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【どこより詳しく徹底解説!】21年上期自動車メーカー決算!

ご安全に!

21年上期自動車メーカー、各社の決算が出そろいました。
コロナ禍から明け、回復に向かうはずだった21年上期。半導体を中心にした部品供給問題から、各社は大きく減産へ。
9月にはこれまで生産調整が少なかったトヨタが大減産を実施し、「トヨタショック」として自動車業界のみならず、株価、日本全体に影響を与えました。

今回の上期決算では、過去最高益を記録した会社もあれば、業績下方修正する会社もあり、明暗が大きく分かれています。
そんな自動車メーカー各社の決算を徹底的に分析。決算資料だけでなく、発表後の会見内容も織り込み、ネット、新聞記事よりも3歩踏み込んだ記事になっています。
ここでしか読めない情報を提供し、独自視点で各社の決算、そしてそこから見える自動車業界全体を分析しています。

・ネットや新聞よりも深掘りした情報を得たい
・決算をチェックしたいが、時間が取れない
・投資先として自動車関連決算の詳しい情報が欲しい

そんな方にピッタリの内容。自分で言うのもなんですが、かなりクオリティ高い約20,000字超えの大作です!

これさえ読めば、自動車業界の決算、現状把握は大丈夫!

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それでは【徹底解説!】21年上期自動車メーカー決算!お読みください。


やはり、その強さ圧倒的「トヨタ」過去最高中間決算&高利益率!ただその実態は…

トヨタ自動車のことし4月から9月までのグループ全体の中間決算は、アメリカなどで販売が伸びたことで、売り上げ、利益とも過去最高となり、今年度1年間の利益の見通しも引き上げました。

トヨタ、20年中間決算、4~9月までの実績は過去最高。$想定レート105円に対し、直近の大幅な円安(110円前後)で利益が大幅に上がることはわかっていましたが、やはり出てきた業績はすごかった。

他社なら、5%で合格点、8%超えれば素晴らしい、営業利益率、11.3%。自動車業界だと信じられない、かつ一番販売台数の多いトヨタがこれだけ高い利益率を出せる、さすが時価総額日本一の企業だというところ。

さてトヨタの決算なのですが、全体の内容については自社メディア「トヨタイムズ」がとても分かりやすいのでこちらを読むのがおすすめです。3分で抑えるべきポイントが全て書かれています。決算資料に書かれていない具体的な現場の努力や利益押し上げ要因も書かれている点もGOOD。(トヨタは既存のメディアよりも公式リリースが一番情報が乗っていることが多く、見やすい)


今回の中間決算、業績は大変良かったのですが、通期の見通しや発表後の記者会見の内容を見ると、「実態は楽観視/安心できるものではない」という強いメッセージが感じられます。


まず通期での販売台数。前回の発表は930万台でしたが、900万台と△30万台の下方修正。8月までは部品供給問題の影響が少なかったトヨタですが、9月「トヨタショック」の大減産、10月、11月も当初計画に比べ、生産台数が減り、さすがに年間の生産台数は見直し。12月からは大幅な挽回を計画していますが、部品供給問題は解決しておらず、果たして実際に作り切ることが出来るのかがポイント。12月の生産動向を注視する必要があり、12月が減らなければ、その後の1-3月についても、会見曰く「土曜稼働を含めてできるだけのことはやる」かなりの生産台数(おそらく国内は過去最高レベルの日当たり生産台数)になるでしょう。自動車生産台数は仕入れ先の業績(強いては雇用)に大きく影響します。一つの目安となる国内の「300万台」については何とか維持しようという強い意志を感じます。

続いて原価の大幅な増加。「原価改善の努力」この項目が△2100億円となっていますが、これは「原価UP=原材料費が高騰」を意味します。年間生産台数が約900万台なので、1台あたり2.3万円の原価増。トヨタの得意技、原価低減ですが、鋼材や樹脂、半導体などの原材料費UPにより、カイゼンでは吸収できないほど、原価は上がっています。それでもこれだけの収益が出るのはムダが少なく、体質が健全だからなのですが、今後も原材料費高騰が続くようであれば、業績悪化の大きな要因となるでしょう。

それにしても、こんだけ過去最高の利益だしておいて「販売奨励金減(過去最低水準:アメリカで$1463と前年比△33%)」「中古車市場高騰による金融部門の事業収益増加」「想定レートよりも大幅な円安」を”実力以上の部分”と言い切って実質下方修正というトヨタの堅実さ

その堅実さは決算発表後の記者会見でも同様でした。この会見、非常に今回のトヨタのスタンスが現れていたので、カッパッパの注目ポイントを挙げます。全文はこちらから読めます。

ポイント1:価格転嫁はしない

われわれはBtoCでお客様に完成の自動車っていう商品お届けして、成り立ってる業種ですので、そのままいろんなものが値上げしたことを、価格に転嫁をしにくい。これお客様が価格を決めるということでありますので、という業者でありますから、やはりここは先ほど近からご説明ありましたように、一つ一つもう着実に愚直に地道に原価低減をしているわけでございます。

原材料費が大幅に高騰する中で、自動車以外の製品に関してはそれを反映した値上げが進んでいます。また海外メーカーでは一部値上げが実施、テスラではメーカー直販ということもあり、値段の変更が複数回行われ、買う時期により安かったり高かったりします(直近は上がる一方)

そうした中でトヨタのスタンスは価格転嫁はしない。原材料費の高騰分は原価低減で何とか抑える。この点については、意見の分かれるところだと思いますが、いち消費者からすれば「買う時期によって価格が値上がりしない=安心して購入できる」につながり、ブランド価値が向上すると感じます。(いやまぁ販売奨励金があるのでディーラーでの値下げ云々はもちろんあるのですが、あくまでも定価段階の話として)

ポイント2:仕入れ先との関係

朝日新聞から飛んだなかなか痛烈な質問

社会全体で見ますとですね、まだまだコロナの影響で苦しんでる方もいらっしゃいますし、自動車業界に限っても規模の小さいサプライヤーほどカーボンニュートラル、脱炭素への対応やあるいはCASEといった新技術対応で激動期を迎えている。収益的に厳しいところもかなりあるなというのが取材の実感です。言ってみればこうしたサプライヤーの上に立った今回の業績数字だと思うんですが、御社としての受けとめ、あるいは昨今注目されてる分配、あるいは還元みたいについての考え方を教えてください。

簡単にまとめると「仕入れ先は苦しいのに、トヨタだけ業績そんなに良くて還元しなくていいの?」。確かに部品メーカーは原材料費の高騰を受け、業績は苦しい。10月段階であった部品メーカーの決算は自動車メーカーの決算ほどよくありません(ただし概ね黒字は確保)

それに関してのトヨタの回答がこちら。

私どもまず仕入れ先さんとの関係ですけれども、やはり共存共栄といいますか、しっかりと原価改善をして、競争力を高めて、一緒になって原価改善をしてですね、仕入れ先さんの競争力を高めて、それで出た成果をいわゆる公平にというかですね、応分に享受すると、もちろんそれはお客様も含めてということですけれども、そういった考え方をですね、ずっと変えずにやっております。

自動車業界、部品メーカーの1人として働くカッパッパの私見ですが、原材料費の高騰による売価への転嫁。まずこちらは自動車メーカーに認めてもらわないとどうしようもありません。一方的に材料メーカーからの値上げを受けるだけでは商売が成り立たない。ただ、売価反映の時期が限られる、すぐに価格転嫁できないのは多少しょうがない部分があります(その分さかのぼって反映してほしいけど)

今回減産の発表を何回か分けてさせていただきましたが、やっぱりトヨタからのオーダーとか発注は、非常にシュアっていうか確実、確度が非常に高い。それに加えて、減産が万が一あったときにも非常に早く、ある意味、結構細かく、いわゆる教えてもらえると。結果的に減産になるとですね、当然仕入先さんから、納入していただく部品も減るので、もちろんその影響が出るんだけれども、過剰に構えてしまったとか、そういったことによるロスはないよ、

部品メーカー⇔自動車メーカーの関係については、かなり難しいものがありますが、トヨタに関していえば会見でも言及されていた「内示、数量の変更を確度高く、事前に発表する」は随一。自動車は装置産業であるため、工場の稼働率が業績に影響する、稼働が少なくなるようであれば、人員や操業の調整を行い、出ていくお金、なるべく少なくする対策を打たないといけません。突然大規模な数量調整、稼働停止を決めたり、だんまりで生産台数を変えるメーカーがある中で、トヨタに関しては詳細かつ事前に正確な数量の連絡が来るためムダが抑えられる。仕入れ先である部品メーカーのことを考え、真摯に向き合っていると感じる点です。(実務でもかなりこの点は助かるんですよね)

ポイント3:電動化戦略の広報に困っている

電動化といつもご質問いただいて、ずっとこれまでお答え申し上げてるのは、基本的にはCO2をどうやって足元から低減をしていくか、減らしていくかっていうことだろうと思っています。そういう時に、トヨタがずっと申し上げてますのは電動化についてはわれわれは電動車のデパートメントストア、すなわち電動車をフルラインナップでそろえていって、それを各国、各地域のお客様に選択をいただこうというのがわれわれがずっと申し上げてるところであります。
(中略)
トヨタはハイブリッドの擁護派じゃないかとか、あるいはバッテリーEVの反対派じゃないかっていうようなことを、言われるんですけれども決してそういうつもりではなくやってきてるんですが、本当に非常になかなか思ったことは伝わらないなあということで、非常に時々辛くなることがあるのも事実です。今申し上げたことも、どう伝えていくのか、それからどうやってバッテリーEVをトヨタも真剣にやってますってこと伝えていくのかっていうことも少し考えながらやっていきたいと思いますし、その辺はどの大変私どもとしても悩んでおりますので、ここは本当にメディアの皆様からも率直なご意見とか、あるいはご提言をいただき、一緒に考えていくようなこともやらせていただきたい

今回の会見で面白いなーと思ったのはこの電動化戦略の広報。トヨタのEVシフトへの遅れ批判は非常に多くのところから出ているのですが、本当にカーボンニュートラルを目指すのであれば、状況、地域に応じた対応をとる必要がありトヨタは実行している=上手く広報できていない(と思っている)。確かにEV派の方からはトヨタ批判多いですし、現在圧倒的勝者「トヨタ」へのバッシング=話題として伸びやすいため、電動化戦略についてはマイナスのイメージが…トヨタイムズだったり、自工会のHPだったり、YouTubeでの発信だったりといろんなことをやっているのですが、実際上手くはいってない…その点上手いのはテスラだよなーと思うと、いっそ社長がTwitterやってみるなんてことがいいのかもしれません(絶対にしないと思う)

圧倒的強さをみせたトヨタ決算でしたが、その資料/会見の内容は「勝って兜の緒を締めよ」、非常に堅実なものでした。足元ではまだ部品供給問題は解消されておらず、挽回が果たしてうまくいくのかが下期の業績につながっていくことでしょう。本当に挽回できれば、12月からは過去最高レベルの生産台数になるはずです。業界関係者の方は、忙しくなるかと思いますが、頑張って乗り切りましょう!(来年のボーナスのために)


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