成車メーカーの発表で「電動化率」や「電動車のラインナップ」が使われる場合、ハイブリッド車なども含むことに注意(ここを勘違いしている人は非常に多い)

(特に自工会(というかト〇タ)はこの点をすごく気にしていて、HV⇒HEV、PHV⇒PHEVと間に「E」を含み、電動化がわかる表記に変えるよう依頼がきているとかどうとか。)

1-2.新エネ車(NEV)

中国市場の自動車で使われる言葉。「環境に優しい=新しいエネルギーを使用するクルマ」でプラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車が該当。ハイブリッド車は含まれない。中国では中国国内メーカーを含め、BEVの売れ行きが非常に伸びており、新エネ車のほとんどはBEV。ただしプラグインハイブリッド車や燃料電池車も含まれるのだという点は理解しておきましょう。

1-3.次世代自動車

日本で使われる言葉。電動車だけでなく、クリーンディーゼル車や天然ガス自動車も含まれます。日本の政策ではこの次世代自動車の普及率を目標にしており、各普及率目標は↑の表をご参照ください。

1-4.ZEV(Zero Emission Vehicle)

排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車。主にアメリカ、特にカリフォルニア州の規制で使われる言葉。

基本的には電気自動車や燃料電池車のみですが、この車種だけではカリフォルニア州の規制をクリアすることは難しいため、実際はプラグインハイブリッドカー、ハイブリッドカー、天然ガス車、排ガスが極めてクリーンな車両などを組み入れることも許容されています。

***

それぞれに共通しているのは「環境に優しいクルマ」であることですが、包括する範囲は様々。加えて単体での「電気自動車普及率」も使われるため、話が混乱しがち。それぞれのキーワードを覚えて、議論がごっちゃにならないように注意していきましょう(自戒をこめて)

「EVシフト」が環境に良いのか論争

最後に「環境に優しいクルマ」のはずの電気自動車が本当にそうなのか問題について触れておきます。

現在のCO2排出指標は、Tank to Wheel、クルマに燃料が入ってからの計算がされるため、電気自動車は排出ゼロとされています。しかしながら、Well to Wheel、発電時からのCO2排出で考えると、化石燃料の消費があり、ゼロではありません。また電気自動車は製造過程(主に電池)で多量のCO2排出がなされるため、LCA (Life Cycle Assessment)、製造から廃車までのCO2排出で見ると実はそれほどCO2排出が減らないのではという議論があります。

Tank to Wheelは単純に走行中にクルマが化石燃料をどれだけ使うのかだけで計算できるのでCO2排出の比較は容易です。しかしWell to Wheelになると使われる電力がどのような方式で生み出されているのか、LCAになると仕入れ先の製造時も含めたCO2排出まで考慮する必要があり、簡単に比較ができません。

正直なところ、基準が決められていないため、BEV推進派、反対派がそれぞれに有利なデータを用いて検証⇒結論を出す傾向があり、実際はどうなっているのか一般人には判断がつきません。( 詳しく知りたい方は下記のnote参照)

カッパッパがいろいろ調べて出した結論は

① 一般的な内燃機関車と電気自動車を比較すると電気自動車の方がCO2排出は少ない

② 燃費の良いHEV車(ヤリスやプリウスなど)と電気自動車を比較するとHEVが勝つ可能性がある(生産国の電力構成による)

➂ 今後、電力はCO2排出が減る再エネ化が進むため、電気自動車の方がCO2排出削減幅が大きい

現段階で、単純に「BEVにシフトすればCO2排出が削減され、エコ!」は間違いなのですが、この点を議論していてももはやどうしようもない段階に入っています。

世界で規制が進み、また「EV」に関する報道が出ればSDGsの観点から株価が上がる現在、「EVシフトが本当に環境にいいのか」に固執していても潮流に乗り遅れるだけ。自動車メーカーはまず、この流れに乗っていく必要があります。(ただしEVは利益がとても出ずらいよ問題があることには留意)

また現在の世界の規制はTank to Wheelですが、今後EUをはじめとしてLCAでの規制が始まる見込みになっています。まだグローバルでの標準が決まっていないため、日本も不利にならないようにルール作成から参加していく必要があるのですが、苦手なところなのでなかなか不安。もしLCAでの評価で規制がなされると、化石燃料を多く使用し発電する日本の電力構成では罰金が科せられる可能性があります。輸出産業の自動車の海外移転が進み、国内が空洞化へ…なんてシナリオも。

今後、いかにCO2排出が規制されていくのかも「電動化」の動向をうかがう上では非常に重要です。

世界での環境規制事情

現在地球環境で最も問題となっている「温暖化」。地球温暖化の影響を最小限に食い止めるため、世界各国が共同し、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催。2015年に採択されたパリ協定では、産業革命以降の気温上昇を2℃ないし1.5℃に抑制することが長期目標として掲げられました。

この目標に基づき、世界各国では排出目標を2030年までの中期/2050年までの長期に分け、達成を目指しています。各国の目標は↓の通り。

1番の排出国である中国の目標が他と比べて低めだったり、新興国であるインドはカーボンニュートラルは他国と比べ遅れ気味である点、また削減の比較対象が1990/2005/2013年比どれにあたるのかがポイントです。日本は2013年比▲46%と他国比べ、目標高めです。

2021年に開催された「第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)」では気候変動に深く関わるセクターごとの交渉も行われ、自動車分野は主要なセクターのひとつとして協議。「世界のすべての新車販売について、主要市場で2035年までに、世界全体では2040年までに、電気自動車(EV)等、二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車とすることを目指す」という共同声明が発表されました…が、実は自動車大国であるアメリカ、ドイツ、中国、フランス、イタリア、そして日本等は政府としてこの声明には署名していません。(実はドイツ/フランスもしていない。)

さて、全体の流れはつかめたので、次はカーボンニュートラル実現に向けて、各国がどのような自動車に関わる規制/政策を出しているのかを解説します。

「各国の電動化目標(ガソリンエンジン車の販売規制)」「自動車への環境規制」「消費者への支援」に分けてみていきます。

中国の環境規制/自動車産業支援政策

  • 電動化目標 ; 2035年までに新車販売の50%以上を新エネルギー車へ(うち95%をEV) NEV 以外はHV 等とする。

  • 環境規制 ; CAFE規制/NEV規制

  • 消費者への支援 : 購入補助金(最大額) BEV 12600元(23万円) / PHEV 4800元(9万円)

世界最大の自動車市場、中国。EVシフトに最も注力している国の1つです。国として自動車産業を振興、中国ブランドを確立するために非常に手厚い支援を行っています。

2021年10月に「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」が発表。「新エネルギー車を徐々に主流製品とし、自動車産業の電動化モデルチェンジを実現する」方針が大々的に打ち出され、新エネ車へのシフトが急ピッチで進んでいます。2022年の販売見込みは550万台とロードマップよりも前倒しで達成する見込みです。

ポイントとして抑えておきたいのは2035年にNEV以外はHVにする点。中国ではHVは普及率が非常に低く、5%以下。実はNEV同様にHEVも販売が伸びていく見込みです。

中国で特徴的なのはダブルクレジット管理=2つの環境規制を取っていること。1つ目は他国でも行っている企業別平均燃費基準(Corporate Average Fuel Efficiency: CAFE)規制。これは1 車種の燃費で環境負荷を判断するのではなく、メーカーの全車種の各販売台数に応じて全体の平均燃費を算出して評価し、基準満たさなければ罰金を課す規制。目標未達であれば、その分クレジットを補填(前年からの繰り越しや他社から購入)する必要があります。

2つ目はEVクレジット管理規制。新エネ乗用車を生産・輸入すると「クレジット」が付与。クレジット達成目標値を上回れば、余剰NEVクレジットとして他社へ売却し利益を得るインセンティブに。逆に下回ることになると、不足する分のNEVクレジットを他社から補填購入するなどの対応が必要となります。つまり自動車メーカーは、乗用車生産/輸入台数の増加に比例して、新エネ乗用車の生産/輸入台数を増やしていかなければなりません

中国では格安EVの販売数が伸びています。そのビジネスモデルは車の生産では原価ギリギリ⇒販売台数をのばして、「クレジットで利益を生み出す」になっています。格安の背景はこの規制があることは覚えておいた方が良いでしょう。

中国では充電インフラの政府の支援が厚く、急激に進んでいます。

最後に新エネ車普及を大きく後押ししてきたEV購入補助金は徐々に減額。2022年は最大1.26万元(約23万円)。2023年には廃止される見通しです。しかしながら、ガソリン車にはナンバープレート発行制限(+取得に100万超のコストがかかる)などの規制があります。新エネ車が補助金以外の部分で優遇されている点は変わらないため、都市部を中心にまだまだ拡大は続く見通しです。

アメリカの環境規制/自動車産業支援政策

  • 電動化目標 ; 2030年までに新車販売の50%以上ゼロエミッション車(ZEV=BEV/PHEV/FCEV)へ

  • 環境規制 ; CAFE規制/ZEV規制(カリフォルニア州)

  • 消費者への支援 : 購入補助金(最大額) BEV PHEV 7500ドル(約90万円)

自動車市場世界2位のアメリカでも電動化は進んでいます。バイデン政権に変わって以降、特にEVシフトへの支援に力を入れており、政府からの支援も厚くなっています。

電動化目標は2030年までに新車販売の50%以上をZEVに。この中にはHEVは含まれておらず、かなり高い目標。アメリカはピックアップトラックや大型SUVが売れ筋上位。燃費の悪いそれらの車種が電動化されれば、大きく排出量を減らすことが出来ますが、航続距離や電費の悪さをどう改善するか。電池をたくさん積めば問題は解決するのですが、その分値段が高くなるため、どれだけ消費者に受け入れられるかは不透明です。

全米での環境規制としては中国同様のCAFE規制。こちらはトランプ政権時代に一時的に緩和されたのですが、バイデン政権に変わってからは厳しくなる方向に。直近のニュースでは「2026年までに平均燃費をガソリン1リットル当たり約23キロメートルに引き上げ」とかなり踏み込んだ規制になる見込みです。

テスラのお膝元、カリフォルニア州ではさらに厳格なZEV規制が施行されています。これは自動車メーカーに対し、毎年一定数のBEVやPHEVの販売を義務付ける規制。規定に満たない場合は罰金を払うか、他社からクレジットを購入する必要があります。カリフォルニア州は温暖化が原因とされる山火事に悩まされており、こうした規制を積極的に導入。2035年以降の新車は全てZEVにする目標を掲げています。首都のあるワシントン州も2030年以降のガソリン車新車販売禁止する法案を可決しています。

ただ、アメリカがややこしいのは州ごとによって方針が異なること。

現在のバイデン政権の目玉はEV関連政策。EV充電ネットワーク計画として75億ドル(約9000億円)の予算を割り当て、2030年までに50万基の充電器を設置することを目標を掲げています。公用車もEV化を推進、税額控除額は最大7500ドル。電池などの開発支援も含め、これまでにない手厚い支援策を国として打ち出しています。

EVシフトを鮮明にしているアメリカですが、不安なのは政権交代。トランプ前大統領が燃費規制を延期したように、政権が変わることによって、現在のEV重視の政策も大きく転換するリスクがあることには注意が必要です。


欧州の環境規制/自動車産業支援政策

  • 電動化目標 ; 2035年にEU圏内でのガソリン車の販売を事実上禁止(HEV、PHEV含む)

  • 環境規制 ; CAFE規制 (将来 LCA規制)

  • 消費者への支援 : 購入補助金(最大額) ドイツBEV 9000ユーロ(120万円) フランス 6000ユー(80万円)

環境への意識が高く、EVシフトを鮮明に打ち出し、世界を引っ張ってきた欧州。 電動化目標は世界と比べても高く、2035年にEU圏内でのHEV/PHEVガソリン車の販も含め、事実上禁止。イギリスでは2030年にガソリン車を廃止。内燃機関車⇒EVへのシフトがどの地域よりも鮮明です。環境問題という大義名分を掲げながら、EVシフトによる産業転換で自国優位にルール変更を進めるところ、欧州の強かさを感じます。

ただ、安い労働力で工場を誘致している東欧諸国が反発していたり、COP26の声明にドイツ、フランスが参加しなかったりと1枚岩ではありません。欧州はEVシフト一本に絞っているわけではなく、これからの実情に合わせ、転換する可能性はあります。

環境規制は現在はCAFE規制を導入。2021年は1台当たり95g/Kmでの規制を実施。1gあたり超過するごとに95ユーロの罰金という厳しいもの。多くが罰金の対象となり、販売台数の多いメーカーで、達成できるのはトヨタが何とかギリギリくらい。今後増々強化される見込みであり、燃費の良いHEV及び電気自動車の販売拡大が必須です。

また欧州で注目すべき点はLCA、製造から廃車までのCO2排出で規制を検討している点です。LCAでの規制になると電力生産時や自動車製造時のCO2排出も含まれ、電力構成がどのようになっているのかで、CO2排出が変わります。具体的にどのように算出するかは未決定ですが、欧州だけでなく世界に拡大する可能性もあり、ルールや導入時期に注目です。(現時点では2025年ごろの予定)

購入補助金も大変太っ腹。ドイツでは最大9000ユーロ(120万)とEVの普及拡大の大きな要因に。ただし高額の補助金はいつまで続くかは不透明です。イギリスなどの一部の国ではすでに補助金の引き下げが始まっています。各国が補助金をどう調整していくかがBEV成長のカギになってくるでしょう。

また産業振興の一環としてBEVの主要部品、電池工場の誘致にも積極的。欧州メーカーのEVシフトに合わせ、各国で電池工場が立ち上がっています。

新興国の自動車産業支援政策

ベトナム ビンファストのEV 『VF e35」

新興国では環境規制は行われていない国が多いものの、EVシフトを機に自国の自動車産業を成長させるべく様々な振興策が行われています。

ASEANの自動車生産の中心、タイ。EV振興策として補助金最大7万バーツ(25万円)、EV生産のために輸入税率の低減、2030年までに総生産台数に占めるEV比率を30%に引き上げる国家戦略計画を掲げています。2021年の販売台数は約2000台ほどとまだまだ少ないですが、補助金の拡充などを受け、2022年には2倍の4000~5000台に。25年には2万5000台と今後大きく成長していく見込みです。

人口が多く、これから自動車の普及が進んでいくインドではCO2排出よりも大気汚染が大きな課題。排出ガスの少ない電気自動車に注目が集まっています。自動車よりも2輪のバイクの方が電動化が早いのがインドの特徴。2021年で23万台のEV2輪車が販売されています。4輪の自動車でも地場のタタ自動車を中心に販売は伸びており、2021年のEV4輪の販売台数は1万4690台で前年の3倍。2030年までに自家用乗用車の30%、商用車の70%、そして2輪の80%をEV化する目標を掲げ、電気自動車普及・生産促進政策(FAME)を進めています。

またベトナムではEV新興メーカーとしてビンファストが国家をあげて支援され、自国だけでなくアメリカにも工場を建設予定。

日本の環境規制/自動車産業支援政策

直近発売となった日産BEV アリア
  • 電動化目標 ; 2035 年までに新車販売で電動車( HEV/PHEV含む)を 100%にする

  • 環境規制 ; CAFE規制

  • 消費者への支援 : 購入補助金(最大額) BEV 85万円 PHEV 55万円

我が国、日本の環境規制、自動車産業支援政策はどうなっているのか。

まず電動化の目標は「2035 年までに新車販売で電動車を 100%」。ポイントは電動車の中に HEV/PHEV含まれる点。HEVを含めると日本は電動化の割合は高く(世界8位)、技術的にも進んでいるHEVを中心に今後電動化が進んでいくでしょう。東京都では国に対して、先行し、2030年までに「脱ガソリン車」の目標を掲げ、補助金の拡充、充電インフラの整備を推し進めています。

環境規制ではCAFE規制を2030年度に導入予定。燃費基準推定値は25.4km/リッターと他国と比べると比較的緩いものの、特徴は燃費の算定には「Well-to-Wheel(WtW:井戸から車輪まで)」の考え方を導入している点。ガソリン/電力生産時のCO2排出を含める点がこれまでと異なります。電力構成がどのようになっているかで大きく対象も変わってくるため、今後どのように算出のルールを作成していくのかに注目です。

また補助金は2022年から拡充され、BEVは最大85万円に。世界で見ても高額。今年は国内各社もEV販売が予定されているため、「EV元年」となることは間違いないでしょう。EV普及が遅れがちと言われている日本、2021年21,139台が2022年どれだけ伸びるのか。今後を占う重要なポイントです。

政府はEV普及のため、補助金を増額するとともに充電インフラの整備ため導入支援、主力部品の電池の開発支援を進めています。ただ他国と比べるとその援助は少なめ。今後、特にBEVの普及を進めるためには政府の支援は大きな要素。今後どのような政策が打ち出されていくのかで電動化のスピードが大きく変わってくるでしょう。

◆電動化戦略のポイント

それでは各メーカーごとの電動化戦略を7点のポイントから解説します。

  • 電動化計画=BEV販売計画 (基本的に2030年基準)

  • BEV販売車種予定 = 投入するBEVモデル数

  • 代表車種 = 現時点でのBEV代表車種

  • プラットフォーム = BEVで使用されるプラットフォーム名

  • 投資 = BEVへの投資計画

  • 他社との連携

  • カーボンニュートラル = CO2排出をゼロにする年

この7点さえ抑えれば、電動化戦略の分析は大丈夫。4.プラットフォームはBEVでは開発費用が多額になるため、各社でプラットフォーム=車体の共通化を推し進めており、各社の特徴が非常によく表れていたため、今回採用することにしました。

各社を表にまとめると↓に( 保存→拡大がおすすめ)

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